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雪月花のソード・ワルツ  作者: 桐谷 暁人
第一章
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1話 プロローグ

皆さん初めまして!!

桐谷暁人と申します。

初投稿の作品ですが、何卒宜しくお願い致します。



 桜が咲き、雲一つない見事な晴天の日の昼下がり。

 ある病院の一室ではベッドに座る真紅の髪の女性が窓から見える桜と青空を眺めて嬉しそうに目を細め、呟いた。


「桜も見頃になったわねぇ。ここからだとよく見えていいわぁ」

「ああ、そうだな」


 女性の呟きに答えたのは、ベッドの傍らの椅子に座る一人の少年だった。少年は黒に所々が女性と同じ真紅の髪で、同じ黄金の瞳を持ち、端正に整った顔立ちは女性と似ていることから姉弟だと予想できる。


「母さん。体は大丈夫?」

「ええ、今日は調子がいいの」


 なんと、二人は姉弟ではなく親子だったようだ。女性の外見は子持ちとは思えないほどに若々しかったので、初見で気付くものは少ないだろう。息子の問いかけに女性は笑みを浮かべてそう答えた。次いで、今度は女性の方が少年に尋ねる。   


「もう来年でしょう?学園はどこに通うか決めた?」

「うん。俺は『翠蓮』に行くよ」


 その学園の名を聞き、女性は表情を綻ばせる。


「『翠蓮』ねぇ。私も通ってたわ。あそこはいい学校よ」


 彼女曰く、少年が来年から通う学園は彼女も通っていたらしい。

 彼女はそう呟くと、手を伸ばしてベッド脇にあるテーブルの引き出しを引き中を漁り始める。


「なら、これから更に立派になるだろう息子に、お母さんからとっておきのプレゼントをあげ

る」

「プレゼント?」

「ええそうよ。なんだと思う?」

「うーん、時計とかか?」

「あら、ソレも良かったわね。でも、残念。ハズレよ」


 少年にそう言いながら、やがて彼女は引き出しから目的のものを取り出して少年に大袈裟な動作で掲げて見せた。


「じゃじゃーん!正解はお母さんの『|魔魂結晶

《アニマクリスタ》』でしたーー!!』

「えっ… … 」


彼女の手にあったのは赤い紐に結ばれた桜色の五枚花弁の結晶— — 魔装(ギア)を具現化するための結晶媒体『魔魂結晶』。少年はソレを見て、目を見開き小さく声を漏らしてしまう。


「ふふふ、驚いたでしょー?」

「いや、驚いたっていうか… コレがなかったら、母さんは魔装を… … 」


 戸惑う少年の問いかけに、彼女は平然と頷く。それは、既にわかっていることだから。


「そうね。コレがなければ、私は魔装を使えないわ。私以外が持てば、ソレはただの綺麗な結

晶よ」

「だったら… … 」


 そう呟く少年の言葉を止め、でもね、と彼女は続ける。


「それでもいいの。私が貴方にお守りがわりに持っていて欲しいだけだから。きっとこれから

貴方はたくさん苦労するわ。もしかしたら、折れるかもしれないし、逃げたくなるかもしれな

い。だから、そんな時にコレを見て励みになれば嬉しいの」


 彼女はそういうと少年の右腕を掴み、手首にあらかじめ巻き付けてあった白い紐に赤い勾玉が繋がれている彼自身の『魔魂結晶』に重ねるように自分のモノを巻きつけていく。

 やがて巻き終わると彼の手首では赤い紐と白い紐が交差し、緋色の宝玉と薄紅色の桜がきらりと陽光に反射して輝きを放っていた。


「うん。出来た」


 彼女はソレらを見て、満足気に頷くと彼の手首に巻き付かれた二つの結晶に優しく手を添え

る。


「これから頑張ってね。私は、ずっと貴方の、和樹の味方だから。血なんて関係なく貴方は貴方が進みたい道を進めばいいわ。私はずっとその道を応援しているから。それに貴方にはあの子との約束もある。だから、何があっても諦めないで。きっとあの子もそれを願っているわ」


 彼女の言葉に呼応するかのように、外では桜が大きく舞っていた。



▼△▼△▼△



 東京都ー東京湾上にある巨大埋立地にある学園ー第一魔装学園(アカデミー)ー通称《翠蓮》。そこではこの日、新一年生の入学式が行われようとしていた。第一魔装学園の正門に続く一本道では白と緑を基調とした上着に、薄緑のシャツ、黒色のズボンやスカート、黒いネクタイという翠蓮の制服を着用した新入生達が続々と正門をくぐり中へと入っていく姿があった。彼の姿もそこにあった。

 

「入試んときも思ったが、生で見るとやっぱ翠蓮はでけぇな。さっすが国営の教育施設だ。かけてる金が違うなぁ」

 

 駅の改札を出て、信号の手前で通学バッグを肩にかける黒髪に赤髪のメッシュが特徴の大柄な少年―九条和樹は信号の向こうの一本道の先にある大きな建物を見上げながらそんなことを呟いた。


「さて、待ちに待った魔装学園。いったいどんな奴らがいるのやら。今から楽しみだな」

 

 和樹はこれから始まる新生活に一人胸躍らせながら信号を渡る為に歩きだす。その一歩目を踏み出した時、和樹は予想外の光景に目を丸くする。


「は?」


 自身の視界の左端。そこから信号が赤にも関わらずに一切速度を落とさず爆走する一台のトラックがいたからだ。トラックは周囲の新入生達のどよめきを無視して、突き進む。

 しかし、不思議なことにそのトラックからは一切の音がしない。『魔法』を使っているのだろう。そして、そのトラックが向かう先を見て和樹は思わず声を上げる。


「は?おいっ、嘘だろっ!?」


 自身の視線の先で爆走するトラック。その進路上に一人の少女がいたのだ。遠目からでは銀髪の女の子しか分からない。少女は未だ迫るトラックの存在に気が付いていない。このままでは少女は轢かれてしまう。


「やべっ!」


 焦燥を露わに和樹は駆け出した。そして、一歩目を踏み込んだ瞬間に、彼は両足を赤光で包むと足元のコンクリートを踏み砕きながら弾丸の如く飛び出す。

 『魔装使い』の基礎である魔力を用いた身体強化。

 それを全力で使用した和樹は瞬く間に追い抜き、少女の腕を掴むと自分の胸元に抱き寄せた。


「え?」


 ふと自分の腕の中でそんな驚きの声が聞こえてきたが、和樹はそれに構わずそのまま前方へと飛んだ。その直後、和樹達がいた場所をトラックが凄まじい速度で通り過ぎ、少し離れた先にある壁に轟音を立てて激突した。

 

 白昼にトラックが暴走して壁に激突するという異常事態に、周囲の人間が悲鳴やどよめきの声を上げる中、地面に転がった和樹は身を起こすと腕の中にいる少女に声をかける。


「おい!大丈夫かっ?」


 切羽詰まった声で少女に安否を尋ねた和樹は、思わず息を呑んだ。

 今になってやっと彼女の顔を見たのだが、その少女は一言でいえばとても可憐だった。

 穢れを知らない新雪が具現化したかのような癖のない白銀の髪と白い肌。

 百人が百人口をそろえて美少女だと称しても過言ではないほどの美しく整った顔立ち。

 その美貌の中央には穏やかな輝きを秘めた一対の淡青白色の瞳がある。

 可憐。まさしくその一言に尽きる。和樹は並外れた容姿の彼女に完全に目を奪われていた。


「あ、あの……」


 完全に目を奪われ呆けていた和樹に戸惑いの声がかけられる。ハッと我に返った和樹が見れば下にいる少女が若干頬を赤くしながら困惑の表情で自分を見上げていた。


「あっ、す、すまん。その、怪我はないか?」

「え、ええ、大丈夫です」

「そ、そうか」


 少女自身の口から無事と聞かされた和樹は安堵の息をつくと、そそくさと少女から離れた。

 少女もゆっくりと立ち上がると服についた埃をパッと祓ってから和樹へと視線を向けると、


「その、危ないところを助けてくださり本当にありがとうございました」

 

 礼儀正しく見事な所作で深々と頭を下げて感謝の意を示した。


「お、おう、怪我がないなら何よりだ」


 未だ衝撃が消えてないのか和樹は少女の感謝に照れくさそうに呟きながら思わず顔を背ける。その時だ。校舎の方から教員らしき人物が数名駆けてくるのが見えた。


「君達大丈夫かい!?」

「怪我はない?大丈夫?」


 スーツを着た若い男性教師と白衣を着た女性教師が和樹達に駆け寄り安否を尋ねた。


「はい、この人のおかげで私は大丈夫です」

「俺も大丈夫です」


 二人の言葉にしばらく二人の様子を観察していた教師達は本当に何ともないのだと判断すると漸く肩を撫で下ろした。


「そ、そうか。本当に怪我はないようだね。よかったよ」

「ええ、私が診た限りでも異常はないわね」

「そうか。それじゃあ、二人は入学式もあるからそろそろ行きなさい。後のことは僕達が処理するから」

「分かりました」

「はい、お願いします。ですが、後で一応何があったかお聞きしてもよろしいでしょうか?立場的にも確認しなくてはいけないことですので」

(立場?)


 教師二人とそんなやり取りを交わす少女の発言に和樹は眉を顰めると一人静かに考える。


(立場的にってことは、それなりの家柄の子か?話し方からしても、育ちがいい感じがする……いや、待て、この子の容姿に白銀の髪……)


 少し考えた和樹は少女の容姿に注目すると、彼女の立場について一つの可能性が浮上する。


「あ、あの……」


 しかし、その思考はそこで止まる。それは隣にいる少女がこちらを見上げる声をかけてきていたからだ。

 気づけば、教師達も壁に突っ込んだトラックの方へと向かって運転手の安否を確認しようとしているところだった。


「!あ、ああ、なんだ?」


 思考を中断させた和樹は慌てて少女に向き直る。しかし、彼女の美貌をまともに直視することはできず、ドキドキとしていたが。

 少女は和樹の様子に首を傾げつつも、深々と頭を下げた。


「その、危ないところを助けてくださり、ありがとうございました。お礼は後日改めてさせていただきます」

「いや、怪我がなくて何よりだよ。それにお礼も大丈夫だ。別に何か見返り求めてやったわけじゃないしな」


 特に下心もない和樹は彼女に怪我がないことを素直に喜んだ。そして、和樹に礼を言った少女は顔を上げると和樹に一つ提案をした。


「あ、あの、せっかくの機会ですし、一緒に行きませんか?私と同じ新入生ですよね?」

「あ、ああ、いいぞ」


 まさか、こんな美少女にともに学園まで歩こうという提案をされるとは思っていなかったが、ここで態々断る理由もないので和樹は未だドキドキしつつも二つ返事で了承した。少女は、嬉しそうにほほ笑むと、和樹に向き直り佇まいを正すと、自身の胸に片手を当てて自己紹介をする。


「その、申し遅れました。私は白宮雪華です。よろしくお願いします。貴方のお名前は?」


 少女―白宮雪華の自己紹介に和樹は内心で驚く。


(いいとこのお嬢さんだとは思っていたけど…まさか、『御三家』の一角、白の家系の子だったとは……)


 彼女の所作から良家のお嬢様やそれに近しい家系の子だとは予想できていたが、ふたを開けてみれば彼女は名家中の名家の出身。平安時代から続く日本最古にして日本最有力。名字に色を冠する三つの名家『御三家』が一つ。『白』の名家白宮家のご令嬢だと誰が思うだろうか。

 入学初日からアクシデントに遭遇したかと思えば、とんでもない子と知り合ったなと内心で慄きつつも、和樹も自己紹介をする。


「初めまして。俺は、九条和樹だ。これからよろしく。白宮さん」


 そう名乗り返して、和樹は自分の手を彼女に差し出す。握手の構えだ。雪華は差し出された手に一周驚くも、すぐに嬉しそうにしつつ自分も右手を出して彼の手を握り握手を交わした。


「ふふっ、はい、よろしくお願いしますね。九条さん」

 

 彼女と握手を交わした和樹はバッグを持ち直しながら、彼女に声をかける。


「じゃあ、そろそろ行こうぜ」

「はい」


 そして、彼らは入学式が行われる本校舎の大講堂に共に向かった。



▼△▼△▼△



 本校舎内にある大講堂は座席の半分が新入生によって埋められていた。出入り口にいた教員や生徒会役員らしき生徒達の様子からも座席の指定はなく、皆好きなところに自由に座っているようだ。そして、和樹がどこか空いているところに適当に座ろうかと雪華に提案しようとするよりも先に、雪華が言う。


「九条さん、私は主席として答辞をしなくてはいけなくて、ここで一旦お別れになってしまいます」

「そういうことなら急いで行ったほうがいいんじゃないか?もう、始まるまで三十分切ったぞ?」


 和樹が自分の時計を見れば、入学式の開始時刻まで確かに三十分を切っていた。主席として答辞で舞台に立つのならばリハーサルの時間が必要なはずだ。そういう意味で、彼女に急ぐようにせかす和樹に雪華は落ち着いた声音で返す。


「リハーサルのほうは何度も練習してるので大丈夫ですよ。でも、確かに時間が押しているのでそろそろ行きますね。また後で会いましょう」

「ああ、また後でな」


 そう返してひらひらと手を振る和樹に、雪華は軽く頭を下げると小走りで舞台のほうに走り去っていた。彼女の背中を見送り一人になった和樹は視線を大講堂全体に巡らして、左側中央の端の席に座ることにした。バッグを足の間において席に座った和樹はふと気づく。 


(そういや、白宮さん何組か聞いてねぇや)


 白宮家のご令嬢にして新入生主席の彼女がどこの組に配属されるのかを聞きそびれていたことに。クラス分けは入学前に学園より送られてきた制服と一緒に同封されていた携帯端末を見れば確認することができる。学園より支給されるこの携帯端末は生徒手帳も兼ねており、更には学外でも使える電子カード機能や寮の自室の電子キーの機能も兼ね備えているという優れものだ。これで、クラスがどこなのかを確認できるのだ。和樹は一組に配属されている。さっきここに来るまでに聞いとけばよかったなと残念がるも、入学式の後にまた聞けばいいかと思考をすぐに切り替えた。


(というか、白宮さん、主席だったのか。……いや、あの魔力量だ。それに彼女の動き……相当できる部類だったからな。主席なのも納得か)


 和樹は雪華が主席だったことに一瞬驚いたもののすぐに納得する。彼女に会ったときに内から感じた研ぎ澄まされた氷のような莫大な魔力のオーラ、そして、所作の一つ一つからうかがえる明らかに武術に精通した動きに、和樹は彼女なら主席になってもおかしくはない思ったのだ。

 そして、まだ時間もあるため本でも読んで時間を潰そうとバッグから文庫本を取り出そうとしたとき、不意に彼に声をかける者がいた。


「なぁ、隣いいか?」


 顔を上げてみれば、そこには人懐っこい笑みを浮かべた茶髪の男子生徒がいた。彼は確かに和樹を見ており、声をかけたのだ。


「ああ、どうぞ」


 入学式で誰かと仲良くなりたいとい腹積もりだろうか。とにかく、和樹としても誰かと交流はしておきたかったため、あっさりと頷く。


「サンキュー」


男子はいかにもな軽い感じで礼を言って和樹の隣に座ると自己紹介をしながら手を差し出した。


「俺は桐葉迅だ。クラスは一組。よろしくな」

「九条和樹。同じ一組だ。こっちこそよろしく」

「お、同じクラスか。ついてるな」

「そうだな。俺としても運がいい」

 

 いきなりクラスメイトに巡り合えたことにお互い笑みを浮かべる。迅は見た目にそぐわず快活な少年であり、人懐っこさとは裏腹に大人びた雰囲気も漂わせていることから、彼自身のアンバランスな魅力を引き立てていた。背は座っているから確かではないが、和樹より少し小さいぐらいだろう。


「しっかし、魔装学園は広いなぁ。俺ちょっと迷っちゃったよ」

「確かにな。俺らも地図とか係の先生の案内がなかったら、迷ってたろうな」


 この学園は本当に広い。新入生達だけでは迷う可能性も否めないほどだ。だから、迷いそうなところでは教員や生徒会の生徒が待機していて案内をしているのだ。しかし、今の会話で気になることでもあったのか、迅は眉を顰める。


「俺ら?もう知り合い出来たんだな。それとも元から知り合いの子と一緒に来たのか?」


じゃ、その知り合いはどこにいるんだと周囲を探す迅に、和樹は答える。


「今は別行動だ。白宮さんは主席だったから、答辞のために舞台裏に行ったよ。後で、合流する予定だ」


 平然と答えた和樹に、迅は目を丸くする。


「白宮って、まさかあの『白宮』か?この学園に主席入学したのかよ!?」

「多分、その白宮であってると思うぞ。魔力量もすごかったし、いいところのお嬢様って感じしたからな。でも、そんなに驚くことか?」

「いやいや、驚くことだろ。だって。御三家の令嬢だぜ?普通近寄りがたいもんだろ。なのに、いいところのお嬢様みたいって、お前さん肝が据わってんなぁ」


 誰もが知る名家のご令嬢と会えば近寄りがたい空気になるのが普通だ。だが、和樹はその名家のご令嬢であろうと平然と知り合っていたことに迅は感心の目を向けると、若干食い気味に尋ねる。


「まあそれはそうと、どんな子だったんだ?」

「礼儀正しい人だったぞ。まさしく、良家のお嬢様って感じだったな」

「なるほどなるほど」


 そんなことを話していると、入学開始のアナウンスが響き、一人の女性が登壇する。切れ長の鋭い瞳と怜悧な美貌を兼ね備えた長い黒髪を団子にしてまとめているスーツ姿の麗人だ。彼女は壇上に立つと生徒達を見渡し口を開く。


『新入生諸君、第一魔装学園入学おめでとう。私が理事長東雲麗佳(しののめれいか)だ』


 彼女こそ、この学園を治める理事長―東雲麗佳だ。東雲は生徒達を見渡すと入学の祝いの言葉を送り話を続ける。


『早速だが、君達には私の教育方針を伝えよう。私が掲げる方針は完全な実力主義だ。魔装学園に入学した君達には将来的に国防を担うことになる。だからこそ、弱いのでは話にならない。君達にはこれから互いに切磋琢磨してもらい強くなってもらう』


魔装使い(エーテルナイト)


 古くから存在する体内に魔力(エーテル)と呼ばれる特殊なエネルギーを身に宿し、特殊な鉱石によって作られた武装《魔装》を介して超常の力を振るう特殊体質の者達の事だ。古来西洋では魔法使いや、魔女、魔導士、日本の場合は妖術師、陰陽師などの妖術や呪術を使う術師としてその存在を知られていた。彼らは時代を経るごとに名を変えていき、今は魔装使いと呼ばれている。そして、魔装使いと呼ばれる彼らは、国にとっての重大な戦力という側面も持っていた。

古くから国外から侵略しようと海を渡り攻め入ってくる敵国と戦ったり、あるいは人ならざる者達、魔物や妖魔、怪物など様々な名で呼ばれ今はモンスターと統一され呼ばれている魔力を宿した人外の異形達とも戦っている。

 超常の力を振るう彼らの力は警察や軍隊と比べるのも愚かなほど強力であり、優秀な魔装使いがどれだけいるかで国家のパワーバランスが決まってしまうほどだ。

 まさしく、一騎当千。

 だが、強力な力を振るうからこそ、そこには相応の責任を伴わなければいけない。むやみに振るわれる力など危険でしかないからだ。

 そういった経緯で作られたのが魔装学園だ。つまり、魔装学園とは未来の国内外に対する防衛を担う魔装使いを育成する養成機関なのである。ここ第一魔装学園《翠蓮》は日本が管理する五つの魔装使い養成学校の一つなのだ。 


『これから君達には公式戦などで多くの実戦を経験してもらう。文字通り死ぬほど頑張ってもらうつもりだから、せいぜい覚悟しておくといい。以上で私からの話は終わりだ。諸君達のこれからの頑張りを期待している』

 

 自身が掲げる教育方針や授業内容などを手短にだがわかりやすく話した東雲は最後に不敵な笑みでそう言い放つとそのまま舞台奥へと退場してしまった。それからは司会の生徒の進行により入学式はつつがなく行われた。



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