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2.18 最後の一枚

アリスさん、ちょっと強くし過ぎたかもしれません。

 神札クロノリンクソードのA(エース)

 発動と同時にフィリアが結弦に語りかけ、契約した事象について教えてくれた。


 このカードには、詠唱者が指定した任意座標の空間を丸ごと切り取り、別の場所へ置き換える力を有している。

 有体に言えば空間置換の魔法であるが、対象の空間を適切に把握していないと大事故を起こすリスクも背負っている。それこそもし座標の指定を間違えたら得体の知れない生物の下半身だけがスパッと切り取られて到着しましたなんてこともあり得る。


 当然そんなグロテスクな事にならないようにフィリアがサポートしてくれていたわけだが……


「ご主人様? 凄い突風と冷気でしたが効果はあったのですか?」

「あぁ、アレの活動はもう止まっている」

「――確かにそうみたいですが、何が起きたのでしょうか?」

「アリスに理解できるか分からないけど、ここから上空百キロいった所とここの空気を入れ替えたらしい」

「???」


 高度百キロ。

 地球ではカーマンラインとも言われる宇宙の入り口は、生きとし生ける全ての者の生存を許さない。それは温度や酸素濃度などが違いすぎるからであり、瞬間的にそこへ身を置くことになったらたとえ魔人であっても、元は人間の体なので内側から瓦解してしまう。


 ――ただ、この世界と元いた世界がどこまでリンクしているかは分からない。――が、フィリアの設定したことだし上手いこと作用しているのだろう。


 それとこの能力もフィリアの言うイメージ力が重要らしく、効果を細かく設定すれば必要な要素だけ転移させることが出来るようだ。まぁだからと言って無制限に致死性のある空間をここに持ってくる訳にはいかなかいので、今回は転置を二重展開し、漏れ出る空気のみ選別して元の場所へ還すゲートを魔人付近に併設したらしい。――これは彼女が座標指定から二重展開まで全て裏で調整していたから出来ることで、本来は人の身では不可能な芸当だ。


「まったく……この手の派手な能力をチョイスするあたり、俺への当てつけもありそうだな」

「えぇ、恐らくですが私にもです。――まぁなんとか倒せてよかったです」


 アリスは動きを止めた魔人たちの生死が気になるらしく、敵との距離を縮める。


「おーい、近寄るのは止めた方がいいぞ? ――そろそろ割れる」

「???」


 結弦が言うと同時に活動停止中の魔人たちが内部から破裂した。


 神札は結弦とアリスが話している間も効果を発揮し続けており、気圧の変化により魔人の強靭な肉体は着々と膨張……最終的に破裂した。


「きゃっ!?」


 魔人より飛んできた白い液体を身体中に浴びたアリスは短い悲鳴をあげてその場に尻餅をつく。


「もぉ! こうなるなら早めに教えてくださいよ!! うわぁ、身体中ベトベトでそこはかとなく生臭い……」


身体中が白い粘液でベトベトになったアリスは中々に扇状的な姿になっていた。


 ――ほぉ、魔人の血は赤じゃなくて白なのか……うむうむ、良い物を見せてくれた。――魔人共GJ!


 思わぬ出来事に顔を綻ばせそうになる結弦だったが、ギリギリの所で留まり、主としての顔に戻る。


「え~とアリスは後で風呂に突っ込むとして、他の皆は大丈夫か?」

「あぁ、大事無い」

「うぬ、童も問題ないぞ」

「平気なの~」

「了解。――とりあえずミシミシと音を立てて今にも壊れそうだから外へ退避するぞ」


 スー、白音、レンの無事を確認した結弦たちは、戦闘により生じた建物へのダメージを考慮し、屋外へ避難することとした。



 結弦たちが教会の外へ出るとそこには負傷した衛兵や住民たちが一ヵ所に固まり、固唾を飲んでこちらを見守っていた。


 そして結弦の姿を確認したエステルは一目散にこちらへ走ってくる。


「ユヅル様! ご無事ですか!?」

「あぁ、俺たちは無事だが……すまん、大切な教会をボロボロにしてしまった」

「そんな些細なことは気にしないでください。それよりもユヅル様、あなたが帰ってきたということは中にいたあの怪物たちは……」

「大丈夫だ。全部アリスが駆逐した」

「そうですかぁ。――私たちでは歯が立たないのは一目で分かりましたので、ユヅル様達が出てくるまで気が気でありませんでした」


 エステルは安堵したのか、その場に座り込み大きく息を吐く。


「安心しろ、脅威は取り除いた。――で、落ち着いたらでいいんだが教皇としての仕事を頼んでいいか?」

「えっ? ――そうでした。ゴホンッ、皆さん! ご覧の通りこちらに居るユヅル様たちが教会を襲ってきた山賊と怪物たちを討伐してくれました! 敵は倒れ、この街の平和は守られました」


 すぐさま自分の立場を鑑みたエステルは、未だに不安の顔色が強く表れている住民たちに持ち前のカリスマ性を活かしたスピーチで事態の収縮を図る。

 そして教皇の言葉によって、街の人々は次第に不安と警戒の色を無くし、歓喜の声が周囲より沸き上がる。


「どうやら後は任せても大丈夫そうだな。色々押し付けて悪いが、かなり疲れているから俺たちは宿に戻って休む」

「わかりました。他の者たちにもそっとしておくよう言い含めておきます」

「あぁ、助かる。――よし、さっさと帰って寝るとするか」

「のぅ~ ぬしさま? もしかしなくても童はまた馳走にはありつけないのか?」

「あぁ、悪いがそこら辺の奴から適当に見繕ってもらえ」

「そんなぁ~」

「すみません白音様。明日こそはしっかりとお礼させて頂きますので今日のところはご容赦を」


 俺と白音の会話を聞いたエステルが申し訳なさそうに(こうべ)を垂れる。


「絶対じゃぞ?」

「えぇ、教皇の名に懸けて……」

「うぬ! ――ではレンよ、仕方ないからまだ開いていそうな店を手当たり次第に食い漁るぞ! 金子を持つのじゃ!」

「あいなの~(我も共する)」


 結局食うのか……っていうか開いている店なんてあるのか?


 結弦からそこそこのお金が入った巾着袋を受け取ると、白音とレンは矢のような速さで歓楽街に向けて駆けて行く。


「悪いな、うちの大食らい達が空気を読めなくて」

「いえ、こちらこそこの有様、何も出来なくて申し訳ないです」

「気にするな。別に旨い物が食いたくてやったわけじゃない。――それよりせっかくだから押し付けついでにこいつも頼んでもいいか?」

「えっ!?」


 いきなり話題に出たアリスが驚きの声をあげる。


「見ての通り魔人の体液をもろ被りしてかなりドロドロなんだ。風呂にでも入れてやって欲しい。――それとあんたの仕事が終わってからでいいからこいつの相手をしてやってくれ。一番の功労者だからな」


 適当な口実を付けて結弦はエステルにアリスを預けることにした。元々アリスはエステルとお近づきになりたそうだったし、山賊退治の報酬として約束もしてある。


「わかりました。――ではアリス様、行きましょうか」

「はい! ――ご主人様ありがとうございました!」


 結弦の意図を察したアリスは満面の笑顔を浮かべながら感謝と別れの挨拶をして、エステルと共に去っていく。


 さて、これでようやく俺の役割も終わっただろう。――今度こそ帰って寝るぞ!


 ようやく片付いた事件に安堵と肩の荷を下ろしつつ、結弦は宿への帰途についた。

実はこの話で10万字の大台だったりします。

色々不得手な中、ここまでお付き合いくださった皆様には感謝の気持ちで一杯です。

今後も更新ペースは遅いかとは思いますが、引き続きお付き合い願えればと思います。


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