第11話 「企み」
ここにいるシスコン野郎は、当初の目的を完全に忘れていた。
「和にぃ次!次あの服屋行こ!」
「おお、いいぞいいぞ!那由の行きたいとこならどこでも着いてくぜ!」
「ほんと?和にぃ大好き!」
…………なにこれ?
俺は一体、何を見せられているんだ?
和希と那由は完全に2人の世界に入ってしまっていた。
てか、こんなあからさまに仲のいい兄妹現実にいるか普通!ラノベの中でしか見たことないわ!
もう付き合ってるんじゃないか?
「よーし、次だ次!」
「おー!」
「お、おい、ちょっと待てよ!」
そんな間にも、和希達は2人で走り回る。
追いかけようとも思ったが、それでは雅が1人になってしまう。
俺は大声で呼び止めるが、全く聞かずにどんどん先に進んで行った。
そして、結局和希達とははぐれてしまった。
はぐれたと言うより、完全に置いてかれた。
「くそっ、なんなんだよ……」
目的を忘れてるどころか、俺らの存在まで忘れてるみたいだ。
後ろを振り返ると、雅は困惑の表情を浮かべている。
「はぁ……完全に置いてかれたな。どうする?俺達もどっか回るか?」
このまま和希達が戻ってくるのを待つのもなんだし、せっかく来たんだから何かしらしたいよな。
まあ、俺が雅の話し相手になったら、このデートの意味が完全になくなるし。
「それでいいか?雅」
「……は、はい」
「おっけー。んじゃまあその辺ぶらつくか」
そして、俺達も2人でモールを歩き出した。
一方その頃、和希達は────。
「よし、上手くいったな」
直之と雅が歩き出したのを、遠くから確認し、和希はにやりと笑った。
「これでよかったの?和にぃ」
「ああ、ナイス演技だったぜ、那由」
上手くブラコン妹を演じれていたことを賞賛する。が、那由は顔を少し赤くしながらむすっとした顔をする。
「むー、演技じゃないのに……」
「ん、なんだって?」
「なんでもなーい」
「そっか。にしても、ナオには少し悪いことをしたな」
和希は別に、計画を忘れていた訳ではなかった。
彼はわざと、直之と雅を二人にするよう仕向けたのだ。
────直之とメールでやり取りをした後、和希は妹の那由に相談した。
「……ええっと、つまり私がその逢坂雅さんって人とお話すればいいってこと?」
「いや、確かにそうするのが正解なんだけど」
「どういうこと?」
那由は疑問符を浮かべる。
内容を聞く限りでは、今回のダブルデートは、逢坂雅とのコミュニケーションをとるためのもの。
その認識で間違いないのだが……。
「いやだって、直之が今まで異性と仲良くしたことなんてなかったからさ。ちょっと確かめてみようかと思ってな」
「確かめる?」
「ナオと逢坂さんがどんな関係なのか、とかさ」
今まで直之が異性と関わったことはほとんどない。
それがどうして、今になって急に、と。
彼女と昔出会っていたという話は聞いたが、二人の関係が一体どれぐらいのものか、確認したいという気持ちが強かった。
「まあ、最初の30分ぐらい別行動してみて、その後また合流するって感じにしようと思うんだが」
「なるほど。いいと思うよ、私もあの直之さんに近づく女の子がどんな子か見てみたいし」
「よっしゃ、じゃあ決まりだな」
───と、そんな経緯の下で和希達は遠くから2人の様子を観察していた。
「よしよし、ここまでは上手くいったな」
遠目からでよく見えないが、逢坂雅の顔が少し赤いようだ。
「那由さんや、同じ女から見て逢坂さんはどんな感じだ?」
「んー、まあ少なくとも、直之さんには心を許しているように見えるね」
「逢坂さんはかなりのあがり症だって言ってたから、緊張してるだけかもよ?」
「いやいや、あれは少なからず気がある顔だよ。女の勘だけど」
女の勘というのは、存外に否定できない。
同性の那由が言うのだ。和希から見ても、逢坂雅の方は直之に少し気があるように見える。
「しかし……ナオの方はなんか普通だな。友達感覚なのかねぇ……」
「直之さん、超現実主義者だから、自分には釣り合わないとか思ってそうじゃない?」
「あ、確かに」
そんなやり取りをしている間にも、直之達は歩き続けていた。
「よし、そろそろ尾行を始めるか。行くぞ那由」
「う、うん!」
────俺と雅は元いた場所からだいぶ歩いた。
「さて、ぶらつくのはいいけど、どっか店にでも入ってみるか?」
モール内には服屋に本屋、ゲームセンターにフードコーナーなど、色々揃っている。
雅でも楽しめるところは1つぐらいあるだろう。
「あ、えっと、それじゃあ……選んでくださいっ」
彼女はポケットかは3枚のカードを取り出した。
想像通り、しっかりと用意してきていた。
「あー、おっけ。それじゃあ」
俺はカードを1枚引く。
───ゲームセンターに行く───
驚いた。雅みたいな子でも、ゲームセンターに行きたいって思うんだな。
これなら俺も楽しめそうだ。
「よし、じゃあゲームセンター行くか」
「は、はい」
そして、俺達はゲームセンターのあるモールの2階に向かった。




