36話 三色の在処
悪であることに戸惑う必要は無く その悪に救われる者もいる
善であるからといって 誰もが救われるわけではない
だが 最も扱いに困るのは善と悪を備えた者
つまり 人である
それは優劣など関係ない
そう ただの人なのだ
黒髪の少女、ぬしちゃんの目覚めに一行は大いに喜んだ。
体に不自由そうなところはまるで無く、味覚などの確認できる範囲で後遺症なども起きていない。まさに健康体そのものだ。
死んだ・・・そう思ったのは勘違いであり、擦れ擦れの細い糸1本で命を繋ぎとめていたのだろう。
そして白髪の少女、咲ちゃんが発動した『癒しの奇跡』。
本来であれば1人を対象にしか扱えないはずが、周囲の人間にまで影響を及ぼすほどの魔力。
負った怪我だけでなく、過去に負った傷跡や身体における不純物すらも癒す力は人知を超えていた。体の損傷を治すだけでも偉大と思えた彼らの常識など安物のガラスのように容易く割れてしまったのだ。
彼らは王国の近辺にまで帰路を辿り、やっと近くなってきた王国を見据えながら歩いていた。
大剣と鉢金を失い、中身の軽くなった荷物を背負った剣士は右腕を前へと伸ばす。
「・・・あれはー・・・まじで癒しの奇跡だったのか?」
彼の腕、胴、腰には新品同様となった鎧と籠手が身に付けられている。
本来は買い直しが必要なほどに壊れているはずの物が、何故か直っている。
癒しの奇跡は傷を治す魔法であり、物を直す魔法ではない。
喜びや驚きなど目まぐるしい感情の嵐で気づくことができなかったが、風使い、弓使いの装備も血の跡はささやかな解れも戻っている。
思い返せばぬしちゃんの服も咲ちゃんが拾って持ってきてくれたボロボロの白いカバンも傷と同じように修復されていたのだ。
「魔力が強すぎるとここまでなおしてしまうものなのではないか?俺にはわからない」
剣士の疑問に弓使いが曖昧な返答を返す。
剣で相手を切りつけたら?炎で皮膚をあぶったらたら?そんな結果のわかりきった常識で語れるような力ではない。
「あれが癒しの奇跡じゃなくて、別物だったってこと?力の感じ方は同じだったけど・・・。ほら、ほわわーんって感じ」
「ほわわーんって、わかんねーよ」
多少なりとも教会に努めていた彼女が言うが、正直わかりにくい。
風使いの彼女の特徴として、魔法を覚える速度は早いが教わると時間を損なうために半端で当てにならない。
「咲もわかんない!」
「をことぬしもなんだ」
「そうなんだ!」
「そうなんだ」
「お、おう、そうですか」
「何諦めてんのよ」
来た時と同様重なって、ダブルどんぐりが山びことなってお返事が返ってくる。
10代くらいの年頃、せめて男の子であれば自身の力に興味を示しそうなものではあるがこの子達の場合はどうも希薄だ。
幼児なのだから致し方ないのだが・・・。
「とにかく王国に戻ってからにしようよ」
「まぁ、戻ったら依頼報告と情報提供だな」
「おうちにゴーだよ!」
「ゴーなんだ」
「・・・ごー、とは?」
紫鉱の遺跡で得た情報は多いのだ。落ち着いてからでいいのかもしれない。
その思いで彼らが門へと辿り着きそうになり・・・
「っ!?そこの者共!止まれ!!」
衛兵に大声で行く先を止められ、剣士、風使い、弓使いの3人は表情を引きつらせる。
ぬしちゃんも足を止めるが変わらぬ表情で、その銅像の背中で咲ちゃんは大声に驚いて縮こまっている。
衛兵は1人ではなく、門から、畑の近くからとどんどん集まってきており逃げ場はない。
「な、なんすか?」
「お前達は幼児誘拐の容疑をかけられている!子供は2人!」
「お、俺らがですか?」
戻るつもりとはいえ、半ば誘拐以上の不味い事態にはなっていたのだが。
門を出る時には声を掛けられこそしたが出られたものの、それでも他の特徴がやはり酷似しすぎていたのだろう・・・そう彼らは想定する。
「ああそうだ。赤青緑の男2人に女1人が白いカバンを肩から掛けた子供を連れ出したと出回っている!」
白いカバン。ぬしちゃんの持ち物は元より持っていた物だ。
「・・・ぁ」
それ以前の問題であった。
少女達を隠そうとしていたのは彼らだけの意思であり、服は用意した。目は無理だが、髪色は帽子で隠す努力もした。
当然子供達がそんな思惑など知るわけがない。だからこそ気にせず持ち出した。
単に彼ら、剣士の確認不足であり盲点。
咲ちゃんの奇跡によって綺麗に証拠が綺麗に復元されており、言い訳のしようがない。
「そこにいる少・女の白き入れ物の中身は紙細工だろう?口癖や特徴も詳しく聞いている、帽子で隠してももう無駄だ。今度は言い逃れはさせんぞ」
うそはいけないんだよ!
剣士の胸の内に白髪の少女の言葉が繰り返される。
白髪の少女へと目をやれば、酷く心配そうにこちらの様子を窺っており、その心根の優しさが垣間見える。
トンガリ、風っ子と呼ぶ2人はこういった場に置いて話さないようにはしているが、その表情は諦めが混じっている。
不思議なことに、剣士の彼は最初こそ驚いたが・・・要点を聞き終えた今では焦りは無い。
強大なモンスターや獣と相対した経験もあるだろうが、やはり2人の子供の影響が最も大きいのだろう。
何せ・・・彼らがどうなろうと子供達に危害はまったく及ばないのだから。
だからこそ、今の彼は好きに動ける。
剣士は自身の持っていた大きなカバンを地に降ろし、何かを取り出そうとする。
「貴様っ!何を!?」「武器を持て!!」
不審な行動に衛兵達は鞘に納めた剣や槍を使い構えを取り、風使いと弓使いが身構えてしまう。
「ひぅ」
自身に対してではないと解っていても、武器に手を掛けた鎧姿の男達に咲ちゃんが小さな悲鳴を上げてしまう。
「こ、この子が怯えてるでしょ、やめてよ!」
「なんだと誘拐犯!?」
衛兵達の動きを見たぬしちゃんが指示も無しに衛兵達の動きに怯えている咲ちゃんを背中から降ろしだす。
「ぬし、問題ねぇ。サキは大丈夫だ」
「そうなのか」
「そうなんだよ。話をするだけだ」
「おはなし」
この時の剣士の頭は余程冴えていたのか、ぬしちゃんの行動原理を掴んだように制止をかける。
剣士は気持ち悪いほどの爽やかな笑顔を子供達へと向けながら取り出したのはペラペラな薄い羊皮紙が2枚。
片方は形式ばった一般の物だが、もう一枚は文字こそ書けてはいるが遠目から見れば落書きのように見え公の物ではない。
「俺らは2つの依頼を受けていまして、1つは役場に、もう1つはこの子達のです」
「ほう?見せてみろ」
警戒からか武器をいつでも抜けるように片手を鞘に伸ばしたまま衛兵の1人が依頼書を受け取った。
1枚目は害獣駆除依頼。
それも報酬が安く場所も遠い割に合わない役場でよく残されている余り物の依頼書に衛兵はお似合いだとでも言いたげに鼻で笑いだし、傍から見ていて印象は悪い。
だが、2枚目に目を通して・・・頭を傾げた。
「これは?」
「この子達の家を俺達は探してたんですよ。実際は国も違っていて王国には無いことがわかって外ならどうかと考えたんですがね」
「数日もかけて子供を連れだしてまでする事だとは思わんが?」
「この子達に外を見せなきゃわからないだろ。本当に誘拐するんならわざわざ王国に戻ったりしないですよ。この子達の事情まで聴いてます?」
「ふむ・・・?」
疑いはまだ晴れておらず疑念の声がそこかしこから聞こえるが、とりあえず誘拐の線は薄まったのか鎧越しの警戒心という糸が多少ほぐれたようだ。
「咲たち、ゆうかいじゃ、ないよ!」
すっかり彼らの影に隠れてしまっていた咲ちゃんが周りに聞こえるように大きな声で話し出し、守衛と思われる槍を持った衛兵が屈んで咲ちゃんと目を合わせて話しかける。
「君達が騙されたわけではないのだね?」
「ちがうよ!おしごともだけど、おうちもさがしてくれてるんだよ!」
「なるほど」
次に衛兵が続けて話したのはぬしちゃんだ。
「君は男の子だと、この男は言っていたそうだが本当かね?」
「そうなのか」
「・・・本当かね?」
「をことぬし、おとこのこなのか」
「いや・・・君は女の子なのだろう?」
「そうだったのか」
「・・・い、いや・・・」
実際は剣士の嘘だったのだが、妙に納得したかのように槍を持った衛兵は剣士へと兜を向けた。
兜越しだというのに困った様子が見て取れるのがなんとも言い難い、ぬしちゃんの奇特加減は幼さで緩和しようとも慣れていない衛兵達には手に余るようだ。
そう足踏みをしていた衛兵たちの隙間から、1人の守衛と白き衣を纏った女性の姿が見えた。
「と、とおして!通してくださいぃ!!」
門から走って来たのか、その女性は死に物狂いと相違ないほどに血相を変えて鎧の塊を押しのける勢いで駆け抜けてきたのだ。
慌てる衛兵達を強引に押しのけて自身達へと一直線に向かってくるその女性には咲ちゃんは見覚えがある。
「はたけのおばちゃん!」
修道院にいたシスターの1人で菜園を担当していた恰幅の良い優しくて力持ちのおばさんであった。
「サキちゃん!ぬしちゃん!ああよかった・・・無事で、よかったぁ・・・!」
「わっ!?」
「ふぁぃう」
周りの目も土の汚れも厭わずに恰幅の良いシスターは崩れるように座り込み2人の少女を両腕で抱きしめる。
「どこ探しても、いなくってね、もう勝手な事をしちゃだめよぉ・・・!」
「ごめんなさい!」
「ごめんなんだ」
「いいの、もういいの・・・!」
嬉し涙を浮かべて子供へと抱き着いた腕を離さない様に、剣士達は鎖に縛られたかのように良心が痛んだ。
「やはり、俺達は間違っていたな」
「・・・そうね」
「そう、だよな」
そんな彼らへと、涙を浮かべていたシスターが話しかけてくる。
「あなたたちが、この子達を?」
「は、はい。本当に・・・申し訳ないです」
剣士が代表となり、彼らは深く頭を下げる姿を見た後にシスターは2人の少女へと目を向ける。
服装こそ変わってはいるが、至って健康的で元気そうだ。
「この子達に悪意があったわけでは・・・なさそうですね」
「も、もちろんです。事情も、話します!」
「あなた、難しかったらかしこまる必要はないのよ?聞いていてぎこちないわ」
「う、うす!」
丁寧な言語に慣れていないことを見抜かれた剣士はそれでも姿勢は固ばった姿勢のままに話は進む。
「私たちの見解とは多少違うのはその事情が原因かしら・・・あなたたちはこのまま教会に来られるかい」
「シスター、彼らは誘拐犯では!?」
衛兵の1人が驚きに声を上げる。それは他の守衛達も同様だ。
「こうして子供達が無事見つかったのです。兵士のみなさんの努力にも救われました」
「ですが・・・よろしいのですか?」
「彼らに悪意が無いのであれば、詰所に連れていく理由なんてないのよ。私たちの思い違いがあるのかもしれないわね?」
子供達を抱きしめていたシスターは両腕を離して立ち上がり、剣士達に向けて左手を太く短い指を開いたまま・・・宣告する。
「では・・・善意で迷惑をかけたと少しでも思うのなら、覚悟を持って・・・教会に来なさいな」
にこやかに見えていた中年女性の表情と深く力の入った言葉に3人は息を呑み、教会へと同行した。
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王国内の市民街と呼ばれている区画でも離れにある教会。
かつては多くの神官や修道女達が通いつめ神への信仰を崇めていたと言われているが、この教会に通っていた風使いの話によれば最近廃れてきているという話だ。
それでも怪我や重症の者がいれば通う者が後を絶たないのは、奇跡の力がそれほどに偉大であると言わしめているのだろう。
教会の内部は清潔に保たれており、剣士、弓使い、風使いの3人は祭壇近くの身廊、床へと正座をさせられている。
そして・・・祭壇には修道女であれば身に付けているはずの頭巾を外し、金で縫われた絹糸のような金色の長髪をした女性が立っていた。
この教会ではなく、2人の少女がいたとされる修道院の院長だと言うが、あまりの若さに目を疑ってしまうほどだ。
白き修道服を身に纏い、鮮やかに広がる翠瞳の瞳は幼さを残さず、凛とした顔立ちと姿勢をした姿に彼らは3人は見惚れてしまい、聖女が存在するならば彼女がそれに当てはまるかと野暮な考えを巡らせてしまう。
美しく清純。それが第一印象だ。
咲ちゃんとぬしちゃん、そして他のシスター達は席を外しており、教会外で遊び相手か、買い物でもしているだろう。
「つまり・・・子供の持ちだした金銭を誤って使い、それを理由に教会へと顔を出せず、別の依頼で元手を稼ぐ、と」
だが・・・その聖女の右手には女性の手に合わせられた長い棒が握られており、物々しい。
「本来であれば難なく終えるはずだった遺跡は化け物だらけとなった巣窟であり、子供達の力を借りて・・・借りて助かったとっ・・・」
聖女は先端に金属が仕込まれている棒がカツカツと己の心情を表すように音を立たせ、そのたびに彼らの身体もビクリと揺れる。
「ぬしちゃんがけ、怪我、けがっ・・・この愚か者共があっ!!!」
殺意の混じった聖女の怒りが声となり、地に叩きつけた棒となり、静かとなった教会に大きく反響し響いた。
ただひたすらに、純粋に少女達を大切に想う1人の女性がそこにいる。
剣士達は曇らすこともなく、ありのままを説明したのだ。
出会った経緯から帰りに至るまで。中には当然説明しにくい内容もあったが、目の前に立つ金色の聖女は最後まで説明を遮ることもせずに聞き終え、爆発した。
「あの子達には帰る家があるのですよ!?それを金銭ごときで天秤に乗せること自体が痴がましい!!」
「す、すみま」
「黙りなさい!私が話しているのです!!こちらの事情を聞いてから口を開け!!」
「ひっ!?」
風使い、そして彼らの発する言など聖女は許さない。
「金銭の価値はわかってはおりますが、過ぎたる物はやがて問題の種となって芽吹くでしょう。だからこそあれだけの大金を荷物と共に先に輸送をしたのです!今回の件であなたたちが十重に理解したでしょう!?」
ここからは修道院の元院長としての話となる。
森の中の修道院から王国へと来る手順として、まず1日目に家具などの荷物だけを輸送させ、それに賊を捕らえた報酬である金銭も含まれていたのだ。
端的に言ってしまえば、囮だ。
仮に、違う賊に襲われたのならそれで満足させるというシスター達の思惑があったのだ。
そして、2日目にその経費を活用し護衛の数を多く増やし厳重さを伴った馬車を手配した後に咲ちゃんとぬしちゃんを送る手配をしていたという。
だが、1日目にして咲ちゃんとぬしちゃんの姿が消えてしまい、荷物を送り終えたはずの馬車が日をまたがずに大急ぎで戻った時には失神する修道女がでるほどに地獄を見たという。
王国にある教会へと顔を出した後に捜索を続け・・・外に連れ出す2人の子供の特徴を聞き、日夜問わず交代で門の前で待つ修道女達の心中など誰が量ることができようか。
聖女の何度も殴るように放たれた話が終わる。3人は罪悪感からうつむいたままに話を聞いていた。
「頭は剣を持った赤いあなたですね?」
「う、うす」
聖女は言った。
「あなたのような人相も悪い輩がいるから子供達が傷つくのです。このまま剣を持っていては違う誰かが不幸になるだけでしょう」
「なっ・・・!?」
「今後、あなた達はあの子達に近寄ることは許しません。武器を捨てて土でも耕してればいいでしょう」
暴言とも取れる聖女の発言に剣士の額に青筋が浮かぶが、彼は渦巻く気分の悪くなる熱、苛立ちを胸の内を抑える。
そう、覚悟をしてこの場に訪れたのだ。悪いのは、自分だ。暴言を吐かれるだけ安いほどの事をしたのだ
怒るなど場違い。剣士は何も言わない。
それは弓使いの彼も同じだ。
「ぅ・・・るっせーのよあんた!?さっきから被害者面してなんなのよ!!」
キレた。剣士でも弓使いでもない。
「お、お前・・・」
風使いの女性へと剣士達が呆けた顔を向けるが、相対する聖女の表情は当然良いものでは無い。
一般人であればその表情だけで沈めてしまいそうな冷たい瞳だ。
「今、なんと?被害者面と言ったのですか?」
「ええそーよ!この稲頭!!」
「い、いね!?」
確かに色合いをぼかせばそうは見えるが、そこじゃない。
「確かにあんたの言う通りあたしら最低よ!子供連れだして何度も危ない目に合わせてんだからさ!酷い怪我もしちゃってサキちゃん達がいなかったら全滅よ!!」
風使いと呼ばれる女性が聖女へと捲し立て・・・指を差した。
「ぬしちゃんの足の事聞いたわよ!あんた達だって怪我させてんじゃん!!守れてないじゃない!!少なくともあたしらのリーダーは身体張って前に出て命かけてくれてたわよ!!」
「・・・それは」
「あの子達に近寄るな!?なら言わせてもらうけど三神なんて死神を信仰してるあんた達こそ近寄らない方がいいんじゃないの!?あんたたちはあたしらと同じ!同じよ!!あの子達を使って上から語ってんじゃないわよ!!」
言葉の嵐で教会が吹き荒れ、瞬く間に過ぎ去った教会は静けさに包まれる。
「・・・あなたの言い分は尤もです。冷静さを欠いた、過ぎた発言でした」
「え、ちょ、ちょっと・・・」
剣士に対し深く頭を下げ始めた聖女を見て、あれほど言葉で畳みかけていた風使いですら驚いてしまう。
「私達はあなた達と同じ・・・そう、そうでしたね。そうですよ!」
「どうかしたのか・・・?」
悟りを開いたかのように目を見開いた聖女に不安を覚えた弓使いが声を発するが、振り向いたその瞳は天地が変わったかのように喜びに溢れている。
この笑顔の虜となってしまいそうだが・・・油が水へと変貌してしまったかのような変貌は異様であり、むしろ恐ろしく距離を置きたくなるほどだ。
「先ほどの言葉は勝手ながら撤回させていただきます。大変申し訳ございません」
「俺は・・・いいけどよ、一体どうしたってんだ?」
「あなた方は生活に困っていた、それでよろしいですね?」
「そう、だけど?」
「・・・?」
言葉こそ丁寧ではあるが、理知的な雰囲気を出しつつ年頃の女性らしい振る舞いを醸し出す笑顔に踊らされ、彼ら3人は次の発言を読むことができなかった。
「私達は人となり現れた二使いへと信仰を改めたのです。静かな最期を迎えるつもりは、少なくとも修道院にいた私達にはもう無縁となりました」
「二使い、とは?そんな神の話は聞いたことがないが・・・」
弓使いが思い当たる知識ではそんな話は聞いたことがない。
「光と闇、月と太陽のような2人の子供。二の人が合わさり天の使いとなってあなた達も救われたのでしょう?」
ああ。
ここまで説明されれば心酔し楽し気に語る目の前の女性が何を信仰しだしたかは理解した。この場にいない泣き虫と仏像のペアしかいない。
その場でくるりと周り、赤の剣士、青の弓使い、緑の風使いに手を差し出し聖女は言った。
「あなた達に、咲ちゃんとぬしちゃん。2人の私兵にすることを思いついたのです!」
「「「えぇ!?」」」
数日後、咲ちゃんとぬしちゃん、白髪と黒髪の幼児2人の存在は異端とも言える力によって瞬く間に王国の市民街で有名となり、少女たちの近くでは常に切磋琢磨に働く赤青緑の私兵がいるという噂で持ち切りとなった。
第二章完結です
まだまだ続きますので をぬしをどうかよろしくお願いいたします





