第32話 家族総出の進化
残りのPH達は遠距離ではラチがあかないと、近接で挑んできた。走って近付いてくるPH達へ糸をばらまく。地面に絡み付くPHは踏み台にされ、切り捨てられる。
俺達は散開して距離をとるが、しつこいPHは木の上にも登ってくる。もはやゾンビの類だ。ここで活躍したのは前脚に砂塵地虫の籠手をつけたクロニアだ。
登ってくるPHを伸びた籠手で叩き落としてく。落ちたPHは地面に張られた糸に絡むか、上から糸で脚を拘束されて吊るされていく。こちらは正面から戦うという意思がないので、いつものことである。
逃げて、罠に嵌めて、煽る。ゲームではわりとある出来事だ。これを卑怯というのなら、魔物相手に装備を着けずに全裸で戦うといい。だって魔物は全裸で装備など着けていないのだから。正々堂々というのなら、そちらが合わせてみるといい、出来ないだろうけど。
その結果がほぼ無傷の俺達と身動きのとれないPHだ。半数ほどは逃げたみたいだが、それも戦術としてはいい選択だ。俺達との戦闘に負ければ、装備品は全て剥ぎ取られるのだから。
剥ぎ取った装備品は市場に流されて買われる。そしてまた俺達に剥ぎ取られて売られる。需要と供給が成り立ってて経済が循環する。良いことだらけじゃないか。
レベルの低い子蜘蛛達に経験値を稼がせてからエリアボス前までの道に糸を張り巡らせておく。半数が帰ってきて不意討ちをくらうのは避けたいので、油断しないようにしないといけはい。
今回のエリアボスの情報は持ち合わせていないので、慎重に事を進めないといけない。また同じように10匹で挑まないといけないので、6周する。
ボスエリアに侵入するとそこには、大きな蛇が待ち構えていた。先手必勝とばかりに口を大きく開けて飛び付いてきた。迫る蛇に対して一斉に糸を飛ばして口を塞ぎ、後ろに放り投げた。
これで蛇の最大の武器である牙を封じたかと思えたが、口を閉じた瞬間に糸がパラパラと落ちていった。どうやらなにかのスキルで解除したらしい。
蛇の顔は少し愛らしくも思え、ちょろちょろと舌を出していた。見た目はマルノミと似ているが少し青っぽい鱗も青と白のグラディエーションがきれいだ。
おっと見とれてる場合じゃなかった。子蜘蛛達には散ってもらい、周囲から仕掛けてもらう。糸が効かないことが証明されたら、長期戦になるだろう。だが、これが口限定ならまだ物量でなんとかなるはずだ。
眼に石化する力を持っているわけでもないので、睨み合っても大丈夫だ。その間に子蜘蛛達が配置につき終わった。指示を出して一斉に糸を飛ばした。
しかし、するすると避けられてしまった。回避力もあるが、鱗に糸が引っ付かないのも原因だと思える。やはり糸は効かないのか。
作戦も切り替えてすぐさま、接近戦に持ち込む、糸を伸ばしながら。飛ばして引っ付かないなら縛り付ければいいだけの話だ。子蜘蛛達は縦横無尽に駆け巡り、エリアボスを困惑させる。
その間に名前を調べると、青牙蛇と出た。確かマルノミは灰牙蛇だったはずなので、このエリアボスは水に特化しているタイプなのかもしれない。
糸との相性はどうかというと火の次くらいに最悪だ。火は燃やされるが、水は溶かされる。もし、氷があったら凍らされ、砕かれるだろう。
予感があったが、見事に予感通りに巻き付いた糸が溶かされていく。硬質な糸にすればいけるが、軟質な糸なら間違いなく溶けている。
蛇のどや顔がムカつく。だからといって手がないわけではない。こんなときの魔法だ。残された物量でものを言わせる。先程まで糸を飛ばしてきた虫けらが魔法を撃ってくるのだ。さぞ困惑するだろう。
蛇も対抗して水を飛ばしてくるが数に負け、ぼこぼこにされていく。レベル差もあるが数も違う。瞬く間に勝利した。
《青牙蛇を討伐しました。》
《称号【青牙蛇討伐者】を獲得しました。》
《PM専用報酬:青牙蛇の滑り台、青牙蛇のマフラー、青牙蛇の鞭、キョテント1つ、生存ポイント1000P,スキルポイント10SP,ステータスポイント10JP》
またよくわからんものが出たと思いつつ解体した。肉が出てきたので、蒲焼きでもしようかと考えている。
ボスエリアから出ると、そこは戦場と化していた。飛び回る子蜘蛛達に対して物量で攻めてくるPH達、何匹かいなくなっているところを見ると、倒されたのかもしれない。
「くそが、殺してやる」
下品な顔で子蜘蛛達に斬りかかるPHの首を暗殺術ではね飛ばす。さらに糸を飛ばしながら近付き、盾でわざと防がせ、上から回り込んで兜と鎧の間に細くて硬質な糸を巻き付けてはねる。
ざわめきたつPHを余所にエリアボスを済ませてきた子蜘蛛達に増援を呼んでもらう。逃げ回る子蜘蛛達に集まってもらい、魔法で牽制をしてもらう。
単独で行動していたPHに近付き、魔糸の木杭をPHの目の前の地面にさして、木杭に糸を引っ付けたままPHの周りを一周する。なんの行動かわからないPHは糸を剣で斬りつけると、糸は切られることなく残り、反動で木杭が地面から抜け、俺もPHの背後に飛んだ。
木杭はPHに絡み付き、俺はPHの背中に引っついた。軽装で地肌が見えていたので、毒術を使いながら噛みつき、即座に離れる。こっちに向かっていたPHには牽制の糸を飛ばし、毒でピクピクしているPHに止めをさす。
糸を剥がそうと集中しているPHに対して至近距離から魔法を放って仰け反らせ、地面に糸を張って寝かせる。
さらに単独で行動しているPHを見つけては機動力と糸の多彩な攻撃で翻弄しながら捕らえるか倒していった。その間にお留守番していた子蜘蛛達がやってきて、PHを逃がすことなく排除することができた。
PHの装備を根こそぎ剥ぎ取って解体すると、フウマ達にここの指揮をとらせて青牙蛇の周回を行った。6周の予定だったが、全員集まったので、折角だからと11周した。
報酬の鞭を嬉しそうに持つクロニアがいたのはちょっとした催しになっている。なぜか両前脚に青牙蛇の鞭を装備し、他全てに砂塵地虫の籠手を着けていたのだが、どこから入手したのだろうか。
最初のPHへの襲撃、青牙蛇の討伐、PHへの逆襲で全員無事ではないがレベル35以上に到達することができた。一番経験値がうまいのはPHなので、襲われたら誰も逃がさず美味しくいただくことが決定した。
拠点に帰り、各々のステータスを確認した。
《主人公のステータス》
名前:八雲
種族:中蜘蛛
性別:男
称号:【ヴェルダンの縄張り主】【格上殺し】【森賢熊討伐者】【エリアボスソロ討伐者】【女王蜘蛛】【精霊守護者】【精霊樹の加護】【小悪鬼長討伐者】【岩蜥蜴討伐者】【砂塵地虫討伐者】【青牙蛇討伐者】
二つ名:【悪夢】【首狩り】【妖怪順番抜かし】new
配下:中蜘蛛100匹
→Lv40(2)Lv39(6)Lv38(26)Lv37(17)Lv35(49)
Lv:39
HP:600/600 MP:990/990
筋力:60 魔力:80
耐久:70 魔抗:80
速度:80 気力:57
器用:80 幸運:40
生存ポイント
所持:0P 貯蓄:1836万5027(+54万6349)P
ステータスポイント:72JP(+10+40+22)
スキルポイント:292SP(+5+40+22)
固有スキル
【魔糸生成Lv10(+2)】【魔糸術Lv6(+1)】【魔糸渡りLv6(+3)】【糸細工Lv12(+3)】【毒術Lv13(+1)】
特殊スキル
【精霊視Lv3(+1)】【暗殺術Lv2(+1)】【暗器作成Lv1】【罠術Lv3(+2)】【罠作成Lv2(+1)】【遠距離投擲Lv2(+1)】【軌道予測Lv2(+1)】【命中率上昇Lv2(+1)】
専門スキル
【言語学Lv4】【武器学Lv5】【防具学Lv5】
スキル
【繁殖Lv3】【夜目Lv28(+3)】【隠蔽Lv27(+3)】【気配感知Lv24(+2)】【魔力掌握Lv5(+1)】【識別Lv15(+2)】【風魔法Lv11(+1)】【魔力感知Lv23(+1)】【思考回路Lv2(+1)】【投擲Lv17(+4)】【解体Lv24(+1)】【魔力上昇Lv11(+2)】【爪術Lv16(+3)】【水魔法Lv9(+2)】【土魔法Lv4(+1)】
みんなのレベルもスキルも上がってよかったと思っていたが、二つ名になんか変なものがあった。【妖怪順番抜かし】?なにこれ?すごい不名誉な二つ名なんだが、並ぼうと思ったら襲いかかってくる奴等が何言ってんだ。
これで心残りなく進化ができる。なぜか新しく生まれたはずの子蜘蛛達が劇的なレベルアップを遂げていたが、努力したってことにしておこう。
まず自分の進化先を確認してみよう。
《進化可能》
・大蜘蛛
・青蜘蛛
・茶蜘蛛
・緑蜘蛛
・灰蜘蛛
・森賢青蜘蛛
・森賢茶蜘蛛
・森賢緑蜘蛛
・森賢灰蜘蛛
《特殊進化》
・精霊蜘蛛
・紫蜘蛛
・暗殺蜘蛛
・投擲蜘蛛
・罠蜘蛛
・***
・***
・*****
・******
思った以上に進化先があった。順番に進化させていくのだが、どの子をどれに進化させようか悩むところだ。まず子蜘蛛達を整理していこう。
俺:八雲
《子蜘蛛》
風魔、水魔、炎魔、土魔、黒魔、白魔(6)
赤魔、青魔(2)
緑魔、茶魔、紫魔、黄魔、灰魔、銀魔、金魔、紅魔、蒼魔、翠魔、橙魔、紺魔(12)
《孫蜘蛛》
魅風、魅水、魅炎、魅土、魅黒、魅白(6)
海風、海水、海炎、海土(4)
風1a、風1b、水1a、水1b、土1a、土1b、炎1a、炎1b、黒1a、黒1b、白1a、白1b、赤1a、赤1b、青1a、青1b(16)
《曾孫蜘蛛》
風無、水無、炎無、土無(4)
風2a、風2b、風2c、風2d、水2a、水2b、水2c、水2d、土2a、土2b、土2c、土2d、炎2a、炎2b、炎2c、炎2d、黒2a、黒2b、黒2c、白2a、白2b、白2c、赤2a、赤2b、赤2c、青2a、青2b、青2c(28)
《玄孫蜘蛛》
風3a、風3b、風3c、水3a、水3b、水3c、土3a、土3b、土3c、炎3a、炎3b、炎3c、黒3a、黒3b、白3a、白3b、赤3a、青3a(18)
《来孫蜘蛛》
風4a、水4a、土4a、炎4a、(4)
整理したらもっと訳がわからんくなったな。これは忘れよう。親の系統で分けた方がいいな。収納箱にある400以上ある卵が孵ったらもっとワケわからなくなるしな。
風系統:14
水系統:14
土系統:14
炎系統:14
黒系統:9
白系統:9
子色系統:14
色系統:12
これならなんとかなるな。進化先は大蜘蛛に使える属性蜘蛛と精霊蜘蛛だな。まずは色系統は大蜘蛛にしよう。それから子色系統は精霊蜘蛛だな。
大蜘蛛に進化させた子蜘蛛達は2mほどになり、蜘蛛の化け物感が増したな。精霊蜘蛛はちょっと大きくなって身体から光の粒が出ていて輝いていた。しかもちょっと浮いている。
彼らは当たり前のように糸の殻をうまく脱出していた。果たして俺にうまくできるだろうか、心配どころはそこである。
次に四属性蜘蛛から2匹ずつ、紫蜘蛛と投擲蜘蛛に進化させた。紫蜘蛛は名前の通り紫色の甲殻を持つ蜘蛛だ。関節の部分だけ黒で他は紫だ。投擲蜘蛛は中蜘蛛と姿は変わらないが、投擲に特化しているため、爪の形が変化していた。
風魔、水魔、炎魔、土魔以外の子蜘蛛達2匹ずつをそれぞれの色の蜘蛛に、2匹ずつを灰蜘蛛にした。青・赤・緑・茶蜘蛛は紫蜘蛛と同じような色の組み合わせだった。
黒魔、白魔以外の子蜘蛛から2匹ずつ色の蜘蛛にすると、黒蜘蛛は関節が灰色で甲殻が黒、白蜘蛛も関節が灰色で甲殻が白だった。
この段階で進化先の隠れた部分が解放された。
《特殊進化》
・精霊蜘蛛
・紫蜘蛛
・暗殺蜘蛛
・投擲蜘蛛
・罠蜘蛛
・色蜘蛛
・蜘蛛母
・女王○蜘蛛
(○には色が入る。)
・精霊守護蜘蛛
・****
残りの子蜘蛛達にも女王○蜘蛛と精霊守護蜘蛛が出たので1匹ずつ進化させると、さらに隠れた進化先が出現した。
《特殊進化》
・精霊蜘蛛
・紫蜘蛛
・暗殺蜘蛛
・投擲蜘蛛
・罠蜘蛛
・色蜘蛛
・蜘蛛母
・女王○蜘蛛
(○には色が入る。)
・精霊守護蜘蛛
・女帝蜘蛛
現段階での特殊進化はこれで手一杯のようだ。フウマ達は女王○蜘蛛に進化させて俺は女帝蜘蛛に進化した。
風系統:14
→紫蜘蛛(2)、緑蜘蛛(2)、投擲蜘蛛(2)色蜘蛛(2)精霊守護蜘蛛(1)灰蜘蛛(2)、女王緑蜘蛛(2)女王紫蜘蛛(1)
水系統:14
→紫蜘蛛(2)、青蜘蛛(2)、投擲蜘蛛(2)色蜘蛛(2)精霊守護蜘蛛(1)灰蜘蛛(2)、女王青蜘蛛(2)女王紫蜘蛛(1)
土系統:14
→紫蜘蛛(2)、茶蜘蛛(2)、投擲蜘蛛(2)色蜘蛛(2)精霊守護蜘蛛(1)灰蜘蛛(2)、女王茶蜘蛛(2)、女王紫蜘蛛(1)
炎系統:14
→紫蜘蛛(2)、赤蜘蛛(2)、投擲蜘蛛(2)色蜘蛛(2)精霊守護蜘蛛(1)灰蜘蛛(2)、女王赤蜘蛛(2)女王紫蜘蛛(1)
黒系統:9
→黒蜘蛛(2)、色蜘蛛(2)精霊守護蜘蛛(2)、女王黒蜘蛛(2)女王灰蜘蛛(1)
白系統:9
→白蜘蛛(2)、色蜘蛛(2)精霊守護蜘蛛(2)、女王白蜘蛛(2)女王灰蜘蛛(1)
子色系統:14
→精霊蜘蛛
色系統:12
→大蜘蛛
進化した俺は心配してた糸の殻からの脱出は子蜘蛛総出で助けてもらったのは言うまでもない。




