第7話 「初めての」
これは……いわゆる、初告白?これ俺が?こんな美少女に!?
まさか俺に、そんな主人公設定が!?
「は、橋田くんっ」
彼女は何か覚悟を決めたかのような表情をしている。
逢坂はゆっくりと口を開いていく。
俺にはなんだかスローモーションのように見えた。
その間に、俺の中ではとてつもない葛藤が起こっていた。
おいおいまじかよ。
来るのか?ほんとに来るのか?
いや、また俺の勘違いかも。
そうだ、絶対そうだ。
でも……もし本当に、逢坂さんが告白してきたら?
俺は一体、なんて返事するんだ?
即答でYESか?
だって逢坂さんめっちゃ可愛いし、付き合ったら人生一気に明るくなるだろうなあ。
いやでも、いくら小学生の頃から知っていたからって、ほとんど初対面みたいなものだ。
逢坂さんの方は覚えいたが、俺はすっかり忘れてたんだ。
そんな状態で、はい喜んで!って言うやつあるか。
クズ野郎過ぎだろ。
やっぱりもっと、お互いを知ってからとか────。
て、何また妄想してんだ俺は!まじで何様だよ。
ああもうやめだやめだ!
妄想する分、俺がキモくなるだけだ。
もし仮にそうだったら、言われた時に考える。
今はできることはただ、ちゃんと見て聞くことだけだ。
「は、橋田くん、その……」
「お、おう」
「……え、選んで、くださいっ」
逢坂はポケットから……3枚のカードを出して俺に突き出してきた。
……………。
俺は一瞬、何が起こったのか分からず固まってしまった。
目の前に昨日と同じ3枚のカード。
それを選んでくれと言ってくる逢坂。
しばらくして情報を整理し、理解した。
「………ん、あ、えっと……また?」
俺がそう聞き返すが、彼女はカードを突き出したまま何も言わない。緊張してんのか。
しかし、選べって言ったってなあ。
今回はお礼って訳じゃないだろうし、どんな内容なのかまったく検討がつかない。
「な、なあ、また内容見せてくれないか?」
昨日のように、前もって知ってから選ぼうと思い、そう聞くが、やはり逢坂は何も言ってくれない。カードを裏返す素振りも見せない。
見せてくれないということなのか。
まあとりあえず、選ぶしかなさそうだな。
俺は今回も、3枚のうちの真ん中を引いた。
選んだカードの内容を確認する。
───私とお友達になってください───
その短文に、俺は目を丸くした。
「あ、え、これって……?」
「えっと、その……私、こ、こんなんだから、友達とかいなくて……よ、よかったら、橋田くんに、お、お友達に……って」
ああ、なるほど。
まあこんな性格だしな。友達作る前にそもそも面と向かって話すことが出来ないんだろう。
だからって、俺?
てか、友達かよ。
緊張して損した。
まあ、そうだよな。友達ねぇ……。
少しだけ……ほんのちょびっとだけ期待したりしちゃったりしたけど、まあ、終わってしまえば予想通りって感じだな。
にしても、友達ってこうやってなるもんじゃなくね?
てか、もうこれ選択肢カードじゃなくて、本人の希望カードじゃねえか。
お願いがあるっていうのは、カードを引く以外に、こういう理由もあったのかもな。
残りの2枚がどんな内容か気になるところではあるけど。
「友達?ああ、勿論いいけど」
俺の返事を聞き、俯いていた顔をゆっくりと上げた。
「……あ、ありがとう、ございます……」
嬉しいのか緊張してるのか恥ずかしいのか、彼女の顔はさっきからずっと赤い。
友達ぐらい普通だろうに。
まあ逢坂さんからしたら、友達一人つくるのにも相当勇気がいることなんだろう。
しかし、一つ問題がある。
「友達になるのはいいんだけどさ。友達が男の俺だけってのは寂しいんじゃないか?」
やっぱり友達は同性の方が親しみやすい。
性格上難しいのかもしれないんだろうけど、ちゃんと友達を作る努力をしないと。
ま、和希ぐらいしか友達いない俺が言えたことじゃないから直接口には出せないけど。
「……で、でも、クラスの人達と……ほとんど話したことも、ないし……」
「男の俺とはちゃんと話せてるんだから、ちょっとだけ頑張れば誰とでも話せるようになるって」
ほんの少しだけ勇気出せば、友達なんていくらでもできる。
逢坂さん可愛いし、何も喋らなくても男子生徒から人気ある。
同性なら尚更仲良くなれるだろう。
「俺もできるだけ協力するし。まあ、協力できることなんて何もないだろうけど」
和希以外の友達はおろか、女子生徒となんて俺もほとんど話したことない。
せいぜい、俺に出来るのは逢坂さんが頑張ってるのを影で見守ることぐらいだ。
「……い、いえ。は、橋田くんが、協力して、くれたら……私、頑張れる、気がします」
これだけ俺と会話できるんだし、その場で考えてちゃんと動けそうじゃないか?
「まあとりあえず、これからよろしくね、逢坂さん」
「……よ、よろしく、お願いします……」
昼休みの空き教室。
俺は初めて女の子からクッキーを貰い、そして……初めての女友達ができた。
───彼女が用意していた3つの選択肢の中に、「付き合ってください」という内容があったことを、橋田直之は知るよしもなかった。
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