常在戦場はお断り
玄関の前、半長靴を履きながら父は言った。
「歩夢、お父さんはこれからサバゲーに行ってくる」
「しゃばげー?」
あどけない瞳をした少女は、首を傾げなら答えた。
「そう、サバゲーだ。無事に帰って来られるかは分からん。夕飯はステーキが良いなと母さんに伝えてくれ。」
お世辞にも広いとは言えない我が家の玄関。彼は、壁に立てかけてある、少女の身長より少し高い黒のバッグ。そして、少女の身体がすっぽり入りそうな大きいバッグの2つのバッグを手に取り、そう言うのだった・・・。
・・・・・・
・・・・・
・・・
・・
・
「って!ステーキは食い損ねてこそのセリフでしょ!」
突っ込みを入れた矢先、眼前に広がるのは自分の部屋。
「ああ、もう、朝からスッキリしない朝だわー。ふぁー。」
大きな欠伸をしながら、夢で見たよりも背丈の大きい少女は,カーテンを開けに窓辺に来た。
シャーっと子気味良い音をカーテンレールは奏で、少女は朝の陽ざしに包まれる。
「んーっ。今日は快晴!本日は快晴なり!晴朗なれど波高しってね。」
伸びをしながら、気分を整える。
「今日は大学の入学式。遅刻しないようにしなきゃね。時刻は・・・っと。」
時計が映す時刻は『9:25』
「あ・・・。入学式は10時からだったわね。」
「おわったああああああ!!!」
少女は叫んだ。叫んでも時刻は変わらないのに。
「何?敵襲か!?」
夢で見たよりも少し老けたおっさんがドアを蹴破り入ってきた。
「うわーん!遅刻の原因が突入してきた!本当に終わりだよ!」
少女は叫んだ。寝坊した自分が一番の原因なのに。
「まてまて、落ち着け。マイスウィートドーター。こういう時はラマーズ法をだな・・・」
「朝から煩いわよアンタ達!!!」
バズン!カシャ!バズン!
「「うぎゃー!ヒット!」」
正確無比な射撃で部屋は第2の侵入者に瞬く間に制圧されてしまった。
「それで、何の騒ぎなの?」
部屋に入ってきた女性(母)は、ポケットからシェルを取り出し、リロードしながら2人を一瞥する。
「うぅ・・・。ゴーグルも着けてないのに撃ってくるなんて・・・。」
「脚が・・・。脚が痛いよう・・・。」
カシャン
「な・ん・の騒ぎなの?」
正座した2人を前に、母はM870をコッキングしながら問いかける。
「お父さんのせいで、だ・・・大学の入学式に遅刻しちゃうから」
「えぇ・・・。僕が何をしたって言うんだい?」
「うーん、ステーキとパインサラダを間違えた?」
「「「・・・」」」
「と、兎に角このままじゃ入学式に間に合わないの!あー、もう35分!バスで一本だって言っても、20分掛かるんだから無理じゃない!なんで起こしてくれないの!?」
ため息をつきながら母は答えた。
「大学生なら自分で起きれる。子ども扱いしないでって、言ったのはどこの子かしら?」
「そうそう。僕が起床ラッパしてあげるって言ったのに、断ったじゃないか。」
続く父。
「でもでも!限界ラインってあるじゃないの!」
母はこちらを見ながら、ゆっくり近づき、私の唇に銃口を当てた。
「はいはい。困ったちゃんはお静かに。大学の入学式は正式には10:30スタート。10時は開門よ。今から着替えて、朝食を摂りなさい。その後、パパが車で一緒に送ってくれるから。」
「は、はぃ。」
私は急いで支度するのだった。
続きはまったり更新予定。
みんなでサバゲーやろうぜ!