第11話「見た目と中身は別物だよ。」
空はもう黄昏時、【アルラウネの集落】の外れにある整地された広場は竹で作られた椅子がその中心を囲むように置かれており、四方にはメラメラと焚き火が大きな燭台の中で揺らめいてる。
キーラはその中心で静かに佇んでいた。
周りにちらほらアルラウネが集まり、その戦いの瞬間を今か今かと待ち侘びる。
そして、時坂は3人の仲間を連れキーラの前に立つ。ディーラが二人を観客席の方に誘って離れていく。
「逃げなかったのは褒めてやろう。小僧。」
何処までも見下したようなその視線と明らかにわざと小僧と挑発をされた。それは慢心ではなく数々の対戦を勝ち進んだ王者の威風堂々である。
実際には、同じく観戦席で観ている村長アルの方が強いと思われる。理由は至極簡単だ。キーラは見たまんま戦闘狂のようだ。そんな戦いにしか興味のないキーラが敬うとなれば、自分より強者でなければならない。勿論、これは憶測でしかなく根拠はない。
「まぁ、この戦いが終わったら仲間になるんだからよろしくね。」
挑発的な笑みを返す。こちらも負ける気は元からない。それに数年間、伊達や酔狂で【リターン・リバース】やってた訳じゃない。いつだって本気で勝つ為に試行錯誤しながら上位を取ってきたんだ。負ける訳には行かない。
「ふん、吠え面かかせてやるよ。」
キーラは背を向け距離を取る。俺は敢えて何も言わず同じく中心から距離を取る。反論すると思えば無言であった俺が気に食わないらしく更なる挑発を重ねる。
「所詮は人の子。恐怖で何も言えぬか。」
ここで何も言わなければ矢継ぎ早に煽ってくるだろう。仕方なく口を開いた。
「あぁ、悪いな。多弁は弱者の特権だと思ってたからね。」
ブチッ
あ、頭の中の血管が切れた音が聞こえたわけではないし、切れたら大惨事だけど、間違いなく怒ってるのはよくわかった。怒りへのタガが外れた瞬間が背中越しにわかってしまった。殺気がだだ漏れしている。
ある程度離れると共に、対戦の申請が送られてきた。それを俺は受諾し、対戦の火蓋が切られた。
お互いのデッキがシャッフルされ置かれる。5枚のカードが手札となると共に、お互いのライフとスキルが表示される。キーラのスキルは攻撃増加と防御増加の初期スキル。時坂のスキルは攻撃増加と戦闘特化攻撃(5)。戦闘特化はデレのスキル。リサイデントによる攻撃時にダメージを+1するという効果だ。攻撃増加と違って効果によるダメージをプラスにすることは出来ない。
準備が整うとコインが表示される。表面は【時坂 秀人】、裏面は【キーラ・レシル】と書かれていて、お互いが相手の名を確認すると共に回転する。次第にゆっくりと止まり俺の先行となった。
バトルスタート!
時坂のターン
ライフ20
スキル 攻撃増加(3/3):戦闘特化攻撃(5/5)
MP1/1 手札5枚 墓地0枚
「ドロー!」
10パックを開封して気付いたことがあるのだが、機械音の言ってることは間違いである。1パック5枚じゃなくて、全属性1枚ずつじゃねえか。
お陰で無属性10枚と5属性のどれか10枚を選択することが出来たが、それと同時にデッキ内容自体は大して変わることもなかった。
20枚全部が入るわけではなく、明らかに腐るカードも多数存在したからだ。
だから、纏まりのないデッキとなってしまったのには疑いの余地はないが、初期デッキよりはまだマシだ。
折角、先行を取れたのだが手札を見るに召喚出来るリサイデントは居なければ、使用可能なサポートも特にはない。残念ながらエンドせざるを得ないだろう。
しかし、こういうことはよくあること。
寧ろ今までの対戦は基本的に運が良すぎたと言えよう。都合良く思い描いたマナカーブ通りにカードを出せる方が少ないのだ。
それこそカードゲームの醍醐味。
現実であろうとネットであろうとそこの部分は変わらない。
「ターンエンドだ。」
俺が何も出さずにターン終了宣言したのを見て挑発を吹っかけてくる。
「ふっ、1ターン目何も出来ぬような雑なデッキ構成をしているのだな。」
残念ながら本音を言えばそれは間違いである。
フェイスと呼ばれるライフだけを削り続ける超速攻型のデッキやアグロと呼ばれる盤面除去も取り入れ臨機応変が出来るデッキ、ミッドレンジと呼ばれる中盤から真価を発揮するようなデッキならばコスト1は入ってて当然。
しかし、ミッドレンジの中でもコントロール寄り。もしくはコントロールは後半に真価を発揮する為にコスト1のカードは寧ろ入ってないこともある。
キーラのその発言は寧ろ自身の戦歴に大きな偏りが存在してるからだろう。つまり、経験不足ということだ。
まぁ、俺のデッキはアグロ寄りのミッドレンジだから正直のところ初ターンに動けなかったのは辛いのでこればかりは運が悪かったとしか言えない。
そんな俺から反論が来なかったのが嬉しかったのか、嬉々としてカードを引く。そんなキーラに一言物申したい。
(低能、低脳、筋肉馬鹿……と。)
実際には言わないけど、俺がさっき言ったセリフを既に忘れ去られてると流石に思っても仕方ないだろ。
「私のターンだ。ドロー!」
キーラのターン
ライフ20
スキル 攻撃増加(3/3):防御増加(3/3)
MP1/1 手札6枚 墓地0枚
「手札からフェアリーダンスを発動する。」
MP0/1
木 1 S/★「フェアリーダンス」
効果 手札にフェアリーを2枚加える。
妖精が踊っている。それに釣られた二人のフェアリーが手札へと誘われていき、フェアリー2枚が手札に加わる。
これで次のターンはフェアリー2体を並べることが可能となった。しかし、雑魚をいくら並べられても与えられるダメージは限られている。
ということは、またもや新カードによる何かしらの効果でフェアリーを活かしてくると考えた方が良いだろう。可能性としては、フェアリー限定の強化とフェアリーを条件とした効果のどちらか。
どちらにしろ、フェアリーを倒すこと自体は然程苦でもないので、盤面制圧を中心にすれば問題ない筈だ。
「ターンエンドだ。」
自信満々のエンド宣言。
まぁ、今の内に調子に乗っているといい、絶対に墓穴を掘らせてやる。
「俺のターンドロー!」
時坂のターン
ライフ20
スキル 攻撃増加(3/3):戦闘特化攻撃(5/5)
MP2/2 手札7枚 墓地0枚
「俺は手札からスパンキーを召喚!」
MP0/2
火 2/2/1 R/★「スパンキー」
効果 疾走
魔法陣から出てきたのはまるで涙の色。青白く寒そうな火の玉であった。言葉を発することはなくゆらゆらと空中で浮遊している。
属性を見てわかる通り、今回は火を選択した。
何故火なのかというとこれが最も安定しそうだったからだ。よく考えてみれば相手は植物なんだし、火には弱そうだからある意味正解だったかも。
「スパンキーで攻撃!」
スパンキーは体から火の小さな玉を飛ばし、キーラを攻撃する。それを食らったキーラは少し慌てつつも痛み自体はそんなに感じなかったらしい。
植物に対して火の攻撃はトラウマを植え付けるようなものだったかもしれないと今頃になって思い付いたのだが、心配はしてないから遠慮せずに攻撃することにしよう。
ま、謝ったら許してくれるよな。
キーラ ライフ18
「ターンエンド。」
「うぅ~、植物に対して火とか許すまじ…………ドローだ!」
少し涙目になっていたキーラを可愛く思ってしまった。言葉遣いも少し女の子らしかった気もするし、あれがキーラの素なのだろうか……。俺の視線に気付いたのか目元を拭って、睨んできた。
確かに元凶は俺。でも、そんなに敵意剥き出しにしなくてもいいじゃないかと思いもしたが、そもそもこのバトルは敵意を向けられたことによるものだから、それは最初から無理な話か。
キーラのターン
ライフ18
スキル 攻撃増加(3/3):防御増加(3/3)
MP2/2 手札8枚(フェアリー×2) 墓地1枚(フェアリーダンス×1)
「手札からフェアリーマジシャンを召喚する!」
MP0/2
木 2/2/1 R/★ 「フェアリーマジシャン」
効果 召喚時、手札にフェアリーを2枚加える。
マジシャンの格好をした男の人がどこからともなく黒いマントを覆って登場する。手には何もありませんとアピールして、片手に杖を持ち1 2 3と数えるとそこには二人の妖精が現る。それを握り潰すとカードとなり、キーラの手札へと器用良く投げた。
最後に礼をして、ハットをクイッと決めポーズ。
これでキーラの手札にはフェアリーが4枚。
2枚目に使ったカードもフェアリーと名のつくカードであることから予測されるのは、【フェアリーデッキ】だろうか。
チュートリアルのようなフェアリーを活かせず、個々のカードによる肉弾戦を基本とした脳筋デッキとは恐らく違うのだろう。
「ターンエンドだ!」
キーラの手札は9枚。
あれだけ多いと何でも出来そうな気がしてしまうが、その実態は半分がフェアリーという残念な内容。
増やすだけ増やして召喚しないところを見ると、手札の枚数が関係ある効果もありえてきた。
用心するに越したことはないが、してもわからぬままならば、今は自分のことだけ考えておこう。
「ドロー!」
時坂のターン
ライフ20
スキル 攻撃増加(3/3):戦闘特化攻撃(5/5)
MP3/3 手札7枚 墓地0枚
場 2/1スパンキー
「レプラコーンを召喚!」
MP0/3
MP+1 MP1/4
無 3/3/2 R/X「レプラコーン」
効果 召喚時、デッキ一枚をPP+1する。
イルカの尾を持つ人魚が陣から出てくる。
もうかれこれ彼女とも顔見知りと言った関係だな。
今日もよろしくな。
「わかりました。主様♪」
カードとの対話も慣れたものだ。
こうして話すこともきっと何かしら重要なのだろう。話すことによりイベントの開放とかあるかもしれないなんてゲーム脳をいつもなら出してるのだが、女の子を前にすると話したいという欲求が勝ってしまいました。
どうやら結構なスケベだったらしい。
「スパンキーで攻撃!」
まぁ、そんな心の中で考えてることなど現実にはお首も出すつもりはない。平然とバトルを進める。
「更にスキル戦闘特化発動。」
これにより、ダメージに+1が加算される。
スパンキーの炎が当たる寸前で目を瞑るキーラを見てるだけで数々のキーラによる暴言が無かったこととなっていく。こんな姿が見れるならプラマイゼロだ!何がプラマイゼロかは各自察するように。
キーラ ライフ15
「くぅ、私に一度までならず、二度までもぉぉ……。」
ふふふ、可愛いな。
癒やされる。目の保養だ。
「ターンエンド。フフフ。」
あ、つい、心の叫びが漏れちゃった。
「私のターンだ。ドロー!」
キーラのターン
ライフ15
スキル 攻撃増加(3/3):防御増加(3/3)
MP3/3 手札10枚(フェアリー×4) 墓地1枚(フェアリーダンス×1)
場 2/1フェアリーマジシャン
「許さん。許さんぞぉぉ、とぉきぃさぁかぁぁ。」
聞こえません。
アイドルはトイレ行かないみたいに、彼女の怒気を孕んだ声なんて聞きたくありません。
キーラには目の保養としてデレて欲しいなぁ。
「手札からレプラコーンを召喚!」
MP0/3
MP+1 MP1/4
無 3/3/2 R/X「レプラコーン」
効果 召喚時、デッキ一枚をMP+1する。
相手もMPを増やしてきたか。
このゲームにおいて、レプラコーンは初期カードにしてはMPが増やせる上にそこそこの攻撃力がある使えるカードの1枚だ。
レプラ入れずしてデッキは完成しないと、名言作った実況者も居たものだ。その後の新カードで次第にその価値も薄れては行ったものの、数年経っても入れてる人は多かったものだ。
カードの強さはその人の使い方や出会う相手による為に一概にこれが強いとかこれは絶対に弱いなんてことは基本的には存在しないからこそだろう。
「そして!フェアリーマジシャンでレプラコーンに攻撃!」
フェアリーマジシャンが何処から取り出したのかトランプを扇状に広げ、レプラコーンに投げつける。すると、次々と爆発して行く。
その爆発に負けぬよう弾幕戦をして、お互いに体力が尽きて倒れた。
キ フェアリーマジシャン→墓地
時 レプラコーン→墓地
こちらとしては有利トレードをされたのであまり嬉しくはない。こちらが与えられる3打点を相手が与えられる2打点で止められたのだ。
1打点分の損だから今後の勝敗には大して影響はないが、少し残念だ。
基本的なことではあるが、この積み重ねが勝利へと導かれるのだ。
「ターンエンドだ。」
有利トレードをしたとはいえ、相手は全く喜んでいる様子はない。相手もこの程度のトレードが勝敗に影響するとは微塵も思っていないようだ。
寧ろこの程度のトレードは日常茶飯事と言っても過言ではない。それに有利トレードという程有利でもない。何故ならライフ差が既に5点もあるからだ。
この5点差が今、キーラに防戦をさせてる要因でもある。
たかが5点。されど、5点。5点差の価値わからなければ負けるというやつだ。大袈裟に言ってはいるが、キーラにとって今のトレードは重要であると同時に普通のことでもあったのだ。
その行為は普通でも、そのトレードをせねば今後に悪影響が出ることを見越してのものだ。
1点差というのはあくまでトレードした場合の有利という意味であって、実際には3点のダメージを食らわなかったという意味で捉えている。
これが攻めている側と防いでる側の思考の差である。
「俺のターンドロー!」
時坂のターン
ライフ20
スキル 攻撃増加(3/3):戦闘特化攻撃(4/5)
MP5/5 手札7枚 墓地1枚(レプラコーン×1)
場 2/1スパンキー
「手札から魔力補充を発動する。」
MP3/5
MP+1 MP4/6
無 2 S/★「魔力補充」
効果 デッキからMP+1する。
「更に妖精の指揮官を召喚!」
MP1/6
無 3/2/2 R/★「妖精の指揮官」
効果 自分のコスト1のリサイデントは全て守護を得る。
小さな魔法陣から軍服を着たフェアリーが飛んでくる。ふらふらとせず真っ直ぐに飛ぶその姿はフェアリーとは思えないほどしっかりとしていた。
「フェアリーの指揮を務めている。よろしく頼む。」
女の子なのに男言葉使われると新鮮味があって良い。そう、これはまるでキーラのよう……。
なんかこんな感じだよねー。
「スパンキーで攻撃するときに戦闘特化発動!」
MP0/6
かれこれスパンキーには8点分の働きをして貰った。非常に感謝している。
一方、キーラは流石に慣れたのか食らう瞬間、目を開けようと努力だけはしていた。
努力だけで開けていたとは判定しづらいな。
キーラ ライフ12
それにしても全然痛がらないところを見るに戦い慣れてるらしい。あの挑発も相当自信があるなとは思ってたけど、積み重ねた戦歴がそうさせたのだろう。
まぁ、俺に敵うとは思えんがな。
あ…、別に天狗とかじゃなくて、授業中も休日も基本的にはニートのようにずっと【リターン・リバース】やってたからこそ言えることだ。
現実でやると制限時間もなければ、途中で話したりもするからどうしても長くなってしまう。
だから、回数なら俺の方が上だという冷静な分析によるものであって、天狗になってたわけではない。
「ターンエンド。」
「私のターン。ドロー!」
キーラのターン
ライフ12
スキル 攻撃増加(3/3):防御増加(3/3)
MP5/5 手札10枚(フェアリー×4) 墓地2枚(フェアリーダンス×1、フェアリーマジシャン×1)
場 3/2レプラコーン
流石にライフ差が開きすぎたので少し長考に入った。果たしてどちらの長考だろうか。
1つ目は手札に組み合わせて出すカードのパターンがありすぎて、どのパターンが最適解なのかを考えるもの。
2つ目はどう見ても1つしかないのに、無駄に考えて刹那の現実逃避行に浸るもの。
見たところ速そうなデッキではあるから、前者なのだろうけど、フェアリーの召喚どきなのかな。
「ん~~決めた!レプラコーンを召喚!」
MP2/5
MP+1 MP3/6
無 3/3/2 R/X「レプラコーン」
効果 召喚時、デッキ一枚をPP+1する。
またMPを増やしてくるのか。
出遅れた感は漂うものの、ここまでMPを増やしてくる理由は1つしか考えられない。
フェアリー増やしてくるからアグロ系だと思ったが、それは間違いだ。
キーラはミッドレンジかコントロール系のフェアリーデッキを組んできたに違いない。
「更にフェアリーマジシャンとフェアリーを召喚!」
MP1/6
木 2/2/1 R/★ 「フェアリーマジシャン」
効果 召喚時、手札にフェアリーを2枚加える。
「フェアリー」×2→手札
MP0/6
無 1/1/2 R/X「フェアリー」
やっと召喚したフェアリーがいつ手札に加えたフェアリーなのか判別出来無いほどにフェアリー尽くしだ。
「レプラコーンで妖精の指揮官に攻撃だ!」
2/2と3/2の交換だが、こちらは効果付き。
少し痛いが、ライフを削られないので守護としての役割を果たしたという意味でも能力は使えども指揮官も不満なく倒れたと言えよう。
キ レプラコーン→墓地
時 妖精の指揮官→墓地
「ターンエンドだ。」
流石に元気もなくしたか。
恐らくはキーラと俺の立場が逆である状況を想像していたに違いない。にも関わらず、この有様。
悄気げるのも仕方無しか。
「俺のターンドロー。」
なんかもうターンとドローが接続され、1つの言葉となりそうなほどそのまま繋げて言ってしまってる。正直に言えば一種の合言葉のような感覚で使ってる。言葉の意味などどうでもいいと言ったところだ。
時坂のターン
ライフ20
スキル 攻撃増加(3/3):戦闘特化攻撃(3/5)
MP7/7 手札6枚 墓地3枚(レプラコーン×1、魔力補充×1、妖精の指揮官×1)
場 2/1スパンキー
実は手札に新たに加えた切り札級のカードがあるんだが、この有利な状況ではただのゴミカードなんだよね。少なくともライフが減らない限りは効果が使えない。
ここは相手の盤面処理をしつつ、更なるプレッシャーを掛けていくとしよう。
「火の吐息をレプラコーンに発動!」
MP6/7
火 1 S/X「火の吐息」
効果 敵のリサイデントに2ダメ
サラマンダーが現れて火の吐息をレプラコーンへと浴びせて、燃やし尽くした。
キ レプラコーン→墓地
「更に武装錬金を発動!」
MP3/7
これでスパンキーが………………姿は全く変わることはなかったが、ステータスは確実に強化された。
4/3スパンキー
これで容易にはスパンキーを破壊出来ない。
しかし、ここで立ち止まる男ではない!
「更に!火の双子ポルックスを召喚!」
MP1/7
火 2/0/2 R/★★「火の双子ポルックス」
効果 召喚時、自分のリサイデン卜1体の自縛を解除し、+1/+1する。
MP2消費し、自分のリサイデント1体の自縛を解除し+1/+1する。ターン終了時にこのカードを手札に戻し、手札から「火の双子カストル」を召喚しても良い。
魔法陣から青年が出てくる。
銀髪に真紅の瞳。天使を思わせる布の服に炎を纏う弓を持っていた。
「カストル、僕から離れないでよ。」
双子というのもあり、カストルのことを心配してるのがとても好印象だ。少しぶっきらぼうなとこも伺えるが、それでも純粋さを保ち、一人称が僕であることもまた素晴らしい。
カストルが炎を手に灯し、スパンキーの体へと移していく。心なしかスパンキーの体が一回り大きくなったようにも見える。
5/4スパンキー
「スパンキーで攻撃するとき!戦闘特化を発動!」
合計6ダメージは相当痛いぞ。
よりにもよって炎攻撃。これは一生のトラウマものになるな。
そのトラウマでしおらしくなってくれたらなぁ。
炎が当たりキーラが激しく悶絶する。
「クゥゥゥゥゥ、ぁぁぁぁぁぁ!!」
「はぁ……はぁ……」
流石に声を出してしまったか。
けれど、あそこまで声をだす必要はなかったんじゃないのか?普通に耐えることも可能性としてはあり得たんだがなぁ。
ん?
あれ?おかしいな見間違いか?
苦しみに悶てるよりかは恍惚な笑みを浮かべてるように見えるのは俺だけなのだろうか?
いやいや、まさかな。
脳筋もとい堅物のキーラがドマゾなんて…ことがあるはずもない。きっと見間違いだな。
キーラ ライフ6
ま、まぁ、まぁ、それはともかくだな。
このライフ差はどう考えても勝負ありだな。
歴戦の猛者と自称するならばこの辺りで負けだと気付いてるんじゃないのか?
リタイアするのは戦士の恥とか言いそうには見えるけど、無駄に足掻いて赤っ恥を掻くよりかはマシだと思う。
「ターンエンドだ。」
いや、俺に一矢だけでも報いたいと思い。
降参をしないという可能性もあるな。
「私のターンだ。ドロー!」
ふむ、続けるか。
理由はなんであれ、このまま負けるのは癪に触るという考えであるのは間違いないだろう。
恐らくはやけになって全リサイデントで突撃かな。
その程度の攻撃なら甘んじて受けようじゃないか。
キーラのターン
ライフ6
スキル 攻撃増加(3/3):防御増加(3/3)
MP7/7 手札9枚(フェアリー×5) 墓地4枚(フェアリーダンス×1、フェアリーマジシャン×1、レプラコーン×2)
場 2/1フェアリーマジシャン
1/2フェアリー
「手札からアルラウネを召喚!」
MP1/7
ライフ+3 ライフ9
木 6/0/7 R/X「アルラウネ」
効果 召喚時、自分のライフ+3する。攻撃時、+4/+0する。
おお、まだ勝ち目はあると見ていたのか。
今、俺の手札には確かに疾走は居ない。まさしく相手にとっての好機であるということだ。
「そして、攻撃増加発動して、スパンキーに攻撃!」
MP0/7
フェアリーとフェアリーマジシャンがスパンキーへ突撃をかける。自殺特攻ではあるものの、スパンキーを討ち取ることに成功し、健やかな笑顔で死んでいった。
キ フェアリー→墓地
キ フェアリーマジシャン→墓地
時 スパンキー→墓地
スパンキー、よくここまで戦果を挙げてくれた。
必ず勝ってみせる!
「ターンエンドだ。」
相手からしたらただのその場凌ぎだが、俺の手札には打開策がない。どうにかして、良いカードを引かねば……。
「ドロー!」
デッキからカードをめくる瞬間にわかった。
この鼓動はケット・シー。揺らめく光はキーラにも切り札の予感を想像させた。
時坂のターン
ライフ20
スキル 攻撃増加(3/3):戦闘特化攻撃(2/5)
MP8/8 手札3枚 墓地3枚(レプラコーン×1、魔力補充×1、妖精の指揮官×1、スパンキー)
「ケット・シーを召喚!」
MP3/8
無 5/5/5 R/X「ケット・シー」
効果 疾走。攻撃時、手札のコスト1のリサイデントを一体場に出す。
「戦闘特化を発動し、ケット・シーで攻撃!」
MP2/8
先ほどと同じように6ダメージを与えた瞬間、叫び悶えるキーラの姿がそこにあったが、表情はなるべく見ないようにしていた。
またもや恍惚な笑顔をチラッと見てしまったからだ。
もう疑う余地なし。
キーラは完全にドMだ。
キーラ ライフ3
「ハァ……ハァ……ハァ」
頬が紅く染まり、嬉しそうににやにやしてる。
妙に艶めかしくて、萌える。
「ターンエンドだ。」
「わ、私のターンだな。フフフ、ドロー。」
キーラのターン
ライフ3
スキル 攻撃増加(3/3):防御増加(3/3)
MP8/8 手札9枚(フェアリー×5) 墓地6枚(フェアリーダンス×1、フェアリーマジシャン×2、レプラコーン×2、フェアリー×1)
場 0/7アルラウネ
「………ターンエンドだ。」
「………………は?」
こいつ今なんて言った。
ターンエンドだと?
ケット・シー破壊出来るのにせずにエンドだと?
最後のほんの欠片ほどだったとはいえ、ドMじゃないかもしれないという希望を壊してくれてありがとう。
「俺のたーんどろー。ケット・シーでトドメだ。」
そうして、バトルは終わり、VP150貰った。
「おい、最後のアレどういうことだよ!」
終わった途端俺はキーラに詰め寄った。
余りにも酷い終わり方だった為に、少なからず憤怒しているのだ。カードゲーム好きなものとしては許せない行いであったからだ。
「ふん、潔く負けを認めただけのことだ。」
負けた上にドMの癖にこの後に及んで未だに上から目線か………。良い度胸してるな。
「おい、変態ドマゾ野郎。戦いなめてんのか?」
「あ?なんだ小僧。誰が変態だ。変態は貴様だろう。」
なかなか認めないキーラに対して一歩も引き下がらず、言い争いがヒートアップしはじめる所でアルから止めが入る。
「はい、そこまで。キーラは負けたんだから従いなさい。時坂殿、すみません。」
そこでやめておけばよかったものを調子に乗った俺はつい言ってしまった。
「アルが俺の仲間になってくれるならその謝罪受け入れても良いよ」
この時ばかりは少し天狗になっていました。
すみません。
「仲間…ですか。それを賭けての対戦なら受けて立ちますよ。」
「それじゃあ、軽く勝って、仲間になってもらうよ。」
「ふふ、出来ると良いですね。」
徹夜でなんとか書き終わりましたー。
うぅ、眠い(=_=;)
さて次は村長との戦いですねぇ。
どんな戦いとなるのでしょうか。
そして、まさかのキーラドM。
次回もお楽しみにー!