表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/109

第10話 「ダブルデートのはずが」

連絡先の交換後、帰ったらまた連絡するとだけ言って、直ぐに解散した。


そして自宅にて────。



俺は携帯端末に文字を打ち込んでいた。


──土曜日のことだけど、和希と相談して、結局1時に駅前の時計塔集合になったから、一応連絡しとく──


と打ち込み、雅に送信した。


……送信ボタンを押すのに、実は30分かかっていた。


だってさ、女子に連絡だぞ。


今まで和希以外とメールのやり取りなんかしたことないし……同級生の女の子にメール送るのって、難易度高すぎ。


まだ心臓ばっくばくだし。



やっぱり和希とメールするのとはまるで違うな。


和希にメール送る時はちゃちゃっと10秒とかで送れるし、すぐに返信来なくても全然気にしない。


でも、なんか……いつ返信くるかすげえ気になる。


悶々としながら返信を待っていると、ピロンという通知音が聞こえた。


メールを送ってわずか2分、雅から早速返信が来た。


「は、はや……」


俺は驚きながら、雅とのトーク欄を開く。


──わかりました。わざわざ連絡してくれてありがとうございます──


その文面を見て俺は更に驚く。


「へぇ……メール越しなら普通に話せるんだ……」


返信も早かったし、やっぱり人前じゃなかったら普通に話せそうだな。


てか、俺の方がメール一つするのに緊張しまくって……なんか馬鹿らしくなってきた。


そうだよな。メールぐらい普通だよな……。


俺もこれから過剰に意識しないようにしよう。




一方で、逢坂雅の自宅では────。


ベッドにうつ伏せになりながら、ひたすらスマホを見つめていた。


直之からのメールが来たのを通知する音が聞こえた。


雅はすぐに携帯の電源をつけ、彼とのトーク画面を開いた。


しかし、簡単な文面だったにも関わらず、瞬時にメール内容を理解できなかった。


雅にメールを冷静に読み取る余裕がなかったのだ。


───ほ、本当に来たっ。な、直之くんからっ。


雅の口は無意識に緩み、外では絶対に見せないようなニヤけ顔になっていた。


足もばたばたさせる。


───ど、どうしようっ。は、早く返信しないと!


動揺を隠せないまま、なんとかメール内容を理解し、返信用の文字を震える手で打ち込む。


文面が完成し、雅は送信ボタンを押そうとした。


しかし、ボタンの上に人差し指をかざした時、指が完全に動かなくなった。


───どうしようっ、緊張するっ……


雅の心臓は飛び出そうなほどに暴れていた。


顔も燃えるように熱い。


───こんなに早く返信したら、変に思われちゃうかな……


どちらかというと事務的なメールの文面なのに、どうしても押すのを躊躇ってしまう。


早く返信しすぎると、厚かましい女と思われる危険性ありと、どこかのサイトで見たことがあった。


故に雅はボタン押せずにいた。


───でも、早く直之くんに返事しないとっ!


雅は迷っていた。


どのタイミングで返信したらいいのか。


更に、直之からのメールが来た嬉しさと動揺がまだ残っていて、止まった指は小刻みに震え出した。


そして、雅は不本意ながらボタンに触れてしまった。


直後、メールの送信音が聞こえた。


───お、押しちゃった!うぅ、押しちゃったよぉ……


雅はまた足をばたつかせる。



実際のところ、彼女は直之以上に葛藤していた。




そして時はあっという間に過ぎ、約束の土曜日を迎えた────。



駅前にある高さ10メートル程の時計塔の側で俺は待っていた。


少し早く来すぎたのか、まだ誰も集まっていない。


しかし、俺の格好変じゃないだろうか。


数着しか持っていない服の中から、1番それっぽいのを選んだつもりだが、果たしてこれは男女で遊びに行く格好として適しているのかはわからない。


前日に姉に相談したのだが……。


「───はあ?あんたは何着ても地味だから悩む必要ないでしょ」


と言われた。


相変わらず腹の立つ言い方をする姉だ。


まあ事実だからなにも言い返せなかったけど。



と、そんなことは置いといて、集合時間15分前になったし、そろそろ誰か来るかな。


そう思っていた矢先だった。


「な、直之、くん……」


聞き覚えのある甲高い声が聞こえた。


声の主の方に視線を向けた。


「み、雅……?」


俺はあまりの衝撃に口がと空いたままになってしまった。


今までは制服姿しか見たことがなかったが、今目の前にいる雅は、女の子らしい私服姿をしていた。


やっぱり、めちゃくちゃ可愛いな。


私服だと尚更魅力的に見えてしまう。


「きょ、今日は、よ、よろしく、お願いします……」


「あ、ああ……よ、よろしく」


なんかいつもと周りの空気が違う。


これが、待ち合わせってやつなのか。


おお……なんか、すごい。


今から俺……雅と、デ、デー……


「おっすナオ。それに逢坂さんも」


軽々しい挨拶とともに、誰かが俺の肩を掴む。


「おっと?タイミング悪かったか?」


「い、いや。遅かったな和希」


そうだった。今日はダブルデートだった。


なんか2人で遊びに行くみたいな雰囲気になってたから、すっかり忘れてたわ。


「遅かったって、まだ10分前じゃねえか……ま、とりあえずみんな揃ったな」


そう言う和希の後ろから1人の少女が現れた。


「どうも、和にぃの妹の那由です。今日はよろしくです、直之さん、それに逢坂さん」


和希の妹とは、何度か面識があるが、やっぱり可愛い。


まさに理想の妹像って感じだ。


くそっ。羨ましい。和にぃだとお?……羨ましいなおい!


俺もお兄ちゃんと呼ばれたいお年頃なのに。


「んじゃあ、早速行くか」


和希の言葉で、俺たちは時計塔からショッピングモールに向かって歩き出した。



10分程歩き、目的地である地元で最も大きなショッピングモールに到着した。


俺は和希とアイコンタクトをとる。


(わかってるな、ナオ)


(ああ、ここからは手筈通りにいくぞ)


(了解だ)


俺と和希は、密かにこの日の計画を練っていた。


このダブルデートはもともと雅のために開催されたもの。


同性とまともに会話出来るようになるのがひとまずの目標だ。


そのためには、雅と那由が2人になる状況を作り出すことが必須条件。


デートの序盤、俺と和希は2人で別行動をとり、男子組と女子組で完全に分離させる。


そういう計画だった。


だった……のだが。



「あ、ねえ和にぃ!あのお店入ってみようよ!」


「お、いいねぇ。んじゃ行くか!」


和希と妹は、なんか2人ではしゃぎ始めていた。挙げ句腕まで組み出すし。


俺はもう一度、和希にアイコンタクトを送る。


(おい和希、これはどういうことだ?計画とちげえぞ)


(あー、まあ、なんだ……わりいな)


と、多分そんなことを思ってるような苦笑を浮かべていた。

───このシスコン野郎。普通に妹とのデート楽しんでんじゃねえよ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ