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ダンジョン配信の神様 ~俺がいなけりゃお前らなんてクソの役にもたたねえってことを忘れるな~  作者: 深海くじら


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第18話 覚醒例 ~順風満帆も、いつまでも続いてくれるわけじゃない~

「ランボ、なんか今日はごきげんじゃん。ヘルメットにもなんか新しいの貼っつけてっし」


 ミーティングを終えたあとのブレイクで鏡華が水を向けてきた。彼女が差すのは、俺がいま貼ってるシールのこと。鏡華たちがネットで選び、揃いで購入したバイザー付きの自転車ヘルメット。その中の俺の分に、週末入手したライブグッズのロゴシールを貼りつけているのだ。

 あばら骨みたいに隙間だらけの白いヘルメットの後頭部に少しだけある平面スペース。そこに描かれたメーカーロゴに被せるようにして「BEASTY」のシールを貼る。

 なんか帰属感が湧いてきて、嬉しいぞ。


「にやにやしてんじゃねーよ」

「うっせ。ほっとけ」


 鏡華が絡んでくるのは興味ある証拠。いまだって冷やかしつつも、こっちの手元を覗き込んでくる。


「なにそれ? 怪獣アニメかなんか?」

「バンドだよ。俺が推してるロックバンド。今度な、メジャーデビューすんだよ」

「へえ。ランボ、音楽とか聴くんだ。意外~」

「大きなお世話だ!」


 悪態を返しながらヘルメットを横に置き、流れのままに備品チェックをはじめる。出撃前のルーティーン。頭が仕事モードに切り替わっていく。

 おおむね踏破されたといわれる第二層。俺たちの仕事の今のフェーズはこの層の5Gエリア拡充だ。既知部分のマップに重ね合わせると、第二層全体での通信カバー率はすでに半分を超えてきてる。まあそれだけ俺たちが仕事をしてきたってことだ。そろそろ第三層へのアタックも視野に入れないといかんかもしれん。


「それにしてもこの部屋、ものが増えましたね」


 水面のつぶやきが耳に入ってきた。目をやると、飲みかけのエナジージェルを片手にした水面がベースキャンプの中を見回している。釣られて俺も、一緒になって周りを見た。最初に導入した電気ポットからはじまって、トースター、冷蔵庫、電子レンジ、炊飯器、液晶ディスプレイ、エアマット、除湿器などなど。完全に姉妹の生活の場になっている。最近は買い出しに行くたびに水面がUFOキャッチャーをしたがるので、クッションやらフィギュアやらも加わっている。それら生活物資に本来の機能である備品棚が並ぶわけだから、広々としていたはずの洞窟が手狭に見えてくるのも当然だ。


「大きいの運び込む役目は水面にまかせっきりだけどな」


 えへへ、と照れる水面。

 他のパーティーの目もあるので、冷蔵庫など大きなものの搬入はいつも深夜か早朝に行う。翌日の仕事に影響するとマズいから、たいがいは休前日の作業だ。当然、俺も立ち会う。

 なんか俺、生活を完全に侵食されてねえか?


 業務備品以外の物資購入はすべて俺のカードでまかなっている。といっても全部持ち出しだってわけじゃない。配信で収入のある姉妹からもしっかり振り込まれるし、水や食いもんといった消費財に関しては仮払いで賄ってるから、ちゃんと明朗会計だ。というか、毎週五十万とか三十万とか入ってくる機器設置ボーナスで残高を心配する必要が無くなってるのだ。おかげで買物するのが雑になっていけない。鏡華など、冷食保存用に上蓋型の冷凍庫が欲しいとまで言い出してる始末だ。


「とはいえ」と状況を振り返る。

 第二層自体、上層よりだいぶ広く、二本の主隧道やそこから枝分かれしてる道の、いま行けてる端まででも、エントランススタートで軽く二時間はかかっている。新規の端末を設置するには、移動だけで往復四時間以上費やさなきゃいけないのだ。作業効率もそうだが、このままでは設置ボーナスも期待できなくなってしまう。


「そろそろ次のベースキャンプを考えないといけないですね」


 声に見上げるとツルタ氏が傍らに立っていた。


「え? 俺、声に出してた?」

「いえ、聞こえたのは『とはいえ』だけ。ただなんとなく、ランボさんがそんなことを思ってるように感じまして。というか、当たりですか?」

「いや、当たってるけど、なんか凄いっスね」


 ちょっと普通じゃないでしょ。俺、地図見てただけだよ。


「強いて言えば、タブレットをスクロールする手が止まったのと息遣いのテンポ、ですかね。自分もはっきりと言えるものではありませんが」


 まただ。

 まるで俺の心の声と普通に会話してるみたいなスムーズさ。

 なんなの? テレパシー?


「先週も部下から言われましたよ、最近勘の精度が上がってませんかって」

「いまだけの話じゃないんですか」


 ええ、と言って、ツルタ氏は頭髪を撫でた。

 俺は、以前の居酒屋で聞かされた鏡華の言葉を思い出していた。


―― ダンジョンの滞在時間が長くなると身体に変調が訪れるって話、聞いたことない?


 考えてみれば、俺やツルタ氏のここでの仕事はらくにひと月を超えている。朝入れば夜までそのままだから、最低でも八時間は籠りっぱなしだ。いや、残業を入れれば週五十時間は優に超えているだろう。とすれば、すでに二百五十時間は突破しているはず。


―― 自覚できるくらいになるのは早くても二百四十時間以上って噂だけど。


 もしかして、ツルタ氏は特徴(アビリティ)ってやつを拡張しはじめてんのか?


     ⌚


「そういえばなんだけどさぁ」


 作業地に向かう往路で隣を歩く鏡華が潜めた声で話しかけてきた。


「あたしたちのチャンネル宛にメッセージ(DM)が届いたんだよね、王塚ってのから。たぶん、前にランボが言ってたクソネットのCEO」

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