肉食系女子とは
多くの人々が行き交い、賑やかな声がいたるところから聞こえる。ちょうど夕暮れ時ということもあり、今夜の食事を求めて多くの店が屋台を含め客を引き込んでいた。
ここは王都でも1番の賑わいをみせるメインストリート。
そんな多くの人が行き交う中、一ヶ所だけ不自然に空いている所がある。
一ヶ所、というのは語弊か。正しくはストリートを進むとある1人の人間の周りだけ人々が避けるように通っていた。
周りの人間が避けるのは仕方ないといえよう。なぜなら、その1人の人間とは、風貌があまりに恐ろしい男であった。
短く刈り上げられた黒髪に、たくましく鍛えられた身体。背負った大剣は使い込まれておりそのオーラは一流の剣士であることは間違いない。
これぐらいの特徴であればこの街には他にも多くいる。たがしかし、この男には1つ異常な点があった。
それは、恐ろしいまでに鋭利な瞳である。
まるで何万と人を殺してきた魔王とでもいうような、眼孔の鋭さと威圧感がある。
まぁつまりものすごく強面なのである。しかもいまは夕暮れ時で薄暗いことも重なり、威圧感は3割増しだ。
王都の住民は彼が誰かを知っている。冒険者として知らぬ者はいないほどの実力を持った剣士であることを。彼が英雄と言われてもおかしくないような人物であり、その中身が外見ほど恐ろしくないことも。
しかし知っててもなお、その顔面の凶器により人々は彼が恐ろしく、本能的に避けてしまうのであった。
これは、いつものことだ。
男が現れ、人々は男を避ける。
それが男の常であった。いままでも、そしてこれからもそうなのだろうと。
…ただひとりの少女をのぞいて。
「はぁぁぁぁ、今日も大変ステキですガルド様…」
ハァハァと危なげな息使いで男を離れた柱の陰から見つめる者がひとり。
魔王のような男に惚れてしまった、美しくも哀れで残念な少女がここにいた。
気が向いたら続きを。