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ダンジョン配信の神様 ~俺がいなけりゃお前らなんてクソの役にもたたねえってことを忘れるな~  作者: 深海くじら


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第36話 初出演 ~第三層の入口は荘厳空間だった~

「視聴者のみんな、こんばんは~! キョーコだよ。ここがどこだかわかるかな?」


 見上げる鏡華の視線を追ってスマホのカメラが上を仰ぐ。

 天空の星のようにきらきら瞬く光。


「ここは新宿ダンジョン第三層。鍾乳洞のドームだよ。ここまで降りるのはたいへんだったけど、なんかその苦労もぜーんぶ吹き飛んじゃうくらいすっごい眺め。うまくみんなに伝わるといいんだけど」


―― きらきら!


―― なに? プラネタリウム?


―― オレも連れてって~


「お引越しとかしててずいぶんお待たせしちゃったけど、いよいよ今日から新しいフェーズだよ。それに先立ってなんだけど、新しいレギュラーメンバーを二人、紹介しちゃいまーす。といっても、まあ前から一緒にやってる人たちだから、追っかけてくれてる『ロジ担』のみんなならもう知ってるかもしれないけど」


―― ついに解禁?!


―― リアルT-800!


―― おっさんの星?!


―― パンツ脱いで待ってる


―― ↑見境なしww


 導入したばかりの新兵器、ジンバル(要はホルダー付き手持ちスタンドの高性能な奴)でスマホ画面を向けてくる水面に、目元の隈取りをした鏡華が調子よく語りかけている。画面の下部でコメントが流れているんだが、鏡華の横に立ってる俺には文字が小さすぎて追うことができない。


 と、いきなり伸びてきた手に腕をひっぱられた。


「じゃーん。毎度おなじみ、ランボでぇーす。つか、まともに画面に出るのははじめてだよね?」


―― ランボ登場!


―― うずまきwwww


―― I'll be backのときに出たじゃん


―― 両の頬っぺたにバカボンマークとか、ウケる


 画面に映った俺。背の低い鏡華は台の上に立ってるから、画面の中では顔が並んでる感じ。京劇調にメイクした鏡華と違い、俺のメイクは真っ赤な太字で両の頬っぺたに描かれたぐるぐる渦巻きだ。

 ほら、と背中を叩かれ促された。なんか喋れってことらしい。


「あ、えと、ランボです。主にWiFi機器を設置してます」


―― クソネットの中の人


―― お世話になってまーす(一層しか行ったことないけど)


―― そんだけ?


「お次はダンディ!」


 ツルタ氏が、画面の反対側に引っ張りこまれた。いつもの警備員服を着ていて、メイクは濃紺の目張りだけ。普段は使わない制帽をかぶってる。なんか知らんが、俺の百倍かっこいい。


「ツルタ、です。見ての通り、警備を生業としております」


 ツルタ氏、本名言っちゃってるし。

 あ。俺もか。


―― ダンディ、つるたさんっていうの?


―― 渋っ


―― キョーコちゃん、ドリカム状態じゃん❤


―― ↑なにそれ?


―― ランボさんのうずまきが強過ぎて草


(アカ)名みて気づいてる人もいるだろうけど、あたしとミナヨのユニットが四人に代わったんで、名前も変わったよ。新しいチーム名は『みちのくサスケファミリーズ』! 略して『チームMSF』。これからも応援よろしくね!」


     ⌚


 第三層に繋がる洞窟はところどころで急峻な勾配のある下り坂だった。岩肌は鍾乳洞のように湿り気のある石灰岩で掴みどころも少ない。先達が打ち込んでくれた杭とロープが無ければ、荷物を持って下るなどとてもできなかった。


「けっこうヤバいですね。この道」


 両手を開けるために荷物を減らして背中と胸に集中させた水面が、スパイクのついた靴でゆっくりと降りている。彼女の背中からは光ファイバーのケーブルが送られていた。それを手繰って、俺とツルタ氏が岩壁にステーを打ち込み固定していく。三人の警備員たちは、予備のケーブルひと巻を交互に渡しながらおっかなびっくりついてきている。


「おかげでモンスターが現れることもない」


「ここじゃ羽根がないと自由に動けないよ」


 俺の気休めに先頭の鏡華が応えた。

 ここに降りる前に拡散型の黒玉をひとつ投げ込んでいた。その効用もあって、本来ならここの住人であるコウモリたちも姿をくらませている。


「この地層は、あきらかに海底起源ですね。関東ローム層とはまったく別物ですよ」


 いままでやったことはないと言いながらも設置作業を器用にこなすツルタ氏が、鍾乳洞に手を当てて言った。


「モンスターがひと段落したら、ここは地質学者たちの天国になりますね」


 たしかに。ここは謎が多過ぎる。

 そもそもこのダンジョンは、いったいどこから来たのだろうか。ツルタ氏の言う通り、関東平野誕生を説明するこれまでの学説からは、どう考えても逸脱してやがる。それこそ、まるで降って湧いたみたいな。


 途中一か所のDASで光ケーブルを繋ぎ直し、用意してきた二百メートルをほぼすべて使って第三層に降り立った。標高差にして三十メートル以上。


 第三層のエントランスはテニスの競技場並みの広さがある。天井も高く、真上を仰ぐと、ヘッドライトを反射した鍾乳石のつらら群がプラネタリウムのように光っていた。


「これから毎日ここを往復するのかあ」


 滑らかな石に座り込んでぼやく鏡華が、白い息をはあっと吐いた。


 たしかにこの移動は骨だ。今日はケーブル設置もあったから半日かかったが、ただ降りるだけでも小一時間は掛かりそうな気がする。


 足元に荷物を下ろして背中を伸ばす水面が、姉のぼやきに言葉を返す。


「これからは二、三日は潜っていられるようなキャンプ道具が必要だね」


 休んでいる姉妹を尻目にルーターの設置を行ってる俺は、手を動かしながら口を挟んだ。


「や、探索者ならそれでいいかもしれんけど、俺たちの主目的はあくまで工事なんだから。もしそれやるっつーんなら、この層にも機材の倉庫を建てねえと」


「あー、また引越しかあ」


 がっくりと首を垂れる鏡華。それをツルタ氏が正論でなだめる。


「しばらくはないですよ。ほら、この坂じゃ、さすがに冷蔵庫やソファは運べませんから」


「よし、繋がった。水面、チェックして」


 スマホを取り出した水面は、WiFiの設定画面を開いてエントランス空間の闇に向かって歩いていく。


「おっけーでぇす。SJDG03001、ちゃんと読み込まれましたぁ」


 水面の返事が反響した。


「よし、やるか」と言って立ち上がった鏡華は、スタンドを立てた投光器をたよりにメイクを直し始めた。戻ってきた水面も、届いたばかりの荷物を開き、取り出したジンバルに自分のスマホをセットする。


「今日はニューフェイスの紹介からはじめるから、ランボもダンディも自己紹介くらい用意しといてよね」


 そう言って鏡華は俺に紙片を差し出した。ナルトみたいな渦巻のシール。


 やっぱこれ貼るっきゃねえのか。


 あきらめて、自撮り画面で確かめながらタトゥーシールを両頬に貼りつけた。まるでバカボンのパパだよ、これじゃ。


 向こうではツルタ氏が水面に顔をいじられている。


「じゃ、いきますよぉ。三、二、一、キュー!」


 水面のカウントを合図に、新宿ダンジョン第三層初の『みちのくサスケファミリーズ』ダンジョン配信実況がはじまった。

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