表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

33/82

2.7 宵の明星:探索

 宵の明星に潜入すること三時間。

 結弦たちは枝分かれしている通路を直感頼りに進み続けていた。


「中々先に進んでいる感じがしない……」

「まぁ何度か行き止まりにぶつかっていますしね」

「あぁ。それといい加減、同じ景色は飽きてきた。外はもう夜だろうし、一旦探索は切り上げないか?」

「わかりました。一度ダンジョンを出ます?」

「う~ん、それは避けたいな。ダンジョンの性質上、一度出ると次に戻ってこれるのは明日の夕方だし、出来るならこの中で夜を越したい」

「――そうなると、かなり安全な場所を探さないといけませんが?」

「あぁ。とりあえず後少しだけ進んでみて良さそうな場所が無かったら入り口へ戻ろう。そこなら最初の部屋までかなり距離があったし最悪、外へ退避できる」

「わかりました」

「ただ入り口に戻った場合、朝起きたら今まで倒してきた魔物が復活していました……なんてことになっているかもしれないのが怖いところだが」

「それはこのダンジョンさんの気分次第といったところでしょうね」

「こればかりは祈るしかないか。――レン、どうした?」

「ご主人様、アリス……そろそろ次の部屋に着きそう……気配がするの」

「わかった。――とりあえず戻るかどうかはこの部屋を攻略してから考えよう」

「はい!(あい~)」


 そして結弦たちは、道の突き当りを右に進んだ所で目的のモンスターハウスを見つける。


 現在探索している場所は、最初の部屋でキーとなっていた『ポイズンスプラウト』が有象無象の如く大量に生えており、その間を縫う形で『スネークバラッド』と呼ばれる小型の魔物が配置されている。このスネークバラッドは上半身が人型で下半身が蛇というキメラタイプの魔物で、ポイズンスプラウトの統率と睡眠付与の唄を紡ぐ実に厄介な魔物だ。一応、気を抜かなければ眠りに落ちることはないが、それでも唄が聞こえる間は集中力がかなり低下してしまい、アリスの魔法発動が遅れたり、レンが足場から滑り落ちたりと小さなミスが散見される。


 加えてこの部屋は他の部屋と違い、魔物の数が一回りも二回りも多かったようで……


「アリス! 魔物の数が今までと桁が一つ違う。――何体かそっちに行く」

「大丈夫です。今まとめて片付けますので! ご主人様、もう少し耐えてください。――焔の輝きよ、…煌めけ……『ファイアショット』」


 眠たげな眼差しに喝を入れてアリスがいつもより気持ち範囲を広くしたファイアショットを打ち込む。

 一週間とは言え、聖槍に自分の力を乗せて放つファイアショットは普通の術者が放つソレを凌駕する威力を有していた。


 そして元々燃えやすそうな敵ということもあり、アリスの放つ魔法は一撃で敵を殲滅する。


「良くやった。これで、葉っぱ野郎は粗方片付いたな。――このままレンの援護に向かうぞ」

「分かりました。――レンちゃん!もう少し頑張ってね」

「あい……頑張るの!」


 結弦がレンの相手取っているスネークバラッドの間に入り、アリスがサポート用に『ステップ』の詠唱を始める。


 敵主力が片付いている為、アリスの詠唱を邪魔する存在はなく、空に渦の階段が描かれる。


「アリス、ありがとなの。蛇さん覚悟!!」


 レンは持ち前の跳躍力で足場を登りきり、彼女が得意とする直上から振り下ろす重力斬りによって、瞬きする間もなくスネークバラッドは二つに分断された。


「終わったの~」

「あぁ、こっちも片付いた。アリス、レン、お疲れさん」

「はい……あら? 今回は二つ出てきましたよ。――何が入っているのでしょう?」


 部屋の中央には部屋を攻略した証である箱が出現した。――ただし、二つ。


「本当だ。どれ……片方は今まで装備品がいくつか入っているな。――で、もう片方だが……なんだか無駄に分厚い本と随分と豪華そうな小箱が入っているな」

「本ですか……見慣れない文字で書かれていますね。――残念ながら私には読めそうにないです」


 アリスは木箱から出てきた分厚い本をペラペラと捲るが読むことは出来なかった。


「アリスに読めないなら読むのは無理そうか……ってアレ?」


 結弦は仕方なしに道具欄へ送ろうとしたとき、本の中身が見覚えのある文字で書かれているのに気づいた。


『交流:《イタリア語》を覚えた』


 頭に流れるログの通り、本に書かれている文字は前世でよく見ていたアルファベットを組み合わせたものだった。――とは言え、語学に精通していない俺にはイタリア語と言われてもスキルの助けが無いと読めないが。


「アリスが読めないのも無理ない。これは俺が元いた地方で使われていた言葉の一つだ。………中身は著者が生きてく上に必要だった知識を集約させたメモ帳といったところか」

「『元』というとフィリア様に送っていただく前ということですか。――私には内容を把握することは出来ませんが、使えそうですか?」

「そうだな……今まで訪れた街の情報や魔物の知識……今も同じなのかは怪しいが、持っていて損ということはないだろう。……おっ、このダンジョンについても少し書かれているぞ」

「本当ですか!? どんな事が書かれていますか?」

「ここに出現する魔物と簡単な地図。見た感じ、この先に魔物が寄り付かないセーフティーゾーンもあるらしい」

「それはツいてますね。――ってレンちゃん? どうしたの?」

「いっぱいカードが入っているの~」


 結弦とアリスが本の内容に夢中になっている間にレンはもう一つの小箱を開けていた。


「こらっ! 危ないから勝手に開けちゃダメじゃない」

「あぅ。ごめんなさい」

「まぁどうせ開けるんだしいいじゃないか。――どれ……これはタロットか」


 レンが手に持っていたカードの束を一部受け取ってみるとそこにはタロットカードの大アルカナと小アルカナと思われる絵が描かれていた。

 まぁ本がイタリア語な所からして、持ち主の私物の一つと捉えるのが妥当か。――ただ、これが想像している通りなら俺以外にもこの世界へ渡ってきた奴がいるのかもしれない。


「これはこの本の持ち主の私物だと思うが、占いとかに使うカードだ。まぁ俺は占いに興味が無いから今はただの紙切れでしかないが」

「そうですか。でしたらそのタロット? 私に預けてはいただけませんか?」

「占いでもするのか?」

「なんででしょうか? そのカードからは不思議な力を感じるんです」


 俺には分からないが、アリスには何か感じるものがあるらしい。――まぁ俺が持ってても宝の持ち腐れであることは確実なので、渡しておいて不都合はない。


「わかった。一応そこそこ貴重な物だから管理だけは気をつけてくれ」

「ありがとうございます。――では、早速地図に書いてある安全な場所へ行きましょうか♪」

「あぁ」


 結弦はタロットカードをアリスへ渡し、本を左手に持つ。そして細かいドロップ品を道具欄に収納し、地図に書いてあるセーフティーゾーンへと向かった。



 そこはダンジョンの中とは思えないほどに人工的な場所だった。

 大小たくさんの石が積み重ねられて出来ているソレは、見た目は残念だが十分に家としての形を保っていた。


「なんというか、合わないな」

「えぇ。今まで似たような景色をずっと見ていたせいか、こんなのでも懐かしく感じます」

「多分この本の持ち主が作ったんだろう。――とりあえず少し様子を見て本当に魔物が出てこないなら今日はここで休むとしよう」

「分かりました(ご飯なの~)」


 一定時間辺りを警戒した後、魔物が現れないことを確認した結弦は、道具欄から保存食を取り出し、二人に配る。


 そして食事が済んだ後、結弦はアリスとレンを寝かしつけ、先ほど拾った本を広げて黙々と読み進める。



 本は過去の転生者が残した手記だった。内容は前半に冒険をしていく上で蓄えた知識を綴っており、先ほどの地図を含めて実に役に立ちそうな情報が山ほど載っていた。そして、後半は転生者……『ジーク』が歩んだ人生を記した日記だった。主にフィリアとの出会いから神、魔、竜族との決戦までの日々が適度な間隔を空けて書かれていた。――そして読んだ感じ、ジークはフィリアと深い関わりを持っているらしい。

 また、ジークの手記を着々と読み進めていくと、木箱の中に入っていたタロットカードについても書かれていた。これはジークがこの世界に来る時に媒介となったアイテムで、俺の懐中時計と同様に神器としての能力が備わっているらしい。――が、肝心の使い方と思われる部分のページが破れていて、今の俺たちには紙切れ以上の価値にはならなそうだ。


「これは次にフィリアと会った時にでも話を聞く必要があるな」


 結弦はジークの生涯を綴った手記を休みなしに読み続ける。――そして、読破するころには懐中時計の短針は翌朝を指していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Twitter:ぽんさん(@PonSanMk2)

小説家になろう 勝手にランキング
↑ ↑ ↑
良ければこちらもポチっと押して頂けると助かります。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ