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第27話 フレンドしましょ

 味噌汁ご飯という男の悪夢と話していると、マルノミに話しかけられた。マルノミは味噌汁ご飯と違って見た目が大きく変わっていた。2回してないの俺だけじゃないかと思えてきた。


 「八雲、貴方なかなか活躍したらしいわね」


 「実感はないですけどね」


 「それでも楽しめたらいいのよ」


 「そういうものですか?」


 「そういうものよ。また会うかもしれないから、ジンと会ったら一緒に遊んであげてね。あの子、私を仲介しないと友達がなかなか出来ないのよね」


 「人見知りなんですか?」


 「そうとも言うわね。とりあえずよろしく頼むわ」


 「わかりました」


 「そろそろ寝る時間だから、また会いましょ」


 「はい、おやすみです」


 「おやすみなさい」


 マルノミはすぐに拠点の方に向かっていった。その頭の上にはカラスがとまっていたのだが、身動きをしておらず、カクンカクンと項垂れていたので、寝落ちしていた。


 マルノミを見送って振り返ると、味噌汁ご飯が二つに分かれていた。


 「え?分裂?」


 「違うわよ。この子は私の妹のジュリアーナよ」


 「……妹?」


 妹?カレーの話では男のはずなのだが。どういうことだ?名前も女っぽいけど、聞き間違いだろうか。


 「まぁ!おねえさまからそのように紹介をされるなんて光栄だわ!」


 明らかに野太い声を無理矢理高くしたような声が聞こえる。あぁ、やっぱり味噌汁ご飯と同類なのか。


 「ジュリアーナ、貴女も随分活躍したそうね」


 「ええ、おねえさまに戦い方を教えて頂いたお陰ですわ!」


 「今度はこのゲームの楽しみ方を教えるわ!」


 「そ、それは一体どのような!?」


 「ふふ、焦らないのっ。こっちに来なさい、手取り足取り教えてあげるわ」


 「お、おねえさまっ」


 二人のオネェは体をズリズリと引きずりながらその場を後にした。凶悪な二人のスライムを野放しにしてしまうことを後悔するも、あの下心に満ちたオネェの相手をするのも嫌だと、すぐさま見なかったことにした。


 1つ言うとしたらスライムには手も足もないと思う。ただそれだけだ。


 一人、オネェ達がどこかに行ったため、ほったらかしにされたので帰ろうと考えてると、見たことあるけど少し違う兎がピョンピョン跳ねながら現れた。


 「こ、こんばんは」


 「こんばんは」


 おっといつの間にか俺というかカレー達にマスコットの扱いを受けていた気絶うさぎのミントさんじゃないか。


 「ミントさんはどの辺りにいたの?」


 「わ、私はホブゴブリンさんに連れられて手薄な場所の援助をしてました」


 そのわりに俺がいたところでは一度も見なかったのだが、なぜだろうか。ちなみにそのホブゴブリンさんだが、ミントさんの背後でそわそわしていた。


 「後ろにいるホブゴブリンのこと?」


 「あ、そうです。か、カレーさんからは自由に扱ってくれってい、言われたので、遠出するときに肩に乗って移動してます」


 ということは結構前から共に行動してるのかな。配下の移譲でもできるのかな?それだったら今持ってる卵と誰かの卵を交換して育てるんだけどなぁ。


 「名前はあるの?」


 「はい、ティラミスです」


 え?ティラミス?ミントさんはデザートの名前をつけるタイプか。カレーはカレーの具材だったな。俺はコードネームみたいなもの?ジンとカルトからは聞いてないなぁ。


 「か、かわいい名前だね。名前をつけてるってことはミントさんの配下なのかな?」


 「た、多分そうだと思います。ステータス配分も出来ましたし」


 ミントさんは相変わらずおどおどしてるけど、それが移ったのかホブゴブリンもおどおどしてる。配下は主の影響を受けるのか。


 「あ、私そろそろ寝なきゃいけないので失礼しますっ」


 「あぁ、おやすみー」


 「お、おやすみなさいです」


 ミントさんはまたピョンピョンと跳ねながら去っていった。その後をホブゴブリンはキョロキョロしながらついていった。もしかしたらあのホブゴブリンは挙動不審なだけだったのかもしれない。


 さて、知り合いには話終わった。次はフレンドになった人と話してみるか。そろそろ子蜘蛛達も眠くなる頃だし、探しにいくか。


 折角なので村を探検することにした。人の住む街や村には行ったことはないので比べることはできないが、1つだけ言いたいことがある。日本庭園があって日本式の城があるのはおかしい。


 ここしか来たことがないから、いざこのゲームでの街に行ってみたら絶望してしまうかもしれないな。文化の差はきっとあまりにも違うだろう。これだけ森と魔物ばかりがいるんだし、木造か石造りの建物が並んでるに違いない。


 そうそう、ちらっとコクマとハクマ達を見掛けたのだが、豚をチャーシューみたいに縛り付けていたんだけど、あれはなんだったんだろう?初めて見た豚だったけど、豚は豚の味がするのかな?


 色々見回ってみたが一番印象的だったのは転移門が置かれてた広場だね。張り付けにされていたPHがアクセントになっていたよ。人だかりといえばいいのか魔物だかりといえばいいのか見たこともない魔物がいたのであれらはPMかな?


 そんな中真剣な表情で吟味しているカルトがいた。


 「やっぱりこの子はスケルトンにしよう。なんといっても姿勢がよくて骨格が素敵だ」


 「いや待てよ。よく考えてみろ。これだけの美形だ、骨格は確かにいい、だがこれを見逃して骨だけを見るくらいならゾンビにして上位種に育て、完璧な肢体を見るのがいいだろ?俺はそれを進めるぜ」


 カルトに突っ込みを入れたのは身体中を根っこで包まれた人型の女だ。どう見てもPHにしか見えないのだが、言葉がわかる時点であれはPMでフレンドだということが理解できた。


 「それはヒデが寄生したいからでしょ?」


 「お?寄生していいならこっちのと取り換えてくれるのか?」


 「嫌だよ、そんな穴だらけの死体。それも僕があげたやつなんだし、今更こっちの方がいいとか言われてもあげないよ。今回はそれで我慢してよね」


 「ちぇっ、しゃあねぇなぁ。でもこれだけは譲れねぇ、ゾンビにしろ」


 「仕方ないなぁ。まぁこの人の死体はストックがいくつかあるし、これはゾンビにしてあげるよ」


 「ストックがあるなら寄越せよ」


 「嫌だね、これは進化先が複数あったときに造るんだから、ストックは幾つあっても足りないの」


 カルトもだけどヒデっていう人も大概だな。やっぱりPMってヤバイ人しかいないのかな?でもミントさんっていうマスコットもいるからもしかしたら半々かもしれない。


 「ん?八雲じゃないか?どうしたの?」


 死体漁りしていたカルトに気付かれた。


 「俺の子蜘蛛、配下がそろそろ寝る時間だから探してるんだ」


 「そっかぁ、さっき中豚(ミドルピッグ)のたかし君を縛り付けて移送してたのを見たよ。他の子達は帰らせたから入れ違いになったかな?」


 「そうか、ありがとな」


 「なぁ、カルト?そこの蜘蛛がりゅっぐぁ!?」


 「おっと、手が滑った」


 俺は近くに落ちていた首に糸をくくりつけて遠心力の要領でヒデという人型の女に投げ付けた。


 「ど、どこの世界に手が滑って首を投げてくる奴がいるんだよ…」


 女は頬を擦りながら悪態をつける。


 「ゲームでリアルネームを持ち出すのは禁止だから」


 「普通に正論なのがムカつくが…カルトもそうだが、なんでこう容姿がいい奴がPMなんだよ…」


 容姿がいいやつ?カルトは確かだが、他にもいるのか?ユッケは無難にモテるタイプだけど、あいつは容姿じゃなくて性格の良さから来るものだしなぁ。


 「そうだよねぇ、しかもそれが無自覚だなんてタチが悪いよねぇ~」


 「自覚してる奴に言われると腹立つな」


 「やだなぁ、僕は有効活用してるだけじゃないか。でもそれを言ったらヒデだって悪い訳じゃないだろ?」


 「俺はいんだよ、目付きが悪いから」


 「そうやって逃げるのはよくないよ?ほら、隣のクラスに君のファンがいるじゃないか」


 「あれはファンじゃない、変態だ」


 「そうかなぁ?君と目が合う度に潤んだ瞳で肌を上気させているでしょ?」


 「違う、奴は興奮してるだけだ。相手にするだけ無駄だ」


 「またまたぁ~」


 二人の話から察するにヒデは同じ学校の学生ということになる。つまりは少なくとも同じ学校の知り合いが3人いることになる。あ、ユッケがPHに知り合いがいるといっていたし、4人かも。


 「そうそう、ヒデは流れから分かるように同じ学校のクラスメイトだよ」


 「やっぱりそうなのか、それで誰なんだ?」


 「うーん、一言で表現するなら、鬼かな」


 「あぁ、ヒデノリか」


 「っておい!てめぇも持ち出してんじゃねぇか!」


 とヒデに怒られた。確かに俺はNGを出した。しかしこのヒデは肯定的な行為に及んだ。つまりは自分のことならオッケーを出したに等しい。


 「でもヒデは俺の名前出そうとしたじゃないか。それにヒデなら言ってもいいでしょ、ほとんど出してるようなものだし」


 「てっめぇ、はぁ…まぁいいか。もう夜も深いし、あんま夜更かしすんなよ」


 「ひどいブーメランをみた」


 「うっせぇ」


 それとなく二人に挨拶して別れた。さすがにヒデの言う通りだ。俺も少し体がだるくなってきたし、寝ないといけない時間だ。


 そう思いながら拠点までの帰路についた。先程ちらっと見掛けたコクマとハクマ達、そしてフウマ達は拠点にすでに戻ってきていた。そして既に夢の世界に入っている。それはいい、それはいいのだが、森賢熊(フォレストベア)の剥製の前に置かれている豚はなんなのだろうか。


 「ふごーっ、ひっぐ、ふごぉぉおーっ…むにゃむにゃ」


 俺の目がおかしいのかな、豚が剥製の前で気持ち良さそうに糸に包まれて寝ているのだが。しかも豚の鳴き声じゃないということはこの豚もPMだ。え?なんでここにいるの?


 いや待てよ、確かちらっと見掛けたときはチャーシューになってた、じゃなくてチャーシューみたいに縛られてた。てっきりそういう魔物をこの森で狩ってきたのかと思ってた。


 思い返せば確かカルトが言っていた。


 『さっき中豚(ミドルピッグ)のたかし君を縛り付けて移送してたのを見たよ』


 と。聞き間違いじゃなかった。まさにユッケとミントさんパターン。勘違いから起きた出来事だけど、この人も悟りすぎやしないか?なんで平然とここで寝てるの?


 「すいません、起きてください」


 「むにゃむにゃ…ボクは…チャーシュー…でしゅ…」


 「だめだ…起きない」


 俺は起こそうと揺すったが、返ってきたのはまさかの今の状態だ。暗示でもかけられたのか?いやいや、さすがにコクマ達にそんなことはできない。


 「起きて、起きろ、起きてください!」


 最初は優しく揺すっていたがなかなか起きないので、声を張り上げて転がした。


 「むぅ…?ってうおおおおおおっ!?」


 さすがに転がしたのは効果覿面だったようで起きてくれた。でも驚かれるのは少し傷付く。


 「やっと起きた…すいません、うちの子達が縛り付けたみたいで…」


 「あぁ…ん?そうか、そういえばボクは確か蜘蛛さんに囲まれて…寝床に連れてってくれたな…」


 ん?寝床?


 「いやぁ~この糸は触り心地最高だね、ついつい熟睡してしまったよ」


 いつまでも縛り付けているのは悪いと糸を解くと、「悪いねぇ」とお礼を言われた。それにしてもこの人はのんびりしてるな。


 「んー?ここはもしかして蜘蛛さんの拠点かい?」


 「そうですね、うちのハクマとコクマがここに運んできたみたいで…」


 「良いところだね、今度はぜひお昼寝をしに越させてくれ」


 特に怒りもせず彼は()()()、立ち去った。そう、彼は立ったのだ。魔物の豚って立つんだな…。ついつい感心してしまった。


 謝ろうと思っていたのに、それをものともしないのは大人だからなのか?いや、単に悟っているだけなのか?まぁそれは今度話を聞けばいいか。


 皆が寄り添って寝ていることを確認してログアウトした。


 ログアウトしてからまず行うのはトイレにダッシュ。それから水分補給だ。死と隣合わせの長時間ログインは本当に危険なので、今度は控えたい。なによりネットでよく話題にあがるお漏らし問題、俺は絶対にしたくない。もう高一だし、雪や裕貴に笑われたくない。


 それから長時間ログインによる汗を流して遅めの夕食を食べる。テレビではFEOがよく取り上げられるのだが、社会問題として取り上げられるというよりも、人気とシステムがすごいと話題だ。


 第二陣はいつになるのかと議題に上がっていたが、まだリアルでは三日しか経っていないので、どう考えても早すぎる。プレイヤーからしたら11日目だ。それでも早い。このゲームのレベルキャップは公開されていないのでわからないが、PMには40を超えた人もいると思う。


 それでも早い。これだけは言える。でもPM限定の第二陣ならありだな、と思うけどね。長時間ログインの後の睡眠は甘味な魅惑がある。ベッドのシーツは取り替える。なぜなら汗がすごかったから。


 ふと、寝る前に考えた。PM限定の第二陣でPMが増えたら、もっとPHが蹂躙される。と。

雪→カルト、裕貴→ユッケ。

わからなくなったら、読み直してもらえると喜びます。


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