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『Swamp land』  作者: 風 ふわり
第一章 二人の出会い
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魔の原

 家族から温かな気持ちを充電したイライアスは、今日も元気に越境した。

 と言っても、ティスディルに乗せられているだけだ。

 それを、各所に散っていたハンドラ達が発見して報告する。

 

 「対象者を発見」

 「よし、気づかれないように尾行し、目的を確認せよ」

 「「ガオー」」

 

 「ガオーって、俺達魚じゃありませんか?」

 「レオ部隊だからいいんだよ」

 「そうかな?」


 ブツブツ不満を漏らしていたハンドラ。


 「あー! 対象者を見失いました」

 「アホ! 鳴き声に拘っているからだぞ。急いで探すぞ」

 「ガ、ガオー」



 イライアス達にはティスディルがいる。

 四つ足の獣になれば、移動はあっという間だった。


 「ティスディル、何処に向かっているんだ?」

 「ふはははっ。何処だろうな」

 「ブーッ」


 盛大に吹くシェルビー。


 「止まって。誰かに訊いてみよう」

 ティスディルは足を止め人形に変わった。


 「イライアス様、こんなところで止まっても誰もおりませんよ?」

 

 びょーおと吹いた風に塩の粒がのせられて、当たると痛い。


 「何処だここは?」

 「しまった。国の外に出てしまったようだ」

 「通り過ぎたのか?」

 「まあそんなところだ」

 僕の疑問にボケるティスディル。


 「ティスディル様。嵐に巻き込まれると方向を見失います。早く引き返しましょう」

 「そうだな。乗れ」


 紅くて綺麗だけど、魔の原と呼ばれている塩の砂漠。


 魔人が混沌を撒き散らした為に海が変わり果てた姿だと教わった場所だ。


 「ティスディルは魔人を知っているのか?」

 ふと訊けば、「聞いてどうする?」と返されたぞ。


 どうする? って、別に僕がどうこう出来るわけないし……うーん。


 一所懸命考えている素直な王子をティスディルは容易いと思い、シェルビーは微笑ましく感じたのだ。

 

 ■


 クワイエットに入ってすぐにティスディルは人形に変わり、三人は住民を探した。


 長い屋根が特徴の家が点在して、その近くには陽の光りに照らされた池が煌めいている。


 樹木は少ないが、膝下ぐらいの草が生えていてまるで草原のような場所だった。


 「静かなところだ」

 僕は、塩の風に吹かれていた。


 「狼煙か?」

 シェルビーがあちらこちらから昇っている黒い煙りを警戒している。


 「ふすん。これは魚の臭いだな」

 ティスディルは鼻がムズムズしたらしく、変なくしゃみをした。


 「この国の主食が魚だから焼いているんだな」

 「確認して参ります」


 納得していないシェルビーは、煙りの上がっている方に走って行ってしまった。


 「にしても誰もいない」

 畑仕事は朝夕にすませてしまって、後は家で内職をしているとは知らない王子。


 そうしてウロウロ外を歩き回っていると……。

 

 「動くなイライアス」

 「どうして?」

 「囲まれている」


 ティスディルの緊張した声に僕は焦った。


 「そう緊張するな。お前にはイタバットがあるだろう」

 そうだ! とは思ったが、あれでは人が真っ二つになってしまう。


 「駄目だ。あれじゃ相手が死んでしまう」

 「ふはは。可笑しな事を言う。突然我等を囲むような奴等ぞ? まあ良い。では命令を出せば良い」


 「命令って誰に?」


 戸惑っているうちにティスディルは真正面に突っ込んで行ってしまった。

 「待て待て待て!」

 すると、湖の辺りで見かけた魚のマスクをした者達が立ち上がって静止の声をかけてきたんだ。


 「なんだ、面白くない連中ぞ」

 殺る気だったティスディルは急に力を抜いて、両手をダラリと下げていた。


 「我等はこの国の治安維持をしている者だ」


 「あ、俺達の仕事って秘密じゃありませんでしたか?」


 「ハッ! ば、どうする?」


 「えっ? どうするって名乗っちゃいましたからもう遅いんじゃないですかね」


 「そうだな。名乗っちゃったんだからもういいな」

 景色だけじゃなくのんびりした者達のようだ。

 

 「イライアス様!」


 そこに今度はシェルビーが抜剣した姿で現れ、あっという間に治安維持の者達を気絶させてしまったのだ。


 「ふはは。お前中々やるではないか」

 「イライアス様お怪我はございませんか?」


 息を切らして迫るのは止めて欲しい。

 ちゃんとすればシェルビーはとても綺麗なのになあ。


 「ないけど、この者達は治安維持の者だと言っていたぞ。それを倒してしまって良いのか?」

 「治安維持?」

 「ん」


 顔を青くしたシェルビーは倒れている者達を介抱しようとして、ティスディルに止められて今度は赤くしている。


 落ち着きがないんだなシェルビーは。


 「よせ! それよりここを離れよう」

 

 それで、マルロを探すことも出来ずに帰るしかなかったんだ。


 城に戻るとティスディルが、暫くは行くのを止めようと言い出して……。

 僕は、マルロにあの気持ちを味わせたくなかったから反対した。


 でも、「我だけで調べてくるから待っていろ」

 そう言われてしまうと強くお願いする事も出来なかったんだ。

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