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ep.12

僕たちは新たな目標を持った。

北の荒れ地にいるという蛇を倒すことだ。

それがどれほどの大きなでどんな姿をしているのか全くわからない。


────


バッシシは若い頃に王の命令で討伐隊に参加して北の荒れ地に行ったそうだ。

討伐隊は蛇の這った跡をみつけ、近づいて行ったという。

討伐隊のメンバーは全部で20人。

そのうち魔法使いは5人いたそうだ。

バッシシたち魔法使いは討伐隊の後方を任されていた。


普通に他の魔物も出てくるので思うようには進めなかったという。

そしてやっと巣穴のような大きな洞穴をみつける。

中は暗くて見えなかったそうだが、奥に2つの光るものが見えたという。

討伐隊は誘き出して一気に畳み掛ける作戦を立てた。

そして囮になる戦士が洞穴の前まで進む。

大きな音を立てて蛇を誘き出そうとした。

するとシャーッと大きな鳴き声が聞こえ、次の瞬間目の前が真っ暗になり、大きな風圧を感じたと思ったらあっという間に荒れ地の入口に飛ばされていたという。


その後、蛇の這った跡はみつからず、あの大きな洞穴も二度と見つからなかった。

奇跡的に負傷者は誰もいなかったが、2回目の討伐隊を志願する者は誰もいなかった。

そして今に至るということだった。


────


「とにかく20人もの人間を一瞬で遠くまで飛ばす能力があるってことだよね。」

「そうじゃ。目の前を真っ暗にされたからのぉ。何が起こっていたのか、あの場にいた誰もが見ておらん。」

「でもさぁ、誰もやられたわけじゃないし、飛ばされて無傷で帰れたんでしょう?なんだか悪いやつに思えないんだよなぁ。」

ライハルトは納得のいかないという顔をしていた。


「そうじゃな。わしもあそこにドアを設置して定期的に見ているが蛇の姿を目にしたことは一度もない。確かに他の生物もいないから、あの場所に何かがあるのは確かだと思うがな。」

「敵を知らないことには作戦も立てられませんね。」

僕たちは魔法の特訓をしながらどうやってアプローチするのがいいか考えた。


突然行って探し回るのも1つの手だろう。

もしかしたら荒れ地になる原因は他にあって、蛇なんてとっくにいないのかもしれない。


シュッと光の矢が飛んでいき、遠くにある岩を砕いた。

僕の光魔法は格段に上達していた。

蛇を倒すと決めてから僕は覚醒した。

そういえば僕は追い込まれないと力を発揮できないタイプの人間だった。


蛇がまだいるとして、20人もの人間を飛ばす能力を持つものにこんな細い矢が届くのだろうか。

上達したとはいえ、まったく自信がない。


「バッシシさん、光とか闇の魔法について書かれている本とかありませんか?」

「ない。使い手が少ないのと、光とか闇の特性を持つ者は変人が多い。本を書いたり書かせたりするようなやつがいなかったのだろう。」

僕は変に納得してしまった。

珍しい特性を持って生まれると周りが普通には生きさせてくれないのだろう。

変人が多いというのはそういうことも起因しているように思う。


「なんかこう、バーっと広範囲にキラキラして浄化するーみたいな魔法ありませんかね?」

「わからん。やってみればいいじゃろ。」

(確かに)

魔法は想像力だ。

キラキラをワーッとばら蒔くイメージだ。


僕は集中した。

両手を天に向かって広げてこの辺り一帯をきれいにするイメージをした。


「出てこい!キラキラ!」


僕の声は虚しく響いた。

「ケイタ、出てこないぞー。」

ライハルトは呆れたように毛繕いをしている。

「さすがに無理だったか。」

「いや、一度失敗したくらいで諦めるものじゃないぞ。できると思えばできるんだ。できるまで諦めるな!」

バッシシはそう言うと僕の背中をバンと叩いた。

僕はもう一度両手を広げた。


(僕にはできる)


数秒だったけど辺り一面がキラキラと輝いた。

だから何かが起きたわけではない。

光の玉が小さな粒となって降り注いだだけかもしれない。

「ケイタ!キラキラしたぞ!やったね!」

「うん。キラキラした!」

僕は立っていられなくなってその場に腰をついてしまった。

「これは体に支障が出るみたいだ。」

バッシシは「魔力が足りないんじゃ」と言った。

僕はバッシシの魔法で運ばれて家に帰った。


────


『私も見たかったわー!キラキラ!』

あの瞬間、カナさんは料理をしていたという。

今日は炊き込みご飯と唐揚げだった。

みんなの要望でご飯はカナさんが作ることになった。

僕もできなくはないけど特訓で疲れているからと、カナさんが一人でやってくれている。

美味しくてバラエティ豊かな食卓でみんなが幸せだった。


僕は食事を終えてもまだしっかり歩くことはできなかった。

フラフラとベッドに倒れ込むように移動してそのまま眠ってしまった。


僕のMPが少ないせいだとバッシシとライハルトが話していたので、カナさんは僕が寝ている間に僕のステータスを見たという。

普通や少ないがわからないのでカナさんは自分のと比べた。

数値はカナさんの方が上だった。

カナさんは僕が傷つかないように、と誰にも言わなかった。


────


そして次の日、やっと普通に歩けるようになった僕は昨日と同じようにキラキラの魔法を試した。

カナさんは次こそ見逃さないと張り切って見学をしている。

僕はあのキラキラに治癒魔法的な付加をつけた。

浄化っぽい、という理由で。


今日は昨日より範囲が狭かったが、ちゃんとイメージしたとおりのキラキラが出た。

『ケイタくん!すごいじゃない!すごくきれいだったわ!』

(花火でも打ち上げたような反応だな)


やはり魔力の消費が激しいようだ。

僕は倒れる前にその場に腰を降ろした。


「ケイタ!!何をしたんじゃ?!」

バッシシは崖の下の方を指差して叫んでいる。

僕のところからは見えない。

「何って、キラキラさせただけだと思いますが。」

ライハルトはバッシシの肩に登った。

「わぁ!ケイタ!すごいことになってるよ?」

僕は立ち上がれずに這って崖の下を見に行った。


そこには美しいオアシスができていた。

「あれ?こんなのありましたっけ?」

「ない。まったくもってない。」

「ケイタのキラキラのせいだろ?さすが光魔法だね!ぶっ飛んでるなぁ!」

『ケイタくん!私にも見せてよ!』

カナさんが叫ぶので僕はスマホの画面を崖の下に向けた。

カナさんも『わぁ!すてき!』とすごく喜んでいた。

「すごいけど、これじゃ蛇は倒せませんよね。」

「いかにも。無理じゃろう。」


僕はその場で力尽きた。


────


2日連続バッシシさんに運ばれて帰ってきた。

情けないにもほどがある。

「ケイタの魔力はどうなってるんじゃ?少ないにもほどがあるじゃろう?まさか1桁や2桁しかないなんて言わないよな?」

バッシシさんは少し怒っていた。

「知らない。多分僕よりは少ないと思うよ。チョット前までレベル6とかだったし。」

『あの、黙っていたんだけど。ケイタくんの魔力ってMPってやつの数値かしら?普通がわからないから低いと思っていたんだけど、私より低かったし…ケイタくんのMPは今1852って書いてます。』

「なんじゃと?!」

バッシシは驚いて鑑定スキルを使った。


「なんと!!本当じゃ!!」

「それってすごいの?バッシシ様はどれくらいなの?」

「わしか?わしは2500くらいじゃったと思う。」

「ねぇ、カナ!僕のは?」

『ライちゃんは935って出てますね。』

「えぇー?!」

「いや、ライハルトの935も並の魔法使いよりもずっと多いぞ。」

「どういうことですか?」

僕は力を振り絞って会話に参加した。


────

梶田圭太 ♂ 16歳

レベル 78

【特性】光 解体 調理 


攻撃力 75

防御力 68

すばやさ 54

HP 452

MP 1852

────

ライハルト ♂ 6歳

レベル 105

【特性】火 水 風 土 雷 氷


攻撃力 1287

防御力 241

すばやさ 514

HP 342

MP 935

────

水川カナ ♀ 54歳

レベル 170

【特性】スマホマスター 商売 アイテムボックス  

調理 目利き 調合


攻撃力 10

防御力 10

すばやさ 10

HP 1320

MP 2001

────


僕たちはステータス画面を凝視した。 

前回確認したときより格段にレベルアップしている。

カナさんに関しては戦う前提にいないので攻撃力なんかは別として、見知らぬ特性が増えていた。

ライハルトも雷と氷の特性が追加されている。

「あれ?僕、雷の魔法も使えるの?!」

ライハルトは指からビリビリしたものを出した。

それが僕の方へと飛んできた。

「やめてよっ!」

間一髪で僕はビリビリを避けた。

「ごめんごめん。気がつかなかったけど、雷も氷もできそうだよ!」


バッシシは自分の髭を撫でながら「うーん」と唸っていた。

「おぬしらはどうやら規格外じゃのぉ。わしもたいがいじゃが。」

褒められているのか貶されているのかわからない。


「僕がやろうとしている魔法はすごく魔力を使うってことですよね?」

「そうじゃな。ケイタがしようとしていることは、とんでもない効果があるかもしれんな。」


僕の魔力が足りないわけではない。

それがわかっただけでもよかった。

(攻撃力や防御力が低いのは見なかったことにしよう)


ライハルトのためにも北の荒れ地をなんとかする。

僕は珍しくやる気に溢れていた。


────


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