学園の裏人気美少女が、3枚のカードを持って俺に迫ってくるんだが 〜俺の青春ラブコメは全てが見えざる3択で決まる〜

第6話 「今度こそ告白？」

時は過ぎ、翌日の学校に俺はいた。

現在ちょうど昼休み。

いつものように、俺は和希と昼食を共にしていた。

「なあハッシー、昨日は聞かなかったけど、結局のところ用事って何だったん？」

唐突にそんなことを聞いてくる。

「はあ？べ、別に、大した事じゃないって」

昨日のことなんて話したら、またからかってくるに違いない。

「ほーん、その言い訳って、大したことがある時によく使われてよなあ？」

「し、知らねえよ」

くそ、妙に感の鋭いやつだな。

「なーんかお前から急にラノベ主人公の匂いがしてきたぜ」

「な、なんだよそれ」

ラノベ主人公の匂いって……どんな匂いなんだ！？

「いんや、なんかお前がそろそろ誰かからモテそうな気がするってだけだ」

「何を根拠にそんなこと……俺だってモテるもんならモテてみてえよ」

昨日あんなことがあったから余計にそんなことを考えてしまう。

そういえば、逢坂さん、今日クッキー作ってくるって言ってたけど、一体いつ俺に渡すつもりなんだろう。

時間なんて指定されてないし。

また放課後の空き教室かな。

人前で渡すとか、絶対できなさそうだしな。

そんなことを考えていると、クラスメイト達の視線がどこかに集まり、ざわつき始めた。

俺も生徒達が一斉に見ている方に視線を向ける。

するとそこには、なんと彼女がいた。

「あ、逢坂さん！？」

俺は驚いて思わず立ち上がった。

まさか、こんな時間に、しかも俺のクラスに来るなんて。

「おいおい、お前あの隠れ人気と知り合いか？」

逢坂を見てあからさまに反応した俺に和希はそう言ってくる。

「あ、いや……その……」

くそっ、まじかよ。

タイミング悪すぎだろ。

和希のことだ、また嫌味な笑顔でからかってくるんだろう。

そう思っていたが、

「おい、あの子お前に来てほしそうにしてんぞ。早く行ってやれよ」

和希は呆れた表情をして俺を彼女の元に行かせようとした。

あれ？なんか今日は妙に大人しいな。

いつもは鼻で笑うくせに。

まあとにかく今は彼女の元に行くのが最優先だろう。

俺は席を立ち、教室の扉でひょっこりと顔を出している逢坂の元に向かった。

それを見ていた和希は決まりの悪そうな顔で少し笑っていた。

「はぁ……まさか、まじでこんな展開になるとはねえ……」

俺と逢坂は昨日と同じ2階の空き教室に向かった。

本当にクラスまで来るとは思わなかっが、だいぶ緊張していたみたいだし、あのまま生徒達のさらし者にされるのは嫌だろう。

俺もちょっと恥ずかしい。

変な噂でもされたら彼女が可哀想だし。

でも、そうか……本当に。

「え、えっと。アレだよね。お礼の……」

俺がそう言うと、こくりと頷き、ポケットから綺麗な包装がされた袋を出した。

「……あ、あの、ずっと言えませんでした、けど……あの時は、ありがとう、ごさいました。こ、これ、受け取って、ください……」

彼女は顔を赤くしながら、お礼のクッキーが入っているであろう袋を俺に差し出した。

俺は謝辞を述べながらそれを受け取る。

「いや、こっちこそありがとう逢坂さん。開けていいか？」

彼女は俺の返しに首を小さく縦に振った。

俺はせっかくの綺麗な包装が崩れないように、慎重に袋のに結ばれた紐を解く。

中からは、綺麗な黄金色をした一口サイズのクッキーが数枚顔を出した。

すげえ、めっちゃ美味そうじゃないか。

「た、食べてもいいか？」

「は、はい……」

彼女の許可を貰い、俺は袋からクッキーを一枚掴み、そのままゆっくりと口に運ぶ。

口の中で1度咀嚼し、瞬間俺は意識が持っていかれた。

───な、なんじゃこりゃああああ！！

美味い！美味すぎる！！

あれ？クッキーってこんな美味かったっけ？

サクッとしてるのに、中はちゃんとしっとりしてて全然パサついてない。

姉ちゃんが急にお菓子つくってとか言い出して、偶にプリンやらクッキーやらつくったことあるけど、こんなに美味く作れなかった。

これを、逢坂さんが……同級生の女の子がつくったんだよな。

女の子からお菓子貰うって、こんな感覚なのか。

想像以上に感慨深いものがあるな。

「……ど、どう、ですか……？」

「あ、ああ！めちゃくちゃ美味い！凄いね逢坂さん！」

「……よ、良かった、です……」

かなり腰が引けているが、少し嬉しそうだった。

いやぁ、たまらん。

こんなイベント、今まではなかったから知らなかった。

ラノベとか、漫画とかで目の保養しとけばいいと思ってた。

でも、やっぱリアルだと全然違う。

もしも彼女がいたら、毎日クッキーやらなんやらつくってくれんのかな。

高校では別に彼女なんて要らないと思ってたけど。

なんか……彼女欲しくなってきたな。

そう思うと、昨日の事を余計に後悔する。

まあでも、そんなことで彼女できたって、なんか違う気がするし。

逢坂さんとも、もうこれで終わりだろうから、いつまでも引きづっててもしょうがない。

「クッキーまじでありがとね。教室でじっくり食べるわ。じゃあね逢坂さん」

踏ん切りをつけるために、すぐに空き教室を出ようとした。

が、またしてもその時。

「ま、待って、くださいっ……」

「ん、どうした？」

なんか昨日から何度も呼び止められてる気がするな。

「は、橋田くんには、すごく、感謝してて、そんな立場で、不躾(ぶしつけ)かも、しれないんです、けど……え、えっと、その、お願いがあって……」

「お願い？」

なんで俺に？お礼はしたんだから、もう用済みじゃねえのか？

この期に及んで何をお願いするんだ？

「あ、あの……橋田くんっ」

「は、はい！」

いつもより少し張った声にびっくりして、俺は背筋を伸ばした。

逢坂の顔は今にも火が出そうなくらいに赤くなっていた。

…………。

おいおい、なんだよこのシチュエーション。

なんかこれ……告白される時みたいな空気なんだけど？

え、嘘だろ。そんなのありえない。

いやまさか……マジなのか？

俺、ついに……初告白！？