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1.4 行商団

 森林地帯を脱出し、街道へ出た結弦は道の向こうにちょっとした集団がいるのを見つけた。

 その集団は大きめの幕舎をいくつか広げており、遠目から見ても結構な人数がにいるのが伺える。


 そういえばまだこの世界の人には会ってなかったな。

 今まで出会った連中と言えば、人外の女神様と魔物のニワトリ野郎ぐらいだ。――うん、第一村人発見ってやつだな……村人じゃないけど。


 願わくば何かまともな食べ物が欲しい。


 なお、道具欄に《ニワトリの肉》が五つほどあるがこれには手を付けていない。――一発で腹を壊しそうだし。


 結弦は初めての同族に心を弾ませ、意気揚々とその輪に歩いていく。

 そして向こうも結弦に気付いたみたいで、集団の中から一人の男が近づいてくる。


 とりあえず、ファーストコンタクトはこのおっさんでいいか。


「すみませ~ん」

「〇〇〇〇〇?」


 ありゃ? 言葉が通じないのか。ちんちくりんとは普通に話せていたからイケると思っていたのだが………


 『交流:《スィード語》を覚えた』


 おっ、ちょうど良かった。――流石は転生特典だな。


 早速、結弦はスィード語を確認するべく、メニュー画面にある交流欄を開く。――すると、更に『人物』・『言語』・『情勢』の三枠が表示された。


 その中の『言語』を選ぶと、先ほどのログで流れていた《スィード語》が灰色の状態で追加されているのが確認できた。


 試しに《スィード語》を選択してみたところ、枠の色が灰から白に変わり、名称も《スィード語+1》に変化した。

 更に何回か念じると『+1』の部分が一つずつ上昇し、『+5』になったところで止まった。


 ふむ、これは武器よりプラスされる値が低いんだな。この先があるのかは知らないが、会話を成立させるにはこれで十分だろう。


「――いちゃん? 俺の言っている言葉が分からないか?」

「いえ、大丈夫です。こちらの地方に来るのが久しぶりだったもので、言葉がすぐに出てきませんでした」


 どうやら大丈夫そうだ。

 不審に思ったおっさんに適当なフォローをしておく。


「そうかい。――で兄ちゃん、どうかしたのか?」

「えぇ、ちょうど向こうの方を歩いていた所、皆様がこちらにいるのが見えましたので少しお願いをさせて頂けないかと」

「言ってみな」

「ありがとうございます。お恥ずかしい話ですが、私が持ち合わせている食料が近いうちに尽きそうでして……可能であれば少し融通をしてはいただけないでしょうか?」

「ほぉ……兄ちゃんは運がいいな。これでも俺らは行商人の集団(キャラバン)だ。――ちょっと待ってろ」


 そう言うと行商人のおっさんは、他の仲間達の元へ戻っていく。


 しばらく待っていると、おっさんは別のおっさんを連れて戻ってきた。


「食品に関してはこいつの持ち場なんだ。売って欲しいならこいつに頼んでくれ」

「そうでしたか……すみません、いきなりで申し訳ないのですが、長旅で食料の備蓄がそろそろ底をつきそうなのです。――よろしければ少し売ってはいただけないでしょうか?」


 さっきの商人と同じお願いを食品担当のおっさんにする。


「分かった……と言いたいところだがウチで扱っている商品のほとんどは売り口が決まっているから自由に捌けない……が、そうだな黒パンと干し肉なら多少余分に揃えてある。五日分で銀貨一枚と銅貨八枚でどうだ?」

「お願いします。――お支払いはスィード金貨でもよろしいですか?」


 道具欄からスィード金貨を一枚とって商人に見せる。


「スィード金貨か。――釣りが細かくなるがいいか?」

「大丈夫です」


 結弦は商人にスィード金貨を一枚を渡すと、商人は食料と差額の銀貨八枚、銅貨二枚を渡してくれた。


「ありがとうございます。――それと重ねてもう一つお願いをしてもよろしいでしょうか?」

「なんだ?」

「その前に確認ですが、皆様はどちらに向かっている途中なのでしょうか?」

「『ロクシタン』っていう貿易街だ」

「それはそれは……ちょうど私もそこへ行く予定でした。――もしご迷惑でなければ同行させていただけませんでしょうか?」

「あぁ、それはいいが駄賃として銀貨三枚だ」


 お金取るのか。

 まぁ大した金額でも無いし、ここは素直に払っておくか。


「よろしくお願いします」


 行商人に銀貨三枚を追加で渡し、行商団の人頭に加えてもらう。


 その後、それとなく行商人のおっさん達に現在地やこれから向かうロクシタンという街についての情報を仕入れた。

 これは残念なことにメニュー画面の地図が一度歩いた場所でないとマッピングされなかったからだ。


 まず始めに、現在結弦がいる場所はグラジオラスという国の最南部に位置しており、おっさん達によると、ロクシタンという街はここから北に三日ほどの場所にあるとのことだ。


 そして、貿易街というだけあって、街では食料や生活必需品といった基本的なものから装備品に馬車、果てには魔導書や奴隷といったものまで揃えることができるらしい。


 特に魔導書はまだ何も発現していない魔法欄を埋められる可能性があるので、微かに期待している。――やっぱり異世界に来た以上、使ってみたいよな『魔法』!


 とりあえず今後の方針としては、ロクシタンの街で必要最低限なアイテムと魔導書の購入といったところでいいかな。


 この世界で訪れる初めての街に大きな期待を持ちつつ、行商団と三日の行程を共に過ごす。

お金は鉄、銅、銀、金とあって各10枚で一つ上の貨幣になります。

また金貨は国名によって銀貨5~15枚ほどに換算されます。スィード金貨 → 銀貨10枚

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