第一話 唐突に
「遅刻遅刻〜!!」
俺の名前は大空大地、どこにでもいる普通の男子高校生。
普通と違う事といえば、ちょっとオタクで、異世界願望があることかな。
そんな俺が、急いで教室に駆け込むと、そこはいつもの教室じゃなかった。
白と黒と、赤と青と黄色と緑を混ぜて混ぜて、それでも混ざりきらないみたいな、目に痛い空間。
「これは……もしかして!」
「おい、大地!」
歓喜にはしゃぎそうになった俺は、俺にかけられた声に驚く。
そこにいたのは、クラスメートの田中太郎。
the モブの良き友人で、俺の隣の席にいるやつ。
「こ、ここどこだよ!ヤベェよ!」
「田中たちはなんでこうなったか知らないのか?」
「知るかよ!教室が光ったと思ったらこうなってたんだ!」
残念なことに、その瞬間を俺は見逃したみたいだ。
しかし、教室が光って、俺と田中がここにいると言うことは、これは異世界転生ではなく、異世界転移で、しかもクラス転移とかいうゲロダルいやつじゃん。
クラス転移、読む分には良いけど、自分はしたく無い異世界モノ一位かな。
だって、大体物語内年数で数年程度の間にボスを倒して、なんやかんやあって自分の世界に帰るまでが一セットみたいなとこあるし。
俺は異世界でステータスを開いたりハーレムを作ったり、無双するのが夢だったんだ。
『えーっと、君で最後かな。』
目の前に現れたのは、全身が包帯でグルグル巻きの男。
と言っても、要所要所を巻いている程度で、ミイラ男みたいな、気味の悪い姿じゃない。
顔全体とか、腕とかに巻かれているから、一見はゾッとするけど、重傷者みたいな感じ。
『アレっ?2人いるね。あー、ゲート開けっ放しだった。ごめんね。で、まずは君の欲しい能力を聞こうか。』
その男は、田中に視線を合わせる。
「な、なんでもいいのか!?」
『うん、自由だよ。君のこれからの人生の基盤であり僕からの祝福だからね。力でも知恵でもなんでも無問題』
「じゃ、じゃあ凄い魔法を使えるようにしてくれ!」
『凄い魔法か、アバウトだけど叶えよう。僕は猿の手やランプの魔神が泡を吹いて死ぬくらい最高位の全知全能だからね。君の理想にドンピシャなチートをあげるよ。』
そう言って田中の額に手を当てると、田中は一瞬で消えた。
「た、田中をどこへ?」
『君のクラスメート達も行ってる異世界さ。そこでは国王主催の勇者召喚の儀式が行われていてね、君たちはその勇者なんだ。』
「て、テンプレ展開きちゃ〜〜」
『君の望みは何かな?』
「…………」
『?』
「……主人公になりたい。」
『……ほぅ。主人公ね。』
異世界モノの主人公なんて、色んな種類のやつがいる。良い奴もいれば、女好きだけど男に容赦がないやつとか、一般高校生のくせに人殺しに躊躇がなかったりとか、爆弾みたいな高火力技をぽんぽん使うくせに、それが普通だと思ってる奴とか。
何百作品も読んで、一つも不満のない最高の主人公なんて、いなかった。
だから、俺は成りたい。
『分かったよ。君の願い、受け止めてあげる。』
◇◆◇
『ダイチ・オオゾラ【グロウアップシステム・ネオ】【マックスオーバーシステム】【サルメロシステム】搭載完了』
『ワールドL-115089、アルゴリオ暦1200年。』
『メイン種族【人種】【魔種】【亜種】』
『プロジェクトLーーー【膨張水準世界】始動』