1.13 ポイント稼ぎ
「こちらが今回の報酬と《ローラッドの皮》の代金になります」
街に帰ってきた俺たちは冒険者ギルドの受付に依頼完了の報告をしていた。
依頼の進捗状況はギルドに備え付けで置いてある特殊な台座に冒険者カードを差し込むことで確認できた。
完了した依頼については証紙が出力されるので、これを受付に提出すればOKらしい。
受付嬢からカヌレ金貨1枚、銀貨12枚、それと更新された冒険者カードを受け取る。
結局はアリスの見立て通り大量のローラッドを倒すことになってしまい、獲得した戦利品を換金すると依頼金の二倍近い収入になった。
《冒険者カード》
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名前:ユヅル 21歳♂
レベル:8
ランク:アイアン
ランクポイント:40(次のランクまで60)
現在の依頼受注数:0
依頼達成数:1
貢献ポイント:120
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結弦は更新された冒険者カードを確認する。
「思ったより次のランクへ昇格するのに必要ポイントが少ない」
「えぇ、これならもう一回受けるだけで貯まりそうですね」
「まだ昼過ぎだし今日中に上げてしまうか?」
「わかりました。それと依頼についてですが、恐らく報酬金と獲得できるポイントは比例関係にあると思います。なので次はそこら辺を意識して選んでみましょうか」
アリスの助言を参考にしつつ、アイアンで受けれる依頼を探していく。
「リザードマンの討伐が銀貨26枚で《ラビットラッドの肉》の納品が銀貨23枚……このあたりが妥当かな」
ランクポイントが昇格ラインを超えそうな依頼書をピックアップする。
「そうですね……リザードマンは集団戦を得意とした魔物で、囲まれると少々やっかいです。受けるのであれば注文した羽織を受け取ってからが良いと思います。対してラビットラッドはローラッドを気持ち強くしただけなので、ご主人様のあの魔法なら苦労せずに倒せると思います」
「なるほど……じゃあラビットラッドの方で決まりかな」
依頼書を剥がして受付に持っていく。
《依頼書》
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依頼名:『ラビットラッドの討伐』
内容:《ラビットラッドの肉》10個以上の納品
依頼者:食事処『頑固爺』
ランク:指定なし
報酬:スィード金貨2枚、銀貨3枚
備考:最近新たに考案したラビットラッドの肉
を使った混ぜ飯が思いの他評判で在庫が
なくなっちまった。早いとこ補充しない
とせっかく取った上客を逃がしてしまう。
至急《ラビットラッドの肉》を10個以
上納品してくれ。
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今回のは納品クエストに部類されるもので、十個以上ならいくらでも買い取ってくれるみたいだ。
どうせローラッドの時みたいに大量狩猟になると思うからちょうどいい。
依頼の受注後、結弦はアリスを連れて適当な喫茶店に入り昼食と軽めの休憩を挟む。――アリスというと午前中の鬼ごっこが影響したせいか、よく食べた。それこそ俺の分も……
♢
適度にリフレッシュした結弦たちはラビットラッドが生息しているという森林地帯に向かう。
森ということで前回とは違い、視認性が悪い。加えて、辺り一面が可燃物に囲まれているので大規模な火属性魔法が使えない。――火属性しか使えない俺達のパーティーにはかなりの痛手だ。
特に魔法が封印されるとアリスに攻撃手段が無くなってしまう。――なので、道具欄から聖槍《ロンギヌス+10》を取り出し使わせることにした。
「アリス、今回は俺のサポートメインで動いてくれ。俺が前衛で打ち漏らした奴を後ろからこいつで突いてほしい」
「今回はあまり役に立てそうになくて申し訳ありません。もっと依頼書を読んでおくべきでし……あのご主人様? この槍は一体どこから出したのですか? かなりの一品のようですが……」
しまった。――アリスの目の前ということを失念していた。
「えーと、これはちょっとした空間魔法なんだ」
「ご主人様は午前中のファイアショットが初めての魔法だったと聞いていたのですが……それに空間魔法という系統があるのも初めて聞きました」
ちょっと誤魔化すのは難しいか。
とは言え、フィリアの話をしたら……おかしい奴って思われるだけだし、どうしたものか……
「まぁ、今は仕事が控えているのでいいです。でも、時間ができたらちゃんと話してくださいよ?」
「あぁ、ありがとう」
深くは聞かないでくれるようだ。――助かった。
アリスに聖槍を渡し、結弦たちはラビットラッドの狩猟を始める。
♢
ちょっとしたハプニングはあったものの、狩りは順調に進行し、ローラッドの時よりも短い時間で目標数の肉が集まる。
結論から言うと、やはりフィリアから貰った聖槍の威力は半端なかった。
それこそ何の抵抗も無く、槍は魔物の急所に吸い込まれ、一突きで倒していく様は圧巻だった。
「予想以上に早く片付きましたね。本当になんなんですか……この槍?」
「できればそいつについても深く突っ込まないでくれると助かる。ただ、今後も状況次第ではアリスに使ってもらうことになると思うから今のうちに慣れておいてくれ」
「本当にしょうがないご主人様ですね……今は騙されておきます。とりあえずこちらはお返しします。街中だと目立つのでしまっておいてください」
「わかった」
アリスから聖槍を受け取り、道具欄にしまう。
光の粒子になって消えていく聖槍をアリスは興味深そうに眺める。
――説明できない現状がとてもいたたまれない。クリア条件の肉も取ったことだし、さっさと帰ろう。
「依頼品も揃えたし、そろそろ街に戻ろうか」
「そうですね。今日のお夕飯も楽しみです♪」
「まぁその前に報告を済ませないといけないけど」
「そうでした……」
結弦は仕事を終え、気が緩んでちょっぴり食いしん坊になったアリスと共に街へ帰還する。
――はずだった。




