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国立図書館内の空間は非常に広い。
【完全封印】状態のゾルボドも収まるくらいには広い。
だが、クラスメイトが数人いるだけでかなり集中を欠く。
「レベルが常に上がり続けるとは聞いたが、そこまで圧倒的だったとは。」
「私も驚いたよ。しかし、何故最後は私に任せたんだい?」
「俺の魔力も筋力もありえないレベルに強い。人型の重機か、大型の人型ロボットがミニマム化したくらいの勢いで動いてると思ってほしい。」
何故かクラスメイトたちがついてきた。
一応リーダーをしてるから、ソレ自体は良いんだけど。
【並列処理】と新しく理解した【分身】と【完全集中】を駆使して、『学習用俺』を五体。『会話用俺』をニ体。『奔走用俺』を十体作った。
厳密には全部俺で、言ってしまえば頑張って十七台のスマホで別々のソシャゲをしてるくらいのことだから、【完全集中】はそちらに割かれて、効率的には昨日の倍くらい。レベルに併せて知力も上がってるから、かなり早いスピードで学習できてる。
『学習用俺』は、攻撃魔法、防御魔法、支援魔法、阻害魔法、ネタ魔法をそれぞれ勉強している。
『会話用俺』は4人、実質3人との質疑応答と、クラスメイトの訪問。
『奔走用俺』は、学習したことを使って貧困や飢餓を解決し、結界外の魔物を討伐したり、各地域の避難漏れが無いかを探っている。
本体の俺は、ステータス画面と睨めっこしながら、関連施設内で魔法の練習と力の制御に勤しんでいる。
その間も、俺は常に成長を続けており、スキルは増え、パワーも上がる。
四天王の一人を捕まえたし、仮に残り3人と魔王が突撃してきても、問題無く対処できる。
が、孤立はまずい。
依然、最強級の力を持っていても、全能じゃない。
クラスメイトへの危険は常に危惧しないといけないし、国王達との信頼関係も、やはり危ない。もしかしたらもう相手からは信頼されてないかもしれない。
読んでいたラノベの中では、大きすぎる力を恐れた人間サイドに裏切られるなんてこともあった。
そもそも国王たちが、俺たち勇者を鉄砲玉にする可能性もあった。
国民の貧困を、一時的に収めた今の状況は、反乱のための勢力拡大と捉えられても不思議じゃない。
可能性は可能性だが、俺はそれらを常に恐れないといけない。
となれば、手段は一つ。
『手段を増やす。』
とりま、直近の目標は『死者の蘇生』と『不老不死』の研究。
これさえあれば、自由度は格段に上がる。
魔法の研究と、スキルの開拓があれば、出来ないことの方が少なくなる。
となれば、ここの本だけじゃ知識はまだまだ足りないな。
『予定変更。『魔法用俺』を追加で五体。宮仕の魔法使いに話を聞くぞ。』
この国で囲っている魔法使いは3名。それぞれが10人ずつくらいの弟子を持ってる。
SPは腐るほどある。
それを使って鍛治や料理なんかも極めてみるのも手段としてはありだ。
そういった部分も後々に役立つかもしれない。
総スキル数で解放されるスキルもあるかもだし。
片っ端からスキルを取得する。
俺が強化されれば、分身たちも強くなる。
そういった掛け算式の強さを手に入れると、なぜかとても楽しくなる。
心の中の誰かが、もっともっとと叫び続ける。
「【神天瞑想】」
集中力が天元突破する。
ゾーンを迎えて、全身がアーモンドの甘さに痺れる。
「【煌帝夢化】」
開いた無数のスキルを統合、整理、昇華し、数個の固有スキルに纏める。
開いた固有スキルと、統合されたスキルの数は合わせて21個。
統合から漏れた上位スキル達は、それぞれ自己主張を強め始め、レベルによるステータスの自然成長にプラスの数値を載せ始める。
遂には、最大値を叩き出せるステータスのHPが億の単位を超え、劇的に強くなる。
途中、「そんな強くなってどうするんだ?」とか、「膨れすぎたエネルギーで爆発しないか?」とか思ったが、そんな事は忘れるくらい、膨れ上がる数値に酔った。
「【爆装】」
気付けば口は意思を無くして動き始め、好き勝手にスキルを唱え始める。
「【讃灯】【深淵想】」
「【完全祝福】」
「【召喚:超魔法戦士サーナギア】」
呼び出したのは限界突破した勇者の伝説。
全ての理想を具現化した希望の結晶。
キラキラと輝く鎧を身に纏った神の使徒。
2メートルきっかりの身長に見合うだけの体格を有していて、腰には2本の魔剣を携える。
物理も魔法も得意で、かつ再生力がバカ高い。
レベルは500。この世界でトップクラスの100の5倍。
あ?爆速覚醒した結果がこんなチンケな召喚獣一匹なわけないだろ。
サーナギアはあくまで国防の為のただの一手。
「【召喚:超百鬼夜行】」
「【神天強化・狂乱】」
「【合成】」
召喚した魑魅魍魎一千万体を統合。
全てのモンスターの良いとこだけを取り揃えた化け物の完成。
そのモンスターとサーナギアの二体がこれからこの国を守る。
そして、攻めの方だが。
「【召喚:サバンブラックスミス】」
鍛治を行える精霊を召喚し、俺の装備を作らせる。
【創造】や【鍛治】のスキルもあったけど、どっちも熟練度(レベルに関係のない経験)が重要らしいし。
時間はかかるらしいが確実な方法をとった。
それに、みんなの分の装備も用意したい。
「【絶召喚:生命の管理人G】」
回復要員も揃えておく。
これで、抜かりはないはず。
とりあえず俺はこの王都を離れ、魔王軍を叩く。
強制的に話し合いの席に座らせてしまえばいい。