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第40話 「雨 前編」



遊園地に遊びに行ってから、既に3日経っていた。


当時の興奮も抜け、いつもの学校生活が始まっている。


ここ3日は、雅も3択カードを出しては来なかった。


そもそも、あの日から一緒に下校する以外で会うことがなかった。


本当に、平穏な学校生活だった。


そして今日の放課後のクラス内。


「うげー、降ってんじゃんか」


「今日曇りのち晴れじゃなかったっけ?」


「やべ、傘持ってきてねえ」


「しゃーね、親呼ぶか」


そんな会話が聞こえて、俺も教室の窓の外を覗き込んだ。


小さくもなく大きくない、絶妙に憂鬱な気分になるような────雨だった。


俺はどうだったっけ。傘あったかな……。


鞄の中をまさぐり、折り畳み傘を1本見つけた。


これぞ用意周到。こんな時の為に、俺は常に折り畳み傘を持ち歩いているのだ。


「和希、、今日部活は?」


「今日は中練だろうなあ」


「そっか」


もし和希の部活がなかったら、一緒に帰ろうと思ったが、それじゃあ仕方がない。


「逢坂さんと一緒に帰るんじゃなかったのか?」


和希の質問に、俺は首を横に振った。


「今日はなんか委員の仕事があるから先に帰っててとか言ってた」


まさか雅が委員会の仕事を受け持てる程成長していたなんて。いや、それはちょっと失礼か。


「へー、じゃあ春川彩乃は?」


「……その、さも当然のように女子の名前を出すのやめてくれないか?」


その言い方だと、俺がただのプレイボーイになってしまう。


別に毎日一緒に帰ってるわけじゃないことをちゃんと理解して欲しい。


時間の都合が合った時だけだ。


学年が違うから、割と都合が合うことってないんだよなぁ。


「そりゃ悪かった。でも本当のことじゃないか。それで?春川彩乃はどうなん?」


この話まだ続けるのかよ。


「あー、確か1年だけで放課後集会があるとかなんとか」


「ほーん、じゃあ最後は工藤先輩だな」


だから何そのプレイボーイ的観念は!


「さあ、何も聞いてないけど、また生徒会の仕事で忙しいだろ」


「確かにそうだな。じゃあ今日はナオ、久々の完全ぼっち下校って訳だ」


その通りだが、和希に言われるとなんか腹立つな。


まあ、雅達と出会う前まではぼっち下校が当たり前だったから、今更寂しいとかはないけど。


「なんか嫌な言い方だな。まあいいけど。んじゃ俺帰るわ。部活頑張れよ」


「おう、またな」


和希と挨拶を交わした後、俺は教室を出て生徒玄関へ向かった。



生徒玄関に着くと、いつもより帰ろうとしている生徒が少ないように見えた。


やっぱり、皆傘を忘れて教室待機しているのだろう。


だが、俺は人類の叡智の結晶、折り畳み傘があるのだ!


……実を言うと、人類の叡智とか格好いい台詞がちょっと言ってみたかっただけだった。


俺は鞄の中から折り畳み傘を取り出しながら玄関を出た。


さっきより雨の勢い強くなってるな。


玄関を出たところで傘を開こうとした、その時だった。


隣で天を仰ぎながら佇む1人の女子生徒が……てか、工藤先輩だった。


「あれ、工藤先輩?」


「な、直之くん!?」


「今日は生徒会ないんですか?」


「え、えっと、今日は副会長の笹原くんが全部やってくれるって言ってくれて」


ああ、噂は聞いたことがある。


同じ2年の笹原裕翔───生徒会副会長で成績は常に学年トップ。


常に生徒会長の工藤先輩を後ろからサポートする優等生というイメージが根付いている。


ラノベとかだと、こういうやつってだいたい裏があるんだよなぁ。俺の考えすぎかもしれないけど。


「そうなんですか?てことは今から帰るんですか?」


「え、ええ。でも傘がなくて」


そりゃまあ、見れば分かる。


……ん、これはまさかっ。


俺の手に持つは折り畳み傘ただ1本。


そして隣には黒髪の美少女。


これは……俺があの台詞を言うしかない、のか?


かなり恥ずかしくて、俺が言ったらキモイだけだが、この状況だ。やむを得ない。


「じゃ、じゃあ俺の傘入って、いきますか?」


………言っちまった。


「えっ!?い、いいの?」


「いや、いいも何も駅まで一緒なんですから」


そう、これが普通だ。こんな状況で俺1人傘さして帰るなんて薄情なことできるわけが無い。


「そ、それじゃあ、その……お言葉に甘えて」


「は、はい。どうぞ」


俺は傘を開き、工藤先輩をその中に入れた。


「じゃ、じゃあ帰りますか」


「え、ええ。そうね……」


かの伝説のイベント───所謂『相合傘』をして、俺達は学校を後にした。


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