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2.5 もう一つの魔法

 貿易街ロクシタン。

 昇格依頼を終えた結弦たち三人は一週間ぶりにこの街へと戻ってきた。


「たった一週間なのになんだか随分と懐かしく感じますね」

「あぁ、それだけ色々な事があったからな。さっさとやること済ませて早いとこマーテルおばさんに顔を見せに行こうか」

「はい! その為にもまずはこの荷物を片しちゃいましょう」


 アリスは街の門をくぐる前に取り出しておいた交易品を指さす。


「そうだな……売却の方はお前に任せていいか? 俺は少し街を散策したい」

「かしこまりました。――商工カードをお借りします」

「あぁ、頼んだ」


 結弦はアリスに商工カードを渡して交易品の売買を一任する。――どうせ俺が居ても役に立たないので、その間に細かい雑事を済ませたい。


「多分俺の方が時間掛かると思うから。交易品の売却が済んだら先に翠玉亭に行って休んでいてくれ」

「わかりました。レンちゃん、馬を商工ギルドまで進ませて」

「あいなの~」



 商工ギルドへ向かうアリスとレンを見送った結弦は、冒険者ギルドの売店に寄り、数冊の魔導書を購入した。


 雑事というのは魔法の拡充のことで、空いた時間に使える魔法のレパートリーを増やす予定だ。


「う~ん、でもこれはちょっと買いすぎたかな」


 ギルドを出た結弦は冒険者カードを見ながらため息をつく。


《冒険者カード》

 ______________________

 名前:ユヅル 21歳♂

 レベル:24

 ランク:シルバー

 ランクポイント:940(次のランクまで9060)

 現在の依頼受注数:0

 依頼達成数:8

 貢献ポイント:115

 ______________________


「こりゃ、明日からポイントの補充を頑張らないとな……」


 結弦が購入した魔導書は四冊。

 本にはそれぞれ『火』『水』『土』『風』の四属性の初級及び中級の魔法を収録しており、アリスの見様見真似で習得したファイアボールとファイアショットを除けば十個の魔法の解説が書かれている。


 空き時間で習得するにはいささか量が多い気もするが、結弦にとって魔導書は必要変数とロジックが記してある辞書に過ぎず、初中級程度の本ならば数分で一冊読破できた。


「さてと……早速試し撃ちをしにいくか」


 結弦は街の外門へ向かう。



 街を出ること十分、近くの雑木林に移動した結弦は適当な切り株に腰を掛け、アルゴリズムの構築に勤しむ。

 時節、この辺りに生息しているレベル一桁代の魔物が現れるので魔法の練習台になってもらったりもした。


「まぁこんなもんか。とりあえずさっき買った四属性の魔導書は素直なアルゴリズムで無詠唱も問題ない。――で、問題はこいつなんだが……」


 結弦はパイルの村で買った空間魔法が記されている魔導書に目を落とす。

 魔法名『リファクション』。空間を捻じ曲げて光を屈折させ幻影を浮かび上がらせる目くらましの術。

 空間魔法特有の座標指定がステップ以上に難しく、多変数化している為、結弦の処理が未だ追い付いていない。


「こう、配列みたく一つの塊にできれば楽なんだけどな……あぁそうか、変数を系統ごとに分類すればいいのか」


 結弦は自身が思いついた案をアルゴリズムに組み込む。屈折させる光の色を大雑把に赤青緑の三系統に分け、色素の設定を極力単純化させた。


「これなら考えがあっちこっち行かずに済むからいけそうだ。呪文は……こんな感じかな。――交錯せし三光の束、狂え『リファクション』」


 魔導書に書いてある呪文を一部改変し結弦は呪文を唱える。

 すると、結弦の目の前に自分に似た虚像が浮かび上がる。


「ふぅ、なんとか出来たか。――ただ、ちょっと粗い。ここら辺はレベルでカバーするしかないな」


 結弦はメニューの魔法欄より、新たに追加されている『リファクション』のレベルを『+10』に上昇させ、再度呪文を詠唱する。


「うわっ!? レベルを上げると動き出すのか」


 結弦の姿をより精緻に再現されたもう一人の結弦は結弦の意に反して飛んだり跳ねたりとせわしなく動いている。


「流石に話せないようだが……おい! その変な動きを止めろ」

「……」

「止まったか。とりあえず言う事を聞いてくれるなら使い道はあるかな……試しに色々とやらせてみるか」


 その後いくつかの実験を行い、一定の収穫を得た後、結弦はアリスたちと合流するべく翠玉亭へと向かった。



「ご主人様、お待ちしておりました」

「あぁ、そっちはどうだった?」

「はい! スィード金貨二十枚で売ることが出来ました。これもご主人様が新鮮な状態で保管してくださったおかげです」


 なるほど、鮮度で値が上がったのか。――しかし凄いな……スィード金貨八枚で買った物を倍以上にするとは思わなかった。アリスには商売における天賦の才が備わっているのかもしれない。


「上出来だ。とりあえず金は次の行商用に持っておけ」

「かしこまりました。では、こちらをお返ししますね」


 アリスは結弦から預かっていた商工カードを結弦に返す。


《商工カード》

 ______________________

 名前:ユヅル 21歳♂

 レベル:26

 商人階級:五等商人

 階級ポイント:20(次のランクまで90)

 買い注文:0

 売り注文:1

 工房:無し

 工芸品作成依頼:0

 ______________________


 今回の取引額は銅貨換算でニ千枚になるので、これの一パーセントが階級ポイントとして加算されていた。


「さて、やることも済ませたし飯を食いに行こうか」

「はい、行きましょう」

「ごはんなの~」


 結弦たちは一週間ぶりのマーテルが作る晩御飯を食べるべく、一階のラウンジへと移動した。

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Twitter:ぽんさん(@PonSanMk2)

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