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『Swamp land』  作者: 風 ふわり
第一章 二人の出会い
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すれ違い

 「『Swamp land』でお魚を貰ってくるね」

 今日も私は、まほろば工房に手伝いに来ているの。

 でも、お魚を取りに行ってきてと頼まれたから、やっと『Swamp land』に行く事が出来るんだよ。


 「やったぁ」


 あれから、何日か過ぎてしまったから、会えるとは限らないけど、もしかしたら見かけた人がいるかもしれないでしょう。

 だから、自然と早足になってしまったの。


 キャストのハンドラさんにでも伝言を頼もうかなあ。

 この国では、魚を無料配布しているんだよ。

 毎日一尾は食べる事が義務だからね。


 多分、この国の公然の秘密に関係があるからだと思うわ。


 只ね、なま物だから毎日取りに行かないといけないの。


 一応、何処の家庭でも干物にして保存はしているけど、なるべくなら新鮮な魚を食べた方がいいって言われているわ。


 あ、色々なことを考えていたら、もう着いてしまった。


 「ファニ、父さんに会ったら大変だから、大人しくしていてね」

 「プニ」

 

 「やや、マルロちゃんが来てます」

 「誰かを探していますね」


 キャストのハンドラ達は、さっそくレイツの娘を発見して報告してしまった。


 「なんだと! 何故マルロがここに……」

 約束を破ったのかと怒るレイツ。


 「仕方ないっすよ」

 「そうですよ。ここには魚を取りに来なければならないんですから」

 ハンドラ達は冷静だ。


 「家の分は私が持ち帰っていたのに……」

 悔しがるレイツ。


 「完全に裏目に出ましたね」

 「どうするんすか?」

 「怪しい奴等は来ているのか?」

 「いいえ。全員伸された後からは見ていません」

 「そうか」

 とりあえずホッとするレイツである。


 「兎に角、危険な奴等だと言う事はわかったんだから、絶対にマルロには会わせるなよ。いいな」


 「「ガオー」」

 「やっぱり、なんか可笑しくないすっか?」

 「いいから行くぞ」


 今日もゆるいハンドラ達である。


 ■


 僕は、あれからずっとサボっていた勉強をさせられていたぞ。


 「イライアス様集中を!」

 「はい」

 専門家の教師は厳しいのだ。


 マルロは、今頃僕が来るのを待っているかもしれない……。


 こんなところで勉強している場合ではないのに。

 「イライアス様の心は、どうやらここに無いようですね」


 教師に呆れられてしまったようで、宿題を出されて自習をする事になってしまった。


 「駄目だ。全然集中できない」




 イライアスは、騎士達の訓練場に足を運んで、隅の方で一所懸命剣を振るった。


 「エイ、エイ、エイ」


 「イライアス様だ」

 「お可愛らしいな」


 騎士達は手を休めてイライアスが必死に素振りをする様子をみていた。


 末王子のイライアスは、美姫と名高いグヴィネス王妃によく似た容姿に、まだまだあどけないところが抜けないどこか庇護欲をそそる雰囲気があり、素直な性格もあって、宮廷に出入りする者みなが癒されていたのである。


 「末王子、また来てるのか」

 騎士をまとめる役の分隊長は、デレデレしている部下達を叱咤する為に訓練場に出た。


 「お前達! 余裕があるようだな。全員麻袋を二つ持って訓練場を往復しろ」

 「「「は、はい!」」」


 その声を聞いたイライアスもちょこちょこやって来て、タップリ砂が詰まった麻袋を担ごうとしてベチャッと潰れた。


 「あ゛」


 それを分隊長のテレンスが軽々片手で持ち上げ救出してやる。


 「イライアス様が担ぐ事はありませんよ」


 爽やかに笑うこの男は皇太子の親友である為、末王子を溺愛する王族達の事もよく知っていた。


 「僕も参加します」


 すぐに潤んでしまうひたむきな瞳を向けられて、怯んでしまうのはいてもの事だ。


 「では、お手合わせ願えますか?」

 「僕とか? ん、構わない」


 はにかみながら、精一杯偉そうに話す末王子。


 テレンスも何を隠そうこの末王子を護りたいと思う一人であるのだ。


 初めて友である皇太子のエセルバートに、自慢の末王子を紹介された時は、末姫の間違いではないかと思った程、あどけなくて可愛らしかったのだ。


 「お兄ちゃま」

 と舌足らずな呼びかけに、嫉妬したエセルが「それは私達兄弟を指す言葉で、他の者に言ってはいけない」と諭していたが、まだ三つになったばかりだったから「どうちてなの?」と逆に質問責めに合って狼狽えていた姿が面白かった。


 その時のエセルの困りきった顔を思い出して、笑いを堪えきれないテレンス。


 「テレンス?」

 「すみませんイライアス様。ちょっと思い出した事がありまして」

 「ん」

 「さあ構えて下さい。手加減致しませんよ」

 「はい」

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