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1.1 始まりの出会い

 ――紡ぐ


 ――新たな一片を


 ――あなたがここへ至るまで


 ――何度でも、何度でも


 ――私は紡ぎ続ける……



 森にいた。


 気づいたらそこは森だった。


 それは一瞬前までに見ていた情景とはかけ離れた世界で、幻想的な光は青年『大野 結弦』を照らし出す。


 そして当の本人はと言うと、この唐突に訪れた状況に困惑し、迷った挙げ句、状況を自分に都合がいい解釈へと落とし込んだ。


 ――『夢』なのだ……と。


 そう、結弦は無意識のまま現実の世界で眠りに落ち、この意識と感覚が冴えわたる明晰夢(めいせきむ)の世界へと迷い込んでしまったのだと判断した。


「う~ん、ひとまず夢の中で意識を保ってられるのはとても不思議な感覚だ。ただそれにしても随分とファンタジーな夢の世界に来たなぁ。――知らず知らずのうちに俺は、深刻なストレスから浮世離れした世界へ逃避したくなってしまったのだろうか?」


 意味もないのに現実世界の自分を労る結弦。


「――っといかんいかん。夢を相手にいつまでも真面目に考えるのはアホらしい。もう来てしまったんだし、この夢が終わるまではここでのんびりとリフレッシュしていこう」


 結弦は深く考えることを止め、横になって森林浴を始めた。


「それは残念ね……せっかく来たのだからもう少し自分の行動に責任を持って欲しいものだわ」


 え…………?

 今、誰かの声がしたような?


 結弦は周囲を見回すが、彼が聞いた声の主は見当たらず、新たな展開にただただ困惑する。


「あらあら、固まっちゃった………人間のスペックだとこの展開は急すぎたかしら?」

「誰だ!?」

「ころころと表情が変わって忙しい子ね。そろそろ気づきなさいな……最初からあなたの傍にいるのよ?」


 謎の声はそう言う。...すると、突如結弦の腰元が光を放ち、彼の視界は純白へと埋め尽くされる。


 やがて光が収まると、結弦の目の前には一人のちんちくりんな少女がアンニュイな表情を浮かべてこちらを見ていた。


 すごい演出だな……さすが夢だけあって何が起きているのかわけわからん。――それと今回の夢は妙に意識がはっきりしているのだから、出来ることならもう少し心臓に優しい演出にして欲しい。まぁ夢である以上、俺が常に振り回され続けるシナリオになっているのかもしれないけど……


「え~と、あんたは?」

「初対面のレディに"あんた"とは随分と礼儀がなっていないのではないかしら?」

「あぁいや……すまん」

「まぁいいわ……私はフィリア、あなたをこの世界に導いた美しき女神様よ」


 この女、自分で美しいとか言っているが頭は大丈夫なのだろうか。認めたくはないが本当にこれが俺の求めた理想像というのなら、現実の俺はかなり(こじ)らせているとしか思えん。――まぁタイミングとか状況を可能な限り好意的に解釈すれば、物語の序盤に現れるそこそこ重要そうなガイド役なんだろうけど。


挿絵(By みてみん)


 結弦は目の前に現れたちんちくりんな少女を観察する。

 彼女の見た目は、青髪碧眼で東洋人風の顔立ちをしている。体型は中学生くらいで、白く落ち着いた色合いの着物を纏っている。

 結弦はそんな無理して大人ぶってるような見た目をしている彼女には『ちんちくりん』という言葉がよく似合うと思った。――なお、性格に関してはごらんの有様なので割愛する。


「ゴホンッ。結弦、あなたにはこの世界を端から端まで隈無く旅して貰うわ。そして、その行く先々でちょこまかと現れる魔王や魔将の討伐をしなさい。――私のためにね♪」


 ふむ、どうやらこのフィリアとかいうNPCは相手のことはお構い無しに自分の言いたいことを片っ端から話すタイプのようだ。まぁ随分とぞんざいな説明だが、よくあるRPGゲームのような設定だろうしある程度は致し方ないのかもしれない。


 ――とりあえず内容に凝った点も無さそうだし、ありきたりな開幕イベントはさっさと消化して、彼女が言う『旅』とやらをすればこの場はOKなのだろう。


「わかった」

「あら、急に素直になったわね」

「あぁ、大まかな流れは理解しているから早く次に進みたいだけだ」


 結弦の態度に彼女は困った顔をする。そして数瞬の間を置いて、今まで控えていた事実を告げる。


「う~ん。結弦、あなたずっと勘違いしているようだから今のうちに正しておきましょうか。――よく聞きなさい。今あなたが体験しているこの景色、この音、この匂い、全てが本物よ」

「どういう意味だ?」

「言葉通りの意味よ。あなたは一心に現状を『夢』として捉えているようだけれど、それは違うわ。――いい加減分からない? ここまでハッキリと自我が表面化する夢は存在しないと」

「???」

「ハッキリと事実を伝えるわ。――あなたは数時間前、元居た地球で死んでいるのよ。交通事故でかなりグロテスクな最期だったわ」


 彼女が言っている言葉に結弦の思考は止まった。

 そして数刻をおいて止まりつつある思考とは別に、結弦の魂が彼女が発した言葉の肯定を訴えてくる。


「死んだあなたは魂だけの存在に置き換えられ、新たな生命として転生する予定だった……のだけれど、偶然にも私の加護が強く宿った懐中時計をあなたが手にしていたおかげで私のお情けを受けることができたの」

「お情け?」

「えぇ、得体の知れない生命に転生する寸前のあなたを、私が力づくで奪い取ってこの世界に投げ込んだの。ちょっと狙ったところから逸れちゃったんだけど、まぁ及第点でしょう?」

「お情けの割にありがたみを感じないのは何故だろう……」


 本当は凄い大変な事なんだろうけど、所々で雑に扱われているからか素直に感謝できない……不思議だ。


「ゴッホンッ! ……兎にも角にも結弦、あなたは第二の人生を歩み始めたのよ。今はそのことだけを理解して現実を受け止めなさい。――ゆっくりでいいから」

「そうは言うけどな~ 目が覚めてから今まで何もかもが突飛すぎていくら何でも無理があるぞ?」

「そういうものよ。――諦めなさい」


 結弦は少女に抗議するが全く取り合ってはくれない。そして、彼女はそんな俺を無視して転生者としての心構えについて語りだす。


「こんなところかしら。――さて、そろそろ時間みたいね。今回は転生に現界とかなり霊力を使ってしまったからしばらくは寝ているわ。それとさっきも言ったけど、腰に着けているその懐中時計は私の加護が付与されているから、肌身離さずに持っていなさいね」


 そう言い残し、女神様は光の粒となって懐中時計に吸い込まれていった。


 ――おいおい、マジかよ。


 時間にして十分余り、結弦の人生を揺るがすにはあまりにも短い時間で、人生を揺るがす最初のイベントは終わりを告げた。

はじめてお話を書いてみました。

中々に難しいです……


至らない所も多々ありますが、温かい目で読んでいただけると嬉しいです。

読者の皆様にブックマーク登録してもらえるような文章を綴れるように頑張ります!

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