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「あーあーあーあー。」
閲覧注意。って警告が入りそうな少女を見つけてしまった。
手足が無いし、全身火傷で爛れてるし、目も歯も舌も鼻も無い。局部を剥ぎ取られた少年かとも思ったけど、喉仏が無い。
いや、切り取られた?
よく分からないが、魔物が占拠してたクソデカい豪邸の地下室にいた。
周りには死体が数体〜数十体分。白骨化してるから、ちょっとわからない。
こんな環境なら、この子の命は風前の灯。感染症もあるだろうし、死にかけてるのが見てわかる。
しかもこれさ、多分魔物の仕業じゃ無いんだよね。
この地下には魔物が1匹もいなかった。「侵入不可」の魔陣が地下の扉に記してあった。多分、結構高位の魔法。
この豪邸の持ち主だった貴族の趣味かな。
虫唾が走る。反吐が出る。気持ち悪い。
俺はいくらでも対処ができる。
ここまでの道のり、俺のレベルは億を超えた。
死者の蘇生は未だ出来ないけど、致命傷なら五百万回くらいは再起できる。
ただ、それでこの子が救われるのかと、いつも思う。
この子が完全復活しても、人を恐れるかもしれない。トラウマが足枷になって何も出来ないかもしれない。
逆に、俺を崇拝するとか、そっちに傾倒するかもしれない。それは……どうなんだろうかなぁ。
ネット小説なら、そういう子も萌えとして受け入れられてる。
けど、俺はそれでいいのか?
自立できない人間の命は、救えた事になるのか。
「いや、馬鹿だな俺。そんなこと聞く必要は無いだろう。」
俺はその少女に手を翳す。
「生きてりゃ良い。先ずはそこからだろうよ。」
「【欠損再生】【病菌滅殺】【素体最適化】」
「【神聖覇気】【強制覚醒】【効果付与】」
「【付与:超再生】」
回復系の最上位。
全ての手の中から導き出した答え。
少女は完璧な状態に復活する。
いや、それ以上の状態になる。
「んぅ。ごはっ!がっ!」
再生した体組織が、不要な体組織を捻り出す。
肺や内臓類も損傷してたから、それが排出される。
「【清潔浄化】」
「こふっ、ひゅー、ひゅー」
「起きられる?」
「……だれ?」
「俺は……大空大地。」
少女はかなり幼かった。10歳くらい。
無かった手足が揃ったことで身長が分かったが、明らかに背が低い。
第二次性徴期も来てなさそうだし、栄養の足りない子供って感じだ。
「わたし、死んだの?」
「いいや、生きてる。」
「死にたかった……もう苦しいのは嫌。」
「お前はもう苦しまない。今後一切。」
少女の目に光はない。
目の前の男を信用できるわけがない。
俺が神だとして、もっと早く救わなかった時点で信頼の外。
この世の絶望を全てその身で知ったこの子は、今後何も信じず、死体のまま生きることになるかもしれない。
このまま、世界を憎んでしまうかもしれない。
もしかしたら、滅びを求めるかもしれない。
そんな危うい状態の子を、俺はどうするべきか。
正解はわからない。
豊かで安全な日本という場所で、ぬくぬく生きてきた一学生からしたら、想像もできない状態だ。
助けるとか、救うとか、傲慢極まりない。
だからこそ、俺はこの子を
「【聖誕祭】【神白化】【オーバードライブ】」
「【精神活性】【肉体活性】【生命譲渡】」
「【神聖覇気】」
全身全開でこの子を強化する。
俺と同じ領域まで、強制的に押し上げる。
レベル50、レベル100、レベル200。
どんなレベルになっても、俺なら止められる。
仮に世界の破壊者になろうとしても、俺なら止められる。
だから、どこまででも強く、強く、強く!
そうして生まれた、最適化と超強化の繰り返しの結晶。
【レベル20万】
この子のすべてが、世界基準の最大値を大幅に振り切る。
この世界の最強よりも2000倍強いというこの状況で、この子はなにをするのか。
俺にはそれを見る義務がある。