第43話 聖骸と邪骸
クナトのステータスは一言で現せば、異常。種族が骸骨暗黒騎士から聖骸の守護騎士になっていた。姿形は人間そのものだが、魔物であることには変わり無いようだ。
くましゃん二人は聖骸の魔術師と光骸の魔術士に、ユークは聖骸の霊魂術師になっていた。
レベルがわかったのは後から来たくましゃんの方だが、それでも35レベルだ。戦力的にも十分だし、文句はないけど、この変わり様にどう反応していいかわからない。
それは子蜘蛛たちも同じだったのか、クナトたちを見て首を傾けていた。子蜘蛛たちに気付いたクナトは「ほっほっほ」と微笑みながら子蜘蛛に近づくと手を差し出した。
その手には木の実があり、それは子蜘蛛たちがいつも口にする蜜木苺だ。不安そうにその手のひらに乗る蜜木苺を見つめるも、クナトの和やかな雰囲気に呑まれて、蜜木苺に手を出していた。
なにかされるかもしれないと警戒をするも、食欲には勝てないのか、その手からとって食べていた。それにはおじいさん心をくすぐられたのか、クナトはにやけが止まらないといったよう様で、終始にこにこと微笑んでいた。
くましゃん二人がそれに参加して蜜木苺を配っているなか、ユークは一人参加できずにいた。その目線は確かに子蜘蛛たちに向かっていたが、手を出そうと、歩み出そうとしているが、どこか不安げで動けずにいた。
「どうした?」
俺はそんなユークが気になって声をかけた。もちろん、気になっていたのは俺だけではない。蜜木苺で餌付けされていた子蜘蛛もそれをやっていたクナトたちも心配そうにしていた。
「俺たちはユークともまた仲良くなりたい。それじゃあ嫌か?」
ユークからは真下にいる俺だったが、目線を合わせるべく、クナトに持ち上げてもらった。
「嫌…じゃない…むしろ…っ」
少しだけつっかえながらも重い言葉を吐き出した。その声は震えていた。涙目になったユークに俺は前脚を差し出した。
「じゃあ俺たちはこれからも友達だ!それでいいだろ?」
「…うん」
ユークは俺の前脚を握った。その手は小刻みに震えていたが、それは次第に落ち着き、ユークの表情も明るくなった。
「あっちで子蜘蛛たちが心配そうにしてるんだ。また一緒に遊んでくれないか?」
「…もちろん」
ユークは子蜘蛛たちとじゃれあいを始めると、うっすらと光の玉が見えるようになった。それは段々と形をなしていき、それは蜘蛛の形になった。光の蜘蛛は子蜘蛛たちと意思疎通ができているようで、追いかけっこを始めたり、蜜木苺を分けあったりしていた。
「あれは…?」
「あれはあの子があの子たちだったときの一部よ」
ユークの光の蜘蛛を目で追っていると、幼女精霊が答えてくれた。それは曖昧なもので俺にはいまひとつ理解ができなかった。
「…どういうこと?」
「あの子は元々屍異鬼という複数個体の塊だった。それをこの私が浄化することで、一人の個体にまで分解することができた。その一人があの子。そして分解されて別れた子たちがあの光の玉、魂ってわけ。あの子が強力で複数の人格を持っていないのは私の浄化力の高さがあってのこと…だから私を褒めなさい!そして崇めるといいわ!」
幼女精霊は丁寧にユークについて教えてくれていたが、ちょいちょい挟む「私すごいでしょ!褒めて褒めて!」という子供らしさが邪魔をして、尊敬よりも可愛さが勝ってしまった。
そして俺は数百もいる子蜘蛛の父親だ。ついつい父親目線で見てしまい、俺は無意識に幼女精霊の頭を撫でてしまった。
しかし、幼女精霊は幼女になったことで大人の対応というものを払拭してしまったのか、素直に「えへへ…」と満面の笑みを浮かべていた。
ユークが楽しそうにしているならそれでいい。ユークはこのまま子蜘蛛たちとじゃれあうので、イベント参加する精鋭を引き連れて連携の確認をしにエリアボスのところに向かった。
付き添いでクナトとくましゃんがどうしてもと言ったので、クナトたちも連れていくことにした。余談だが、クナトたちは俺たちとしゃべるために蜘蛛の言語を幼女精霊から頼み込んで教わったそうだ。
クナトとくましゃんは幼女精霊といたときは西洋に出てきそうな村人スタイルだったが、今はどこぞの騎士と魔法使いのように鎧やローブに包まれている。クナトの鎧には兜と仮面があり、先程までのおじいさん感が限りなくゼロになった。
くましゃんの方は真っ白なローブを装備し、フードと仮面を装着している。こちらも顔が見えないようになっている。ここに聖剣を持った勇者でもいたら、魔王でも倒しにいくパーティーに見えるだろう。
勇者側ではなく、どちらかといえば魔王側の立ち位置なので、勇者を揃えることは難しいだろう。そんなことはいいとして、エリアボスだが、今回も邪精霊樹のエリアボスに行く。
連携も確認できて、魔糸の木杭の素材確保にも繋がる。今のところ木杭の素材としては邪精霊樹の枝が一番丈夫だ。数もそこまで集まってないので、イベントまでにはなんとか人数分以上は揃えておきたいところだ。
「あれ?八雲じゃないか?」
声がする方へ向くとそこには禍々しい真っ黒な骸骨がいた。
「カルトか」
「なになに?ついに八雲も次のエリアに行くことになったのかい?」
「もういってるよ。今日は子蜘蛛たちと連携の確認と素材確保」
「そっかぁ、八雲のところも人数多いもんね。僕もそんな感じだね。ここのボスは僕にとってもいい素材だし、本当にいいところだよ…ところでそこの真っ白な人たちはNPH?」
「いや、NPMだよ」
「さっきからチクチクとダメージ食らっててさ。NPHなら倒そうかと思ってたけど、子蜘蛛が懐いてるから、どっちか迷ってさ」
「そんなに入るの?」
「ん?まぁ、それなりに。でも八雲の知り合いならちょっと手伝ってもらいたいことがあるんだけど、いいかな?」
「俺達これからエリアボスを倒しにいくんだけど…」
「明日のイベントでPHから剥ぎ取った装備半分あげるからさ」
「俺達使えなくない?」
「いや…あー、うん、そんときはポイントにするから!お願い!」
いつもの、いや、リアルのカルトなら男の娘で可愛さ全開なのだが、今のカルトはどちらかといえばホラーだ。真っ黒な骸骨が手を合わせてのおねだり、恐怖でしかない。よっぽど趣味が合う人じゃないとおそらくは悲鳴をあげながら逃げてしまう。
しかし、それについてはクナトと長時間一緒にいるのでカルトをすごく怖いとは言わないが、少しだけゾッとするとだけ言っておこう。
話は戻るが装備についてはいいポイントになるが、今すぐ欲しいわけじゃない。それにポイントはやろうと思えばそれなりに稼げる自信もある。手付かずのアイテムが腐るほどあるので、それを売り払えばいい。
だが、これは友達からのお願いだ。クナトも子蜘蛛たちとワクワクしているが、おじいさんだけあって、孫の年齢であるカルトも可愛がる対象である。後ろの方から「わしに任せなさい!」と興奮しながら言っている。
そこに便乗するくましゃん。すごく断りづらい。それを聞いていたカルトは「いいよね?」とクナトの方を見ながら言っていた。子蜘蛛にあれこれ頼みごとをすることがあるので、カルトも蜘蛛の言語を話せる。
「…いいよ」
「なんかごめんね。今度色々手伝うからさ。多分そろそろあれに到達するレベルだろうし」
「あれ?」
「まぁ楽しみにしとくといいよ。僕はそのためにクナトさんを借りるつもりだからね」
そう言ってカルトはいつものようにいたずらっ子のようににやついた、たぶん。骸骨で表情が掴みにくいのはなんとも難点だ。
「じゃあそろそろ時間もそうだけど、この子蜘蛛たちもソワソワしてるからいくよ。またね、八雲」
「あぁ、またな」
カルトがクナトを連れていくと若干だが空気が綺麗になった気がした。
クナトとくましゃんが抜けた穴を埋めることはできないが、人数が減って子蜘蛛たちとの連携を深められると思えば悪くはない。
それに今回は新しく覚えた魔法を試しながらだ。よっぽど息のあった同士でないと連携がとれないかもしれない。欲を言えばそこにクナトたちもいて欲しかったが、すでにここにはいないので、できないことはしょうがない。
そして俺たちはこの日を無駄なく使い、できる限りの策略と技術を用いてイベントの準備へ尽くした。
そうして俺たちの初めての公式イベントが開催された。
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街襲撃イベントの発動条件
・第一から第三エリアが解放されること。
・第一から第三エリアに存在する魔物の数が100万を越えること。
PHがこのイベントを知る方法
・冒険者ギルドである一定数のクエストが発行され、緊急イベントがいくつか発令される。
・商人ギルドで食糧や武器の値段が高騰する。
・魔物が凶暴化する。
PMがこのイベントを知る方法
・担当AIちゃんのテンションが軒並み上がる。
・担当AIちゃんがこっそり教えてくれる。
・仲良くなったNPMが「そろそろあの時期だな…」などと意味深なことを呟く。
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《主人公のステータス》
名前:八雲
種族:女帝蜘蛛《幼体》
性別:男
称号:【ヴェルダンの縄張り主】【格上殺し】【森賢熊討伐者】【エリアボスソロ討伐者】【女王蜘蛛】【精霊守護者】【精霊樹の加護】【小悪鬼長討伐者】【岩蜥蜴討伐者】【砂塵地虫討伐者】【青牙蛇討伐者】【エリアボス懐柔者】【骸骨暗黒騎士討伐者】【エリアボス略奪者】【狂った邪精霊樹討伐者】【精霊の友】new【聖骸の主】new【精霊樹の救世主】new
二つ名:【悪夢】【首狩り】【妖怪順番抜かし】
配下:子蜘蛛たくさん100匹+α
→Lv42(8)Lv41(30)Lv40(10)Lv39(25)Lv38(3)Lv37(34)+α
配下:
《クナト》聖骸の守護騎士Lv??
《くましゃん》聖骸の魔術師Lv??
《くましゃん二号》光骸の魔術士Lv41
《ユーク》聖骸の霊魂術師Lv??
Lv:42(+2)
HP:830/830 MP:1100/1100
筋力:70 魔力:90
耐久:80 魔抗:90
速度:90 気力:70
器用:90 幸運:50
生存ポイント
所持:35万253P 貯蓄:1903万5890P
ステータスポイント:20JP(+20)
スキルポイント:282SP(+10)
固有スキル
【魔糸生成Lv13→15】【魔糸術Lv8→9】【魔糸渡りLv8→9】【糸細工Lv14→17】【毒術Lv13→14】【糸傀儡Lv1→3】
特殊スキル
【精霊視Lv4→5】【暗殺術Lv2→3】【暗器作成Lv1】【罠術Lv3→4】【罠作成Lv2】【遠距離投擲Lv4→7】【軌道予測Lv3→5】【命中率上昇Lv4→7】【王権Lv1→3】【天網Lv1】
専門スキル
【言語学Lv4】【武器学Lv5】【防具学Lv5】
スキル
【繁殖Lv4→5】【闇夜眼Lv1→2】【隠蔽LvMAX→隠滅Lv1】【気配感知Lv25→27】【魔力掌握Lv5→6】【識別Lv15→18】【風魔法Lv13→14】【魔力感知Lv24→25】【思考回路Lv2】【投擲Lv20→24】【解体Lv25→27】【魔力上昇Lv12→14】【爪術Lv18→19】【水魔法Lv9→10】【土魔法Lv5→6】【闇魔法Lv1→3】【光魔法Lv1→5】【火魔法Lv1→5】




