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第8話 名付け親

 アイテムを預けたり生存ポイントを預けたりしていると、視界の片隅でフウマたちが何かを撫でていた。そちらに意識を向けると、そこには卵があった。


 そういえばフウマたちにも繁殖を覚えさせたのだった。フウマたちはインベントリから出したばかりの卵を一所懸命に撫でたり魔力を注いだりしていた。


 俺が近づくと、撫でて、と卵を突き出してきた。それに魔力を注ぎながら撫でると、卵を空に掲げて喜んでいた。


 その姿はまるでライオンキングのようだ。フウマたちは俺の子供なのだから、あの卵の蜘蛛は孫ということになるのだろう。


 フウマたちを愛でたい気持ちを抑えて、一旦ログアウトして休むことにした。


 その間はフウマたちに卵の世話や拠点周りの巣の改築を行ってもらう。人数が増えたので、余程なことがない限りは大丈夫だろう。


 再びログインをするとフウマたちは卵を背負ったまま眠っていた。時間的にはゲーム内で5日目になっていた。


 次の日になったということは卵を得ることができるということだ。繁殖のレベルが上がっていたので、卵が二つあった。


 卵を取り出して魔力を与えながら愛でる。戦力が増えるのは望ましいことなのでやれることはやっておこう。フウマたちは睡眠が必要なのだが、俺はいらないのでせっせと拠点周りの巣を改築していく。


 横穴の道は中央だけ通れるようにして、他は糸で覆ってしまう。糸に絡まっていたコウモリは止めを刺して解体する。これは子蜘蛛のご飯にする。


 巨大空洞の方は未だにコウモリが飛び交っていて、なんとかこちらへ侵入しようと試行錯誤しているように思えた。このコウモリ達を全て倒してここに巨大な巣を作るのもありだとおもった。


 識別でコウモリを見てみるとレベルは3~8とまばらにいて、集団で攻められない限りは勝てそうだ。糸で捕まえることが出来ればレベルに関係なく勝てるだろう。


 いくつかのコウモリは横穴の隙間から入ってきていたが、糸に絡まってすぐに捕まえることができた。もはや入れ食い状態だ。これなら安定してレベル上げも子育ても出来る。それに食糧については、ほぼ問題がなくなる。


 時間的にもコウモリの活動時間だったため、巣を破壊する勢いで巣に突っ込んでくる強者がいた。


 糸を飛ばして絡み取り、糸でくるんで生きた状態で天井から吊るしておいた。鮮度も保てるし、いつでも倒すことのできる経験値は価値のあるものだとおもう。


 これは非常食兼子育て用コウモリだ。コウモリを捕らえる合間に卵に愛情という名の魔力を注いだ。繁殖がLv2になったため、最大で6MP注ぐことが出来た。


 5MPと6MPの違いがあるのか今のところわからないが、とりあえず注ぐことにした。朝に近付いてきたのか、段々とコウモリの進撃が少なくなってきた。


「ここは騒がしいけど、食糧には困らないし、いい場所だね」


 捕らえたコウモリは5匹。拠点に持ち帰るのに苦労しない数だ。


 拠点では子蜘蛛たちがまだすやすや眠っていた。


 卵から子蜘蛛が孵るまでは拠点待機することにした。やることは生存ポイントの確認だ。5日目とはいえ、さすがにそろそろ本格的な戦闘をして死に戻りする頃だろう。


 はい、お小遣い10Pだったわ。10万人もいて、こんだけって、どんだけ戦闘してないんだよ。いや待てよ、そういえば学生は夏休みだけど、大人は普通に仕事か。しかも平日真っ只中でゲーム内時間は4倍速だ。


 初日二日目で死に戻りする人数が多い方がおかしいのか。しかもフィールドの広さは1マス1km×1kmだ。その分街も広いのではなかろうか。最悪4日を街探索で終えている可能性だってあり得る。


 だったらむしろ正常なのかな?えらいPMへのハンデに見えるけど、PHの方が不遇な感じがしてきた。街巡りは楽しいかもしれないが、このゲームは魔物側にもプレイヤーが存在する。


 人数差があるとはいえ、レベル差や経験は埋めることは難しい。人数差も俺が持つ繁殖によって埋まることだろう。


 それは置いといてそろそろフウマたちが目覚める時間だ。フウマたちが寝てる間、フウマたちの卵にも俺が魔力を注いでおいた。


 魔力を全く注がないとどうなるかまではわからないが、しないよりはした方が良いと感じた。


「八雲様、おはようございます」


「あ、ルカさんおはようございます」


 ルカさんが耳をぴょこぴょこさせて挨拶してきたので、それに応える。ルカさんも俺とは違い、ゲーム内では睡眠が必要だ。そのため、合法的に寝顔を見ることができる。


「ルカさん、1つ質問があるのですが、いいですか?」


「はい、なんでしょうか?」


「この二つ目の拠点がある場所の近くのコウモリの軍勢はエリアボスかなにかでしょうか?」


「いえいえ、あれは単なるコウモリの群れですよ」


「そうですか……」


 エリアボスじゃないなら、ここはいい狩り場なのだろう。それを聞けたのなら、早速レベル上げに向かおう。あと6時間ほどで卵から新たに6匹の子蜘蛛が生まれるのだから、コウモリ捕獲は最優先事項だ。


「なにかしらのダンジョンで実はコウモリが無限沸きしたりなんてことはないのでしょうか?」


「この世界の魔物は八雲様の子蜘蛛達のように繁殖します。つまり、絶滅させない限りは繁殖し続けます。ですのであのコウモリの群れは減らさない限り増え続けますし、レベルも上がっていきます」


「それはつまり、適度に数を減らして置かないとコウモリの群れに集団リンチを受ける可能性があると……?」


「そうですね。PH側からしたらその枠組みに八雲様も当てはまるのですが、これは立場の違いということですね」


 そういえば5日目にして11匹の群れになるもんな。PH側からしたら堪ったもんじゃない。ああ言えばこう言うとも言われるかもしれないが、俺は増やすことをやめることはしない。


 だってフウマたち可愛いんだもの。


 それに群れた方が安全なのは確実だ。生産に採取は子蜘蛛達に任せた方が時間の効率がいい。食料に問題が出るが、今はコウモリという無数に存在しているものがいるので問題はない。


 そんなことをしている間にフウマたちが起き出した。フウマたちは卵を背中に乗せて前脚を挙げて挨拶してきたので、それを返すと少し嬉しそうにする。


 朝になり、小腹が空いたのでフウマたちを連れて拠点から出る。レベルの問題で第一拠点では勝てない可能性がある、というか勝てないと思う。


 ここはまだ勝ち目のあるコウモリを討伐してレベルをあげることが先決だ。


「そこに吊り下がってるコウモリは止めを刺してから食べてね。それから糸に絡まったコウモリがいたら、捕まえて拠点近くに糸で包んで置いといてくれ」


 指示を出すと天井から吊るされたコウモリに止めを刺して食べる。俺も食べてみた。


 ササミのような味がしていたが、食感はグミだった。もはや何を食べているのかわからなかったが、それとは関係なく満腹になったので、早速コウモリを捕獲しに行く。


 結構な数のコウモリが手に入ったので、子蜘蛛の分は問題ないだろう。もはやおやつ代わりに食べることも出来そうな量だ。


 子育てとコウモリ捕獲をしている間にフウマたちのレベルが上がったので、ステータスを振り分けることにした。


 エリアボスは1体でレベルが上がったが、本来は低レベルを何十匹も倒してから上げるか、少し高レベルを数匹倒してレベルを上げるのだろう。


 これが正常であって、エリアボス周回をしてレベルを上げることはできるが、経験が伴わないのでそれはしない。


 何よりエリアボスとは本来凶暴な魔物であり、気楽に倒せるものではない。気楽にできたのはダメージを食らわないと確信していたからだ。


 なので今はコツコツと繁殖しながらレベルアップをしていくのだ。無理はせずLv10を目指していこう。


 《配下の子蜘蛛のステータス》

 名前:風魔(フウマ)水魔(スイマ)炎魔(エンマ)土魔(ドーマ)

 種族:小蜘蛛(リトルミニスパイダー)

 主君:八雲

 Lv:8(+1)

 HP:121/130(+2×10) MP:156/210

 筋力:14(+3)魔力:20

 耐久:15(+3)魔抗:17

 速度:17(+2)気力:18

 器用:25幸運:10

 ステータスポイント:0JP(-10)

 スキルポイント:35SP(+5)

 固有スキル

【糸生成Lv7(+1)】【糸術Lv6(+1)】【糸渡りLv6(+1)】【糸細工Lv1】

 スキル

【繁殖Lv1】【採取Lv1】【夜目Lv5(+2)】【隠蔽Lv5(+2)】【気配感知Lv3(+2)】【魔力操作Lv5(+1)】【魔力感知Lv1】【思考回路Lv1】【風魔法Lv1,水魔法Lv1,火魔法Lv1,土魔法Lv1】【裁縫Lv2(+1),調合Lv1,鍛冶Lv1,細工Lv1】【解体Lv2(+1)】


 ※4匹のステータスに違いはあるが、とりあえずは同じようなものとする。


 フウマたちの時折卵を撫でる仕草に母性を感じる。あれ?フウマたちって性別どうなんだろう。そういえば知らないね。ステータスにも乗ってないからね。


 オスでもメスでも繁殖で卵を得ることができるから、どっちでも変わらないかな。多少の性格の違いはあるが、そもそも見分けつかないからなぁ。進化でもしたら変わるかもしれない。


「食料確保も終わったし、そろそろ?……お、生まれるか?」


 背中から下ろして卵を持ち上げて撫でていると、卵を蹴破って子蜘蛛が姿を現していく。フウマたちも初めての子供ながらしっかりと面倒を見ている。子蜘蛛の手助けとしては殻をほぐすか取り除くことだ。


 やりすぎは子供のためにならないので、程々に行う。全身出てくると、体を伸ばして首を傾けてる、かわいい。


「うーん、よし。そっちは黒魔(コクマ)でもう一匹は白魔(ハクマ)だ」


 今までは属性できていたが、光と闇魔法はスキルの進化で属性から大きく離れそうな気がするので色にした。その点フウマたちはさほど変わらないだろうと言うことでこうした。



 《孵化した蜘蛛のステータス》

 名前:黒魔(コクマ),白魔(ハクマ)

 種族:小蜘蛛(リトルミニスパイダー)

 主君:八雲

 Lv:1

 HP:60/60 MP:130/130

 筋力: 7魔力:14

 耐久: 8魔抗:11(+1)

 速度:10気力:11

 器用:15幸運: 5

 ステータスポイント:0JP(-1)

 スキルポイント:0SP(-100)

 固有スキル

【糸生成Lv1】【糸術Lv1】【糸渡りLv1】【糸細工Lv1】

 スキル

【繁殖Lv1】【採掘Lv1】【夜目Lv1】【隠蔽Lv1】【気配感知Lv1】【魔力操作Lv1】【魔力感知Lv1】【思考回路Lv1】【闇魔法Lv1,光魔法Lv1】【解体Lv1】


 繁殖のレベルアップは卵だけに反映するのではなく、ステータスポイントにも補正がかかるのか。最大MPの増加が1増えると、ステータスポイントも1増えるのか。地味だけどレベルが上がれば優位になるね。


 子蜘蛛に覚えさせたいスキルはまだまだあったが、今のところはSPが足りないのでこれだけだ。そんなことを考えていると、フウマたちが自らの子を差し出してきた。


「撫でればいいの?え?違う?」


 フウマは手振り羽振り何かを伝えようとしている。その姿がちょっと可愛くて頬がついつい緩んでしまう。


 伝えようとするフウマは必死だ。


「フウマにもあって?スイマにも?エンマもドーマもあるもの?それから、コクマにもハクマにもある?」


 フウマたちにもあってコクマとハクマにもあるもの?なんだろう。そして孫蜘蛛にはないもの?……あ!


「もしかして名前をつけてほしいの?」


 フウマは悲壮感漂う雰囲気から、太陽のように明るく前脚を挙げた。どうやら正解のようだ。名前か、「~ま」できたから分かりやすく「~み」か、「み~」にしようかな。


「先にステータスを割り振るね」



 《孵化した蜘蛛のステータス》

 名前:魅風(ミカゼ),魅水(ミスイ),魅炎(ミエン),魅土(ミドウ)

 種族:小蜘蛛(リトルミニスパイダー)

 主君:八雲

 Lv:1

 HP:60/60 MP:100/100

 筋力: 7魔力:12

 耐久: 8魔抗:11

 速度:15気力:11

 器用:15幸運: 5

 ステータスポイント:0JP

 スキルポイント:0SP(-100)

 固有スキル

【糸生成Lv1】【糸術Lv1】【糸渡りLv1】【糸細工Lv1】

 スキル

【繁殖Lv1】【採掘Lv1】【夜目Lv1】【隠蔽Lv1】【気配感知Lv1】【魔力操作Lv1】【魔力感知Lv1】【思考回路Lv1】【風魔法Lv1,水魔法Lv1,火魔法Lv1,土魔法Lv1】【裁縫Lv1,調合Lv1,鍛冶Lv1,細工Lv1】


 ステータスを割り振った後に名前をつけると、つけられた本人よりもフウマたちの方が嬉しそうにしていたのが印象的だった。

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