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異世界転生 ツイン園児ぇる  作者: をぬし
第五章 童乱 幼子の結んだ縁
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72話 立場の弱き者

ゲームで遊ぶときに 強いキャラクターや職業を選ばないことがある


当然実績を狙ったり 好みで選んだり 試しに使ってみたい人だっているだろうけれど

そうでない人は なんでだろうかと考える


強いと理解しておきながら あえてそれ以下の者を選ぶのは何故か

ステータスが全部MAXだったり チートのような強い技を使える方がいいではないか

初期装備の人間を使うより ラスボス級の化け物を使えば楽ではないか


ただ 少なくとも


強き者を弱き者をひねりつぶす事よりも

弱き者が強き者をたたきおとす方が絶対に盛り上がるだろう


仕事を頑張るよりも 芸を編み出し馬鹿をやって人気を得る事を優先したり

対して実用的に使わないくせに 魅せるためだけに筋トレをする者と同じ


名声が欲しいのだ



「ぅあーー全然ダメ、どうしよぉ・・・」



 両手に持つ杖が力無くダレ下がるように風使いの弱気な声も店一つ開かれていない露店街ではよく届く。


「海を越えた先という可能性がわかっただけでも収穫だろう・・・そう落ち込むな」


 項垂れて頼りない彼女に話しているのは隣を歩く弓使いだ。

 屋内でも屋外でも旅先でも冷静沈着な彼を妬ましいものでも見るように風使いの表情は少女らしい不貞腐(ふてくさ)れたものへと変わる。


「だってさ、港から先になんて行ったことないし」

「俺だって経験が無い」

「いつ戻れるかわかんないし」

「それが旅、冒険というものではないか?」

「お、お金とかすごく掛かるんじゃ・・・」

「金銭は難しいが、物資であれば王国も協力してくれるだろう」



 あー言えば同調(こー言う)。こー言えば正論(そー言う)。そー言えば考案(あー言う)



「・・・トンガリって本当、顔はいいのにね」

「それが今の質問とどう関係がある・・・」



 王国と帝国の二大国のあるこの大陸に日本がある可能性が薄いものと知った彼女達は戦時で人気の無い王国を歩くことで気を紛らわせていた。



「ここから出てる間にあの子達がさ・・・心配じゃないの?」

「・・・」



 露店街を見渡したところで巡回する衛兵しかいないというのに、風使いはある一点に視線を移す。


 壁沿いの隅っこに今日は姿を見せていないが、そこはいつもコタの実の芯を使ったお菓子のコタコタを販売している場所であった。




 咲ちゃんとぬしちゃんが教会に現れ、奇跡の噂が広まる時には子供達にプレゼントをしようとする者が増え、かなり売れいきが良かった。


 だが、城に住まうようになってからの住人たちの反応は言ってしまえば良し悪し半々だ。


 咲ちゃんの奇跡の力の独占だと文句を言う者もいれば、純粋に顔を見たいという者もいる。

 何にしてもお菓子程度の金額でどんな怪我や病気をも治す、小さき白髪の少女に恩ある者の数は多く、城へと連れてかれたことを説明した時に遺憾を示す住人も数多い。



 ぬしちゃんについては・・・城で保護されると聞いた者の多くが安堵を示した事に弓使い達はまだ心の奥底で苛立ちが燻っている。

 

 闇の力による悪評が広まり、やれ近寄ると呪われる、やれ近寄ると力を吸われるなどと空想の噂ばかりが広まる始末。


 もちろん、悪意の・・・多分無い黒髪の少女に救われ感謝を示す者も少数いるが、その中でも悪意の無い子供が武器を振り回す事に恐怖している者も少なくない。




「・・・心配だな」

「でしょ?」



 2人の幼い少女達との出会ってから約1ヶ月。


 小さな身体から溢れんばかりの強大な力を持つ子供達に出会ったことで、人生の()を捻じ曲げられたかのような不思議な感覚を感じているのはこの場にいる2人だけの話ではないだろう。



「トンガリもさ、なんか丸くなった?トンガリ卒業?」

「うるさい・・・だが、お前も変わったな」

「あっはは!・・・そうだといいけど」

「弱音はまだ吐くが」

「よ、弱音じゃないし!?サキちゃん達心配なだけで・・・えーっと」



 紫鉱の遺跡。


 実際は鉱石なんてものがなく、遺跡なんて高尚に聞こえるような地下監獄は、幸か不幸か他所(よそ)では到底得難い経験となって3人は成長したと言える。



「弱音を吐くな・・・とまでは言わないが、もう少し前向きに考えろ」

「そー・・・だよね。うん」



 2人の子供を大切に思う丈は、最早(もはや)依頼主だから、幾度と救われたから、大怪我を負わせたから、それだけでは到底及ばない根強く深い物へと変わっている事に弓使い達に自覚があった。



「絶対、見つけなきゃだよね」

「ああ。・・・必ず」



 次に日本捜索へ出かけるのはまだ未定であり、巨大な水桶に手で掬った水だけで満杯にさせるような手作業となるだろう。



 それでもやり切る気構えを作り、2人は幼い依頼人が保護されているであろう城へと振り向き顔を向け・・・固まった。



 雪を見た。



「・・・あれって、雪??」

「いや・・・」



 違う。



 これから暑くなる季節になるというのに蒼白くキラキラと舞う雪が王城へと降り注いた。


 だが、時期外れの青い雪など聞いたことが無く、降り注いでいるのは城の周りだけ。



 城を囲む蒼白く輝く物。


 剣士が()()()にも一度発動させてしまった、あれと同じ色だ。



「結界が、破られただと・・・!??」

「ん?・・・え?は!?なんで!?」



 思い当たった瞬間、弓使いの表情は驚愕を隠せず、思考が遅れて風使いも跳ねるように焦りだす。



 戦時に起きる、非常事態。



 こんな異常が起きた時は・・・。



「俺は城へと向かう!!」

「り、リーダーに伝えてくる!!」

「とにかくサキとぬしの保護だ。見かけたら絶対離れるな!」

「わかった!」




 決まって子供達・・・いや。



 ぬしちゃん(イレギュラー)が絡むのだ。






ーーーーーーーーーーーー






 城門から貴族街に向かって白髪の子供を抱えてひたすら走る姿があった。



「メイドのおねえさんだいじょうぶ?咲、おもくない・・・?」

「が、がんばり、ますぅ、っふ・・・!」



 改めて思えば奇妙な話にはなるが、1回りどころか3回りも歳の離れたぬしちゃんと比べて、メイドさんの足は圧倒的に遅く、息も荒い。


 剣士に力にかかれば、片手で猫みたいに簡単に運ばれる。

 風使いはメイドさんよりは力はあるし、ぬしちゃんの次に足も速い。

 弓使いはその真ん中くらい。

 


 もし今の状態で森の中で以前出会った化け物と出会していたら追いつかれてしまっていそうだ。



 それでも、わざわざ抱えて必死に走る理由を咲ちゃんは解っていた。



 咲ちゃんは、もっと足が遅いのだ。



「おい!!そこの使用人!!」



 男の大声に自身の身体ではない心臓が酷く脈打ち聞こえて来る。耳元で聞こえる息遣いが酷く掠れたものへと変わるのが、怖い。


 声に驚き瞑った目を少し開ければ背後から槍を持った衛兵が1人、どんどんと近づいて来ていた。



 咲ちゃんはメイドさんに抱きしめていた両手をそのまま前へと伸ばしてみる。



 魔法(守護の奇跡)を使えば、邪魔くらいはできるだろうか?


 だけど、壁にぶつかった人達はみんな痛がっていた。


 追いかけてくる人がみんな悪い人なのだろうか?


 本当に捕まったらいけないのだろうか。



「咲、わかんない・・・」



 頭の中がごちゃごちゃ。

 みんなみんな、分からない。




「そのまま()()()()に入れっ!!」

「っふ、っは、はい!?」




 疲れ切った頭で思考が鈍っていたのだろう。

 メイドさんは男の声に従い住宅の隙間へと飛び込むように逃げ込んでしまう。



「わわっ!?いまのへいしのおじさんだよ!!」

「ぁ、ああああ!?」



 やらかした。



 咲ちゃんは気づいていたが、前を向いて走るしかない

彼女には声の主に気づかずまんまと細道に入ってしまった。



 止まれ、待て、ならともかく、逃げる相手に進めなどと言われるなどとおぼろげに考えていたメイドさんは細道の先に見える柵で阻まれた行き止まりに後悔で身体を震わす。



「ここに逃げ場はないぞ」

「ひ、ひぁ・・・!?」



 咲ちゃんを抱えながらも身震いしながら追い詰めてくる衛兵の男から後退るが袋の鼠だ。



「お、おねえさん、メイドのおねえさんわるいひとじゃないよ!」



 咲ちゃんは思うままに大声で告げられた衛兵は足を止める。



「どうしていじわるするの!?ぬしちゃんにもあわせてくれないし!おじさんだちみんないじわる!!」

「さ、さ・・・サキ、様」



 息も絶え絶え、立ち止まり中途半端に休まった足が今にも崩れ落ちそうなメイドさんを一生懸命に庇う咲ちゃんの目尻に涙が浮き出てくる。



 ・・・衛兵は動かない。



「・・・まあー、そんな感じがしますね」

「ふぇ?」

「え・・・?」



 よく見ればその真新しい鎧は先に話していた門兵ではあるが、話が通じるとは思わず・・・キョトンとしている咲ちゃんとは違い訝しげにメイドさんは息をどうにか落ち着かせながら咲ちゃんを隠すように抱えていた。



 すると、その門兵は手に持つ槍を地に置いて自身の顎元へと手を伸ばし、徐に兜をを取り外し始めだしたのだ。



 剣とは違って矛先が剥き出しの槍を持っているにも関わらず、城で追い詰められた時のようにこちらへと向けて構えてはいなかった。


 逃げ場のない場所へと追い込んだ余裕にしても兜を外す(どお)りなどはない。



「ふぅ・・・」

「あ、あの?」



 兜を外し晒された門兵の顔は好青年というには疲れたような印象が目立っており、少なくとも20歳過ぎ。

 もちろん見覚えはない。

 髪色は灰色であり汗で蒸れたのかボサボサで湿っていた。瞳の色は黒く、疲れた印象以外は至って素朴な顔立ちの男だ。



「訳有りのようだから話を聞いてやる。サキ様を降ろして少し休め」



 兜を脱いで見せたのは、敵意はないとただ安心させる為。


 その事に気づいたメイドさんの緊張の糸がようやく解けた。



「は・・・はぃぃ・・・」



 子供の重心に負け、前のめりとなった彼女はどうにか咲ちゃんを力無く降ろす。



「わっ!だ、だいじょうぶ!?」

「すみませ、ゴホッ・・・ひゅかれー、ました・・・」

「わー!?わー!?」



 掃除のそこまで行き届かないような細道だと知っていながら、壁を背にして彼女はその場にへたり込んだ。









 貴族街へと向かう道中にあるこの細道の先には柵が施されており、登ろうにも高さがあってメイドさんでは咲ちゃんを抱えながら登るのには時間が掛かってしまい、何にしても捕まっていただろう。


 場所は狭く、見通しが悪い上に建物の間に挟まれているせいで日当たりは悪く冷え込んだ風が入ってきており、汗で塗れたメイドさんの身体に涼しさが肌に染み込んでくるほどだ。


「ぶんぶんするね!」

「サキ様・・・ありがとうございます」


 咲ちゃんは疲れ切った彼女の額に向けて小さな手をパタパタと振っては団扇(うちわ)のように仰いで風を送り込むことで恩を返していた。



 結んでいたはずの彼女の茶髪はところどころが(ほど)けかけ、城に仕える者としては見苦しいものへと変わってしまっていた。



 咲ちゃんを連れ出し逃げた理由を隠す事なく話した使用人に向けて、彼女たちの横へと座る兜を外した門兵、兵士がいた。


 咲ちゃんに気遣って槍は立てかけずに横へと寝かしたままだ。


「知将様がぬし様を拐かし、お前が帝国の間者と疑われるように仕向けられた、と」

「は、はい」


 そこまで話した兵士は貯めた息を深く吐き、答えを返す。



「信用しろというには、無理な話でしょう。誰も信じないに決まってる」

「そ、そんな・・・」

「例えばー、俺が話したところで聞いてくれる奴は誰がいるんです?せいぜい同僚か友人くらいで、立場の強い連中が身近にいないなら追われるしかないじゃないですか」

「っ・・・」



 兵士は彼女が口にできない事を了承と見て、咲ちゃんを見つめ出す。


「メイドのおねえさんは、うそついてないよ!ほんとだよ!」


 兜を身に付けていない兵士の顔が変わる。



「サキ様が言うから・・・というわけではないですけど、嘘だとは思えないから困ってるんですよね」



 腕を組み、悩ましいものへと。



 疲れているのは顔つきだけで、彼自身は感情に乏しい者ではない。


「密偵にしろ暗殺者にしろ、こんな対策も取れないような間抜けなのが?って思いますし」

「ま、間抜けですか!?」

「兵士の鎧を着込んで潜伏してたような狡猾な連中が()()()()だったとか絶対嫌ですよ、俺」

「こんなの!?ひどいです!?」

「へいしのおじさんくちわるーい!」


 思いの外、メイドさんに対して言う事に容赦が無く咲ちゃんがプンプンと怒ってあげるがちっとも怖くない。


「すみません。ただ・・・」


 仕事上の一環と見做していない兵士は軽く謝罪を述べて、改めて言い直した。



「サキ様を降ろせば楽に逃げられるはずなのに、ぶっ倒れそうになっても庇ってるのが変だと思わなかったら、こう話さなかったですしね」

「で、でしたら!」



 兵士は片手を押し出すようにし身を乗り出して話をしようとした彼女を留めた。



「ですが・・・サキ様の保護は当然として、たかが使用人と兵士が言ったところで話を通すのは無理に決まってます」

「な、なら、ぬし様!ぬし様の確認だけでも!」

「ぬしちゃん!ぬしちゃん!」



 そばかすの気になる使用人の必死の形相に、ワタワタと身体全体で 慌ててますと体現する咲ちゃん。



 兵士は座りながら頭を抱えるが、少しして口を開く。



「協力を前提で条件、というか・・・方法があります」

「ぜんてい?」

「は、はい!どんな?」




 兵士は条件を伝える。




「俺に・・・捕まってください」

 

 


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