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長政死す

昼下がり暗雲が立ち込めスコールがアユタヤの日本人街を襲った。

スコールは半刻もすれば止むのが常であるのだが、その日に限っては夜半まで豪雨が日本人街に降り続けていた。


生温い空気の中で床についていた弥次郎の軒屋の戸を叩く音がした。

雨風のせいだろうと、再び眠りに就こうとしていた矢先、


「弥次郎、起きろ!一大事だ!」


声の主は友親であった。同じ駿河にある禅寺、清見寺に参じた竹馬の友であるが、友近は隠れキリシタンでもあった。キリシタン弾圧が激しくなるにつれて隠れ蓑に禅寺に参禅していたのだ。


「どうした?こんな夜中に?」弥次郎は眠たげな目を擦りながら答えた。


「御館様が身罷った・・・。」我に返った弥次郎は


「やはり、殺され・・・。」


「しっ!」と友親は弥次郎の言葉を制し


「とにかく、ここも危ない一刻も早く出立の準備を」と言った。


「でも一体どこに?お前は隠れキリシタンの身、祖国には戻れまい」弥次郎が言うと


「俺は、東へ行こうと思う。イエス様の生まれた地、エルサレムを目指す。」と友親は言った。


しばらく思案したのち弥次郎は


「お前とは竹馬の友、お前が行くというのなら、俺も行こう。」と言った。


弥次郎は、その日の内に南蛮具足、槍、日本を離れる時に父が持たせてくれた備前長船祐定を纏めた。


1630年駿河国より朱印船でシャム(現在のタイ))に渡った山田長政は政争に巻き込まれ暗殺された。

その年、同じくして日本人街も焼き払われた。



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