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異世界転生 ツイン園児ぇる  作者: をぬし
第二章 未知満たす冒険
14/128

10.5話 子守り当番

よーし、じゃあ風っ子とトンガリはこの紙に書いたもんを買ってこい

いいか?絶対無駄遣いすんなよ?

あ?俺?俺はこいつら見てないといかんだろってああーうるせぇ!騒ぐんじゃねえ!

べ、べつに楽しようとか考えてねーし?つーか昨日は俺が行ったんだから交代でいいじゃねぇか。

とにかく行ってこい!盗まれんじゃねえぞ。


よし、行ったか。

あーそういや・・・、ガキってどうみてりゃいいんだ?


『王国』


 地図上で存在する国の中で最も交易が盛んであり、平野と森、そして山を挟んだ帝国と並んで大国の1つ。


 白亜色をした城を中心に城壁、貴族街、商店街、露店路、市民街、そして大きな外壁に王国が囲まれており、一般では西と東にある大門により出入りすることができる。


 王国の事情は知ったことではないが、どうも帝国との折り合いが絶望的らしく過去数年に渡り戦による小競り合いが続いている。

 話で聴く限りでは優秀な参謀、そして王国の力の象徴でもある最強の騎士の影響もあるのかどれも勝利で終わっている、とか?


 まあ、俺たちみたいな・・・貧民層には関係ないか。がんばってくれーとしか言いようがないぜ。


 用のあるところといったら、この安い貸家、掘り出し物目当てに露店、依頼の張り出しの確認に役場と酒屋を行き来するくらいだな。


 依頼については大きく2つ。


 まずは役場での依頼。

 報酬の金銭や物品を予め役場に預け依頼達成が確認されたことが確認されれば報酬が渡される。

 手数料がかかる代わりに公の場に公表されるように展開されるもんだからかなり目立つ。成功すれば報酬も確実に約束されている。


 貴族層の連中とか国がらみの問題とか信用に関わる仕事だとか、失敗が許されない内容が主だ。

 調子に乗って適当に依頼を受け、失敗でもしたなら信用を失い、他の相手の依頼を受けようにも相手から受注を断られる悪夢。


 宿やら酒場、露店や個別で受ける依頼は・・・ただのお願いだわな。

 家主の信頼にもよるもんだろうが報酬も依頼内容も千差万別、中には騙す輩もいるし役場みたいな公的なものじゃないもんだから責任は全て個人に委ねられる。当たり前だわな。


 

 依頼を受けるも断られ、払える金銭も払えず借金をしたところで現状は悪い方へ転がり落ちてくばかり。食い物は菓子、金も底へ尽きかけ・・・解散、他の国に逃亡、そんな考えで頭でぐーるぐるまわって。



 ・・・助かったんだな、俺ら。



「あー、まじどうすっかなぁ」


 これは幸運の巡り合わせってやつか?


 家の問題と今後の生活は偶然出会った子供2人のおかげで救われた。といっても、子供らの金じゃなかったようだが、使っちまったもんはしょうがない、ああ、しょうがない。


 サキちゃんの話からすれば修道院で世話になってた連中は昨日の内に教会へ到着しているはずだ。風っ子がそれらしいシスター連中を見ているから間違いない。


 何かを探してる・・・感じもしていた、とか。


 そうか、そうだよなー。

 あー罪悪感で、胸がいてぇ。まじで。


 盗賊、野盗、コソ泥。今まで受けた依頼でその馬鹿どもを相手にしてきたが、よく平気で悪さができるもんだ。

 悪さ・・・してるよなぁ・・・。


 今まで受けてきた依頼は護衛や野党討伐やモンスターの駆除、受け取る金は高くて銀貨2枚だ。

 当然生活費や作業効率、装備の調整をどう求めるかで稼ぎの振り幅は変わるところだが、前の失敗が本当に痛手だ。

 貴族連中の依頼をすっぽかしただけでこれだ。


 依頼時間を間違えた俺が馬鹿なんだけどな。あーあ。



 教会へ向かってるであろうシスターたちに子供を任せたところで借金に使ってしまった金を言い訳できる自信がねえ。


 いつかバレるその日までに今の資金を起点になんとかせねば。


 それに、この子たちと交わした依頼もある。この子たちの言うニホンという国を見つけて送り届けることだ。


 周囲の特徴を白いの(サキちゃん)聞いてみれば、動力はわからんが馬車の代わりに鉄の箱が車輪を付けて走り回っていて、四角い形をした縦に長い建物などがそこらに立ち並ぶ、らしい。


 依頼でしか王国の外に出たことがない俺らはわからないが、少し前に()()()()()()()()()()が宿屋に来ていたのを覚えている。


 この近隣にはないが存在するはずだ。


 今思えば、何いってんだこいつ?と笑って聞き逃すんじゃなかったぜ。

 どこにいったのか?フードを被っていてわかんなかったな。


 とりあえず、だ。


 風っ子とトンガリ(あいつら)はちょっと反対していたが、腹を決めた事がある。そのための準備に今2人は外へ買い出しをしている。


 サキとぬし、この2人が現れたのは俺らにとってのチャンスなのかもしれねぇ。

 


 そして・・・俺は今



()()()()()()()!咲たちとあそんで!あそんで!」

「をことぬし、かみがほしいんだ」



 あーーー、まじどうすっかなぁ。



 子守りなんて初めてやったぞ。俺もちっちゃい時には兄弟はいたが、今はいない。

 任せるのに慣れていて子守りがあるのを忘れていたのが盲点だ。ちっとも考えがまわんねぇ。


「あーへいへい、ってーかおじさんじゃねえ!俺はまだ21だ」

「えっ!?ご、ごめんなさい!」

「おじさんじゃない、おっさんなのか」

「ああっ!?紙やんねぇぞてめぇ!」


 んまぁ・・・、渡すんだが。覚えてろよてめぇ。


 にしても、なんでこいつら友達なんだろうな。


 白いの(サキちゃん)は明らかに育ちが良すぎる。よほど平和なところで過ごしていたのか?


 そこらのガキ連中みたいにバカ騒ぎするわけじゃない。昨日1日過ごしていたが、自分で家事の手伝いを進んでするくらいだから貴族の生意気な奴らとも到底思えない。

 依頼を受けたあの日からまだ2日くらいだが、覚えもいいし手間がかからない。

 まあ、だからこそ家が恋しくて泣いたんだろうな。



 黒いの(ぬしちゃん)、おっさん言いやがったなてめぇ。

 こいつは、ほんとなんなんだろうな。表情筋どうなってんだ。


 話は一応聞いてはくれて問題ないとは思うが、手癖の悪さ(金貨の件)もあって信用なんねぇ。


 ・・・なんだがなぁ。


 その自分勝手に助けられた手前、強くでれないのが悔しい。


「遊ぶったって外はまだダメだからな。紙だって何使ってんだ」

「をことぬしのぶきをつくるんだ」

「おお?剣に興味あんのか」

「けん」


 意外だな。女だよな?

 散々酷い目あってるみてぇだし、結構しっかりしてるのかもな。

 ・・・表情変わらんからわからんけど。


「けん!ぬしちゃんもつかうの?」

「つくってなかったんだ」


 シュルシュルと擦れる音を出しながら細い枝の様に紙を細くしていく。お遊戯にはうってつけの簡素な紙製の細剣ができた。


 とりあえず、紙剣(しけん)とでも呼べばいいのか?

 黒いのは室内で振り回しだす。


「ぬしちゃんかっこいい!」

「さきちゃんのぶんもつくった」

「わぁ!咲もやる!」

「おいお前ら、まわりの物にぶつけんなよ」



 てーか、やっぱ普通のガキだよな。

 当たり前っちゃあ当たり前だとは思っているが、紙剣の振り方を見ていてわかる。

 ただ手を伸ばしたまま持ち上げて、そのまま振り下ろす、ただそれだけ。


 白いのは()()のどこが強いと信じてるのか。


「どっちも振り方なってねえな。その内だけどよ、外に出た時に型だけでも教えてやるよ」


「ほんと!?咲も強くなれる?」

「おしえてほしいんだ」

「強くなれるかはお前ら次第、な。それまでは遊んどけ」

「やったー!」


 テンションの上がった兎のように白いのが跳ねだし、黒いのは紙剣を天井に掲げている。喜んではくれているのな。


 そういや親父も俺がチビの時にも同じ事言ってたな。もう死んじまったけど。

 んまぁ後々に鬼のように(しご)かれて泣きべそかくとも知らずに呑気に喜んでたわけだが。


「おにいさんわらってる!」

「うれしいのか、おっさん」

「!?う、うっせえな!いいから2人で遊んでろ!あとおっさんじゃねえ!!」


 ああああ!うぜぇ!何思い出してんだ、くそ。悪い気しねぇけど、いざ言われるとむずがゆくなってきた。



 ガダンッ!と家の入口の方から音が聞こえる。



「ふがーーー!!おもったいよこれ!トンガリのやつぅうう!!腰折れるわ!!!」


 もう持てないのか家の中に入ってすぐにドサッと重い音を立てる箱を置く。風っ子(風使い)が先に帰ってきた。


「おーおつかれーぃ。休め休め」

「おかえりなさい!」

「おかえりなんだ」


「た・だ・い・まっ!ちょっと聞いてよ!トンガリのやつ、これで筋肉つけろーって途中からおっんっもっい荷物あたしに持たせたのよ!?しかも他の店の買い出しに行っちゃうし!普通さぁ逆じゃないの?ねえ!!奥の部屋までもってくの無理ー疲れだー!鉄とか入ってんのよこれ!これ!これ!」

「そうなのか、もってくんだ」


 うぜぇ次はうるせぇのがドカッと俺の座っていたソファ横に座ってくる。あまりの早口に白黒コンビ(サキとぬし)も戸惑ってるようにも見えた・・・んー、やっぱ黒いのはわからん。

 まあ労わないとな。


「おい、サキ。コップとってくれー」

「うん!」


 ソファの前にあるテーブルには水の入ったボトルはあるがコップが足りない。食器の場所は教えてあるから大丈夫だろ。

 迷わずに向かっていく小さな足音が聞こえる。


「何あんた子供使ってんのよ」

「俺座ってる、白いの立ってる、ほれ」

「ほれ・・・じゃないでしょーーが!」


「おねえさんどーぞー」


 トットットットとテーブルの前に白いのが立ち、コップを置いた後 ボトルを小っちゃい両手と身体で支えるように持ち上げこぼさないように入れてくれる。

 ちょっとかわいい。


「サキちゃんありがどー!・・・こいつと大違い」

「そ、そうなの?」


「あ?コップに水入れたくらいじゃねえか」

「サイッテー。あんたそんなんだからモテないのよ」

「えーへいへい。すんませんっしたー」

「んがーーー!!」


 痛くねぇ痛くねぇ。風っ子の目線なんて痛くねぇ。

 風っ子の方を見てみるが額には汗が流れている。詰め込んだのかマジで荷物が重たかったんだろうな。


「・・・あー、悪かったよ」

「え、気持ち悪い」

「んだとてめぇ!膝の上にその荷物乗せんぞ!」

「させませーん、サキちゃんバリアー」

「ふぇ」


 風っ子は膝の上に白いのを乗せてガードしやがった。

 子供を盾に使うなぞなんてせこい奴か。


「ていうか、柔らか!すごいなにこれー!」

「おねえさんくすぐったいよ」

「アホか」


 お腹やら頬やらつっついて何やってんだか。


 き、気にはなるけどよ。



 入り口の方から静かな足音が入ってくる。音に気にしたこの歩き方は、帰ってきたか。


「戻ったぞ」

「おつかれさん」


「「おっかえりー!」」

「うるさい、ただいま」

「うるさいって何よ!あんたのせいですっごく疲れたんだからね!?」

「ああ、助かった」


 トンガリ(弓使い)が食料が入ってると思われる革袋を二つ担ぎながらソファに座る俺たちを素通りしながら奥へと向かった。


「おかえりなんだ」

「ただいま」


 黒いのがトンガリに挨拶しながら奥の部屋、倉庫からこちらに戻って来たようだ。


「・・・」

「・・・なんだよ」


 黒いのがソファに座る俺をじっと見つめてくる。

 まじでなんだよ。


 ・・・しゃーねぇな。


「ほらよ、これでいいか」

「おお」


 膝の上に乗せてやった。そういや・・・3人の時は気にしてなかったが、この部屋にこのソファ以外に座るってーと床の上しかないわな。


「ほーらこちょこちょー!」

「あはっぬしちゃっんたすけてー!」


 つっつきからくすぐりに進化した責めにグレードアップか。隣が騒がしい。



「こちょこちょ、つよい」

「今剣と比べたろ」

「どっちがつよい」

「勝った方」

「そうなのか」

「おう」


 ・・・。


 終わりかよっ!


「長く持つ食材を多く買ってきた。外でも長く持つだろう」


 トンガリもこちらに戻ってきてソファの騒ぎを気にせず床へ座る。


「俺のコップでいいか?」

「ああ」


 了承の言葉と同時にトンガリは自身の方へコップをずらしボトルの水を注ぎ、ゴクッと一気に飲み干した。

 黒いのとは違い、トンガリはまだわかりやすい。おつかれさんだな。


「風っ子、すまなかった」

「ほんとに重かったんだからね?もういいけどー」

「わかった。だが、気を使わずに入り口にでも置けばよかったろうに」

「え?」

「あれには予備の防具や道具、金属の類の補強材も無理に詰め込んでたからな。怒るくらいなら適当に置いておけばいいものを・・・」


「あたし、奥まで持ってってないけど?」


 そういや・・・、あれ?誰持ってったっけ。


「では誰が持っていくんだ、リーダーか?」

「俺はここで座ってたぞ?」

「あたしもすぐ座って・・・そういえば・・・?」

「そういえば?」



「ぬしちゃん、持ってったー・・・んだっけ?」

「うん」



 ・・・



「あの荷物、3()0()()()()()()と踏んでいたが・・・俺が間違えていたか?」


 ってことは、つまり?


「いや、なんてもんあたしに持たせんのよっ!!殺す気!?ねえ!」

「いや、気にすんのそっちじゃねぇよ!?つーかお前も持たせたろ!」

「いや、そこでも・・・ないんだが」


「え」

「ふぁぃう」



 ったく、どういうこった?この2人にはまだ何かありそうだ。

 まあ、その確認も()に出ればわかるか。



 これからが、少し楽しみだ。 

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― 新着の感想 ―
[一言] ついに物語が動きはじめたんだ。 ニホンを思い出して泣いてしまう咲ちゃんに涙なんだ。
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