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第32話 「会長がおかしくなりました 前編」


「おい和希、昨日はよくもやってくれたな」


朝、学校に来てひょうひょうとしている和希を見て開口一番、俺は眉をゆがめながらそう言った。


「悪かったって。妹とデートだったんよ」


「嘘つけ。あからさますぎんだよ」


あんなの、俺と雅を2人にするためにその場で考えた作り話。でっちあげだ。


「いやいやこれが本当なんだよな。ほら」


そう言って、和希は自身の携帯を取り出し、画面を操作して俺に見せてきた。


そこには、デコれるだけデコった和希と那由のツーショットが映っていた。


あの話はまじだったのかよ。


しかもほぼ全身密着してんじゃねえか、おまけ頬擦りまでしてるし。


てか……これはいよいよ本格的にやばくなってきたわ。


「……このシスコンラノベ主人公」


「うわぁ、お前にそれ言われたくないわー、なあ?ハーレム主人公?」


しっかり言い返されてしまった。


「うっせ。こっちは大変なんだよ」


精神的にな。俺にはそんなでっかい器は持ち合わせてないからな。


「ほほぅ、否定はしないんだな?」


「まあ……こんだけありえないことが続いたらそりゃ、な」


いやでも認めざるを得ない。実感は全くないけど。


「いーねいーね、俺そういうナオの方が好きだぜ」


和希がからかってくることはなかった。


……なんかつまんねえな。じゃあ俺が。


「和希……シスコンだとは思っていたが、まさかこっちの趣味もあったのか。ちょっとキャラ濃すぎだぞ」


「ちょ、待て待て!違うっつーの!てかシスコンも言うな!」


和希は慌てふためきながら弁解を図る。


あ、これちょっと面白いかも。


「はぁ……まあいいや。んで?逢坂さんとはちゃんとより戻せたわけ?」


別に破局したわけじゃないし、そもそも付き合ってないし。よりを戻すという表現はちょっと違う気がする。


「よりを戻したっていうか……まあ、開きまくっていた距離が少しだけ埋まったってとこかな」


「んだよそれ、煮えきらねえな。ま、悪い結果にはならんくて良かったわ」


和希も和希なりに、心配してくれていたのだろう。


なんだかんだで俺のことをちゃんと考えてくれているんだってわかる。


「……俺が女なら顔も含めて和希に惚れてたかもな」


思わず口に出してしまった。


「ナオ……お前もそっち路線なのか?」


「今のは失言だ。忘れてくれ……」


これは完全に自爆だった。



───昼休みの手洗い場。


雅の件は解決したが、あとの2人……特に工藤先輩の方はどうしたものか。


洗面所で手を洗いながらそんなことを考える。


目を合わせればすぐに逃げられる。話しかける隙も見せない。


あからさまに避けられている。


まあ、理由はどう考えてもあの時のことだろうけど。


俺があの時、子供の作り方なんて教えたのがまずかったのか。


いや、どの道何らかのの手段で調べて理解していただろうし、こうなるのは必然だったのかもしれない。


にしても、これだと今後が問題だ。


雅とはこれからも良く話すようになるだろう。すれば当然、彩乃や沙耶香先輩とも顔を合わせる機会が増えていく。


彩乃の方は多分問題なくいつも通りに接することができるだろうが、沙耶香先輩の方はこのままだと気まずい状況が続いて、あの3人の場の空気を乱しかねない。


……てか、あの人一応俺に告白してきたんだよな。


つまりこれは所謂、好き避けってやつなのだろうか。


いや、違うな。あれは完全に俺を警戒している。


まあとにかく、早いとこ何とかしないといけない事実は変わらない。


この問題の解決法を模索しながら、トイレをでた。が、その時だった。


出た先で、誰かとぶつかってしまった。


「うわっ!?」


「きゃっ!」


勢いのあまりお互いにその場に倒れる。


考え事をしていたせいで視野が狭くなっていた。


完全に俺のせいだ。


俺はすぐに立ち上がり、ぶつかった相手の方を見る。


「す、すみません。大丈夫で……す……か」


俺は目を見開いた。


俺とぶつかったのは、考え事の原因となっていた、生徒会長の工藤沙耶香だった。


「工藤……せん、ぱい……」


「……っ!?直之、くんっ……」


お互いに目が合ってしまう。


やばい、また逃げられる。


これは神の悪戯か。とにかく奇跡が起きた。


「せ、先輩、俺……」


今のうちに彼女と話し合いをしようと切り出した、その時。


「ちょ、ちょっと来てっ」


「え?ええっ!?」


俺は彼女に手を引かれながら、廊下を走らされた。


おいおい、生徒会長が廊下走っていいのか?


と、ツッコミを入れる間もなく、風のように廊下を走り抜け、ある場所でようやく止まった。


それはもう何度か夢で見たくらいの場所────そう、2階の空き教室だ。



工藤先輩は扉を思い切り開け、俺を先に教室内に放り込むように入れた。


「うおっ!!」


放り込まれた勢いで少しよろけてしまう。


その瞬間、バランス感覚を一時的になくした俺を、彼女は床に押さえ込んだ。


「ちょ、工藤先輩……っ!?」


彼女は顔を真っ赤にしながら、俺の上に馬乗りになる。




……おいおいどうした!?!?


今まで避けていた先輩がいきなりこんな……まじでどういう状況!?

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