《SS》砂のお城
ちょっとしたお話。
盛大な水の掛け合いをした俺とカルトはユークの涙目の訴えに心苦しくなった。ユークがつくっていたものは街でつくった骨の城だ。それを今度は砂でつくろうとしたのだそうだ。
あのとき、ユークは城造りに参加することができず、つくってみたかったそうだ。そこで時間の空いたこの時間につくっていた。
そしてなんとか形になってきたところで、カルトの【断絶】が直撃してしまい、修復不可な傷ができてしまったそうだ。
ユークがその話をするが、カルトがもう一度、【虚実】を発動することはなかった。カルトに聞いてみると、【虚実】は一つの技に一回という制約があり、もう一度発動させることはできないそうだ。
【断絶】を消す方法は時間経過を待つか、【空虚】で消すしかできないとのことだ。それが事実かはわからないが、できないのなら、もう一度一からつくるしかない。
スキルについて追求するのはマナー違反になりうるので、俺も転移巣については多く語っていない。
しょんぼりしたユークを撫でながら慰める。その間にカルトは湿った砂を集めてきた。ドサッと置いたそれを積み重ね、ポンポンと叩きながら形作る。
カルトは器用なので一人だけでつくってしまいそうだが、それでは意味がないのだ。
「一緒につくろう?」
カルトはユークに誘いかける。なぜかユークは俺の方見てくる。おそらく、俺と一緒につくりたいのだろう。
カルトの隣に脚を曲げて砂浜に座り、ユークを俺のとなりに連れてきた。
カルトが集めた砂で少しずつ造り始めたのだが、砂山が思ったよりも小さく、お互いの手がぶつかり合う。
「俺がこっちやるから」
「いやいや、ここは僕がやるよ」
「いいからいいから。カルトは器用なんだから装飾をつくってよ」
「八雲も器用だよね?」
「そうか?」
「八雲様は器用です」
「ほら、ユークも言ってるよ」
「うーん……なら、俺が装飾やるか」
「うんうん、それがいいよ」
城には城壁があり、凸凹の塀があり、この凸凹の隙間から矢を射ったりするのだが、ここがあまりにも細かすぎて城壁を砕いてしまう。
器用だとしてもこれはなかなか難しいものがあった。
「うーん、難しい……」
「小さいもんね」
「城壁の間とかどうするんだ?」
「そこはほら、外観重視だから」
「それこそ必要だろ」
「うーん、ここは手が入らないな。ユークはどう?」
「だめですね」
みんなでつくるにはあまりにも小さすぎるので、カルトは広げよう、と言って砂をかき集めてきた。それからは特に障害らしい障害はなかった。
「できた!」
「できましたね!」
「これはなかなか、いい出来だね」
見上げるほどの巨大な城は骨を基礎として組み込み、全体の接着には糸を使用した。それにより強度が増し、砂だけの時よりも数倍は崩れにくくなった。
さらに、砂を硝子化するまで高熱の炎で焼くことによって表面はステンドグラスのようにキラキラと輝くようになった。
これは誰が見ても力作と言っても過言ではない。
満足した俺達は時間も時間だったので、ログアウトすることにした。
今度また訪れたときには周りに街をつくろうと決心するのだった。




