『転生』
無限にも思える青い世界は、快く私を迎えてくれる。
動けないくらい疲れて眠った時にこの青い世界に訪れているような、そんな気がする。
『 真名を 思い出すことができたのですね 』
「うん、思い出した」
優しく話しかけてくる、懐中電灯の光を斜めに向けられたくらいに輝いている青い人と出会うのも何度目だろうか?青い月を見た夜は毎度と来ているかもしれない。
この世界は布団の中のようにぬくぬくしていてとても落ち着く。
『 真名とは 精神の鍵であると同時に 記憶の楔を解き放つ鍵でもあります 』
「鍵」
『 記憶を掘り起こせないくらい あなたは忘れん坊さんですから 』
そうだったかもしれない。
“忘れろ” だとか “こうしろ” とか。そう言われて、本当に忘れてしまうくらいなのだから。
でも、今は少し違う。
「私と、咲ちゃんは、生きているの?」
ご飯を食べて、たくさん遊んで、ぐっすり眠る。
それができているのは、生きているからだと教えてくれた。
でも、私は2度死んでいる。
記憶を思い出す前は・・・死んでも生き返られると思っていたけれど、そうではないと教わったから、記憶の戻った今は理解ができる。
これまでに死んでしまうくらいに痛いことがあったけれど、それよりもっと前。
わかば幼稚園で・・・咲ちゃんは。
『 紅葉 あなたは 』
『 あなたは 咲と共に その身を失い魂となりました 』
「死んじゃった」
『 はい 』
ああ・・・やっぱり。
咲ちゃんも、死んでいた。
『 とても儚く 悲惨な一生を不幸で終えたあなたが 哀れでした 』
生きてなんていなかった。
『 真名を根から忘れ 極楽にも 地獄にも送れないあなたの最後の道は 輪廻であるワタシだけ 』
助けることができていなかった。
『 ですが 生きる意思のなかったあなたは 魂の輪から外れ 魂のまま 亡くなってしまった場所に取り残されました 』
守ることができなかった。
『 魂が汚されず せめて 死後の安息所なるように ワタシ達はあなたを わかば幼稚園へと閉じ込めたのです 』
全部、意味がなかったのかもしれない。
『 ですが あなたのことが見えてしまった少女が 永遠に続くはずだった 終わらない安息を変えてくれた 』
咲ちゃん。
ごめんね。
『 何度も 何度も 痛かったでしょう 』
「胸が、すごく苦しい」
『 ずっと ずっと 辛かったでしょう 』
「前が、見えない」
『 紅葉は 頑張り屋さんだったから 』
「そんなこと、ない」
『 大丈夫 あなたは今 生きているの 』
「本当に?」
『 あなた達は ワタシ達の 特別だから 』
こんな気持ちになってしまうなら。
『 だから 泣かないで 』
「涙が・・・止まらないの」
をことぬしのままで・・・いたかった。





