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第3話 生存ポイントと拠点

 ログインするとルカさんは草原でティータイムをしていた。


「もうお帰りになられたのですね、では先程の続きをしましょうか」


「飲み終わってからで大丈夫ですよ、それにあとは糸を生成してみるだけですから」


「むぅ、ではお言葉に甘えて」


 ルカさんがティータイムをしている間に、糸を出す練習をする。


 糸を放出する箇所は手の先だ。出てきた糸は真っ白で光の具合によっては透明にも見えた。


 糸はただまっすぐ放出されるだけでなく、魔力の動きに追尾する。操作は難しいが、慣れれば自由自在だ。


 引っ張ったり持ってみたり色々試した結果、軽くて丈夫だということがわかった。これなら糸だけでも十分戦えそうだ。


 放出した糸は重力の影響を受けないのか、空中を漂っていた。


 糸をこれだけ自由に使えるなら、武器でも作れるんじゃないかと考え、早速取り組んでみた。


 まず芯となる部分を糸を紡いで縫い合わせた。段々太くしていき、先を槍のように鋭くしてみる。それを掴んで地面に突き刺すと思ったように地面に刺さった。


 なかなか良いものができた。これを量産していけば、投げ槍としても使えるな。


「これはこれはまた凄いものを作りましたね」


 唐突に話しかけられて身体がビクッと跳ね上がった。


 自分を覆い尽くすほどの影を作り出した物を見上げるとルカさんが屈んでいた。


「糸が思ってたよりも自由に動かせたんだ」


 それに少しだけ驚いて呆けていたルカさんだったが、すぐに真面目な顔になった。


「これは武器としてアイテム名を登録しておきましょう」


「アイテム名?」


「生産スキルによって作ったものには基本的には固有名があります。それは元々設定された名前がありますが、プレイヤーが創意工夫によって作ったものには名前がありません。なのでこの槍には名前はなく、ただの糸の塊となってしまいます」


 なるほど、確かにこれを識別してみると【小蜘蛛(リトルミニスパイダー)の魔糸の塊】となっている。


 製作者として見ると《名前を入力してください》と表示された。


「うーん、魔糸槍にしようかな」


 魔糸槍品質Bレア度C

 小蜘蛛(リトルミニスパイダー)が丹精込めて作り上げた純魔糸製の槍。


「これは良いものなの?」


「良いものですね。貴族がとても好きそうですよ。アイテムの品質やレア度について説明しますと、それぞれ最高級のS最低級のFがあり、S,A,B,C,D,E,Fとなっております。なので品質は良質でレア度は普通といったところでしょうか。今のところはこれ1本しかないのでここに書かれている価値よりも希少かと思われます」


「これは持ってると狙われそうかな?」


「もし見つかれば狙われますね、ノンプレイヤーからの依頼が殺到しそうな程、綺麗な代物ですからね」


 なんかやばいものをつくってしまった。この槍で狙われる以前に元々PMなんだから狙われるのは当たり前か。


「じゃあこれはルカさんにあげます」


「いいのですか?」


「はい、これならいつでもつくれるので」


「ではありがたくいただきます」


 そう言ってルカさんは槍を受け取るとポーチの中にしまった。あれがPHのインベントリなのだろう。あれ?俺はどうやったら収められるんだ?


「PMのインベントリの使い方ってどうすれば?そもそも装備って装着できますか?」


「メニューと念じてもらえばインベントリがありますので、そちらでアイテムを収納といえば入ります。あとはこの画面にアイテムを押し込めば、溶け込むように飲み込んでくれます」


 おお、開いた。とりあえず糸を入れてみるか。入った入った。タップすれば取り出せるのね。あとは直接手を入れても取り出せるのか。


「基本的にはPMにとって魔物の素材は使い道がありません。加工できるスキルがあれば使えますが、ほとんどの場合はそのまま生存ポイントに変換します。なのでインベントリは大体食料で埋め尽くされます。」


 確かに兎の皮とか渡されても食えんしな。


「中には八雲様のように加工して武器を作れる方もいらっしゃるので、正式サービス開始に伴い、PHに武器などを売ることのできるネットショップのようなものを開設しました。そちらでは好きな値段をつけられ、またアイテムをそちらで購入できるように致しました」


 おお!便利機能だ!これでニート生活できるね!


「この機能でPM優遇なんて言われそうですが、そもそも人数も少ないですし何よりサイズが合わないのでPMには加工スキル必須の買い物となっております」


 それは言えてる。俺の大きさは子犬と同格、されど武器も同じくらいの大きさともいえる。まず持てないもんな。短剣ならぎりいけるかもしれないが。


「生存ポイントの説明をしていませんでしたので、ご説明させていただきます」


 生存ポイントといえばなんでも買える通貨ってことは知っている。一応裕貴から色々と聞いているので多少なら知っているつもりだ。


「生存ポイントの入手の仕方には幾つか存在しています。一つは魔物もしくは人の討伐、二つ目はアイテムの売却、三つ目はPHプレイヤーの死に戻りです」


 PHの死に戻りって言われてもどれぐらい貰えるのか聞いてないな。


「一つ目では魔物の場合はその魔物の強さ(魔物のランク)×種族レベルの生存ポイントがもらえます。人の討伐、プレイヤーの討伐では種族レベル×職業レベルの生存ポイントがもらえます」


「魔物のランクというのはどういった基準で決められるのですか?」


「魔物のランクはアイテムのレア度と同じように、S,A,B,C,D,E,Fのランクがあります。Fなら7…」


 《魔物のランクと生存ポイント》

 Fランク:7

 Eランク:15

 Dランク:30

 Cランク:50

 Bランク:70

 Aランク:90

 Sランク:120

 ※このランクはランク平均の強さの魔物を適正職業レベルいくつで倒すことができるかを基準としたものである。


「…というようになっており、Fランクで8レベルなら56ポイント獲得することができます。ちなみに八雲様は今の段階ではFランクですよ」


 俺はまだなんもしてないから倒されたら生存ポイント7しか貰えないのね。


「二つ目ではアイテムの値段にもよりますが、時価によっても変化します。ちなみにPHの通貨の単位はエルとなっております。1エル=1生存ポイントといったところでしょう」


「PMってその通貨使うことあります?」


「それはお楽しみにしておいてください」


 なんだ、その意味深は。あるっぽいけど、ほとんど使わないんだろうな。


「最後にPHの死に戻りですが、1日に死に戻りしたPHの回数分の生存ポイントをPMに平等に分け与えられます。例えばPMが7人だとして1日にPHが700回死に戻りした場合には次の日に一人当たり、100ポイントが配られます。この1日は現実ではなく、この世界での1日においてですよ」


 お小遣いだな。


「PMの死に戻りを行う場合には所持している生存ポイントを半額失い、復活するには100ポイント必要となります。なのでポイントを持っていなかった場合はここロビーに待機することとなります」


「半額支払って持ってる場合があるんですか?」


「はい、PMには街にリスポーン地点を設定できない代わりに拠点を持つことができます。拠点は初期で5つ設定することができます。拠点には様々な機能が備わっていて、そこに生存ポイントを貯蓄することができます」


「その拠点について詳しく教えてください」


「拠点にはいくつかの機能があります。それは先程説明したリスポーン地点と生存ポイントの貯蓄に、ログアウト時の宿の役目、拠点間の転移、アイテムの保管、フレンドとの待ち合わせなどができます」


 つまりは街の機能を一つにまとめたものだな。


「拠点間の転移とは自分が設置した拠点を転移することができます。それからフレンドとの待ち合わせというのはフレンドになることによって解放される一つの機能です。拠点に招待できるようになります。つまりはフレンドの拠点への転移ですね」


「設置した拠点というのは破壊されることはありますか?」


「破壊されることはありませんし、目撃されないかぎりは場所も特定できません」


「拠点を増やす方法というのは?」


「生存ポイントで購入することと、エリアボスを討伐した際にもらうことができます」


 なかなか厳しい条件だけど、しょうがない。


「あと説明してないことはないとは思いますが、ログインするたびにロビーに来れますので、その都度質問してくれれば、答えますよ」


「そうさせていただきます。あとは隠蔽と気配感知について教えてください」


「隠蔽は自分の気配を隠すことと物を隠すことですね。これは隠れたい、隠したいと思えばできます。気配感知は直感で理解できるので大丈夫だとは思います。ですが今回は真面目に聞いてくださる八雲のために実践してみましょう」


「具体的にはなにをするんですか?」


「かくれんぼをしましょう」


 ルカさんの宣言とともに草原が一瞬にして森林になった。


「まずは私が隠れるので、見つけてくださいね」


 ルカさんが森林に向かって走っていくのを見届けた後、30秒数えて待機する。


「……28、29、30!よし、見付けるぞ」


 気配感知は直感でわかると言っていたので、森林に入って気配がありそう?と思う方向に進んでいく。

 森林というほどだからか植物が自分よりも高く見通しが悪い。それでもなんとなく人がいそうなところがわかったので、そこに歩んでいく。


「なんとなく?こっちかな?」


 そんな風に疑問に思いながら進んでいくと、しゃがんで土いじりをしてるメイドさんを見つけた。


「ルカさんみっけ」


「あら、お早いですね。では次に八雲様が隠れてください」


 ルカさんが秒数を数え始めたので、急いでその場を後にする。身近にあった木の枝に糸を飛ばして糸を登っていく。登り終わったら糸を回収する。


「隠れたいと思えばいいんだな…」


 息を殺して枝に掴まっていると、真下をルカさんが通っていった。


「こちらにいるような気がしましたがいませんね…」


 ルカさんが去っていくのをじっとみつめてた後、さらに気配を殺すことに集中する。それからいくらか時間がたった頃にルカさんの声が遠くからした。


「…さまー、八雲様、見つからないので、出てきてくださーい」


 その声に従って移動する。時々ターザンのように糸を枝に飛ばして揺れながら進んでいくと、ルカさんがいた。


「うまく隠れられましたね。全然見つかりませんでしたよ」


「そうですね、上から見てたからよくわかりましたよ」


「上でしたか、気づきませんでした。これでチュートリアルを終わりたいと思いますが、大丈夫でしょうか?」


「はい、明日に備えてゆっくり休みたいと思います」


「それではまたお会いしましょう。おやすみなさい」


「おやすみなさい」


 長い長いチュートリアルは終了した。ログアウト前にちらっとステータスを確認したが、なかなかいい訓練になった。


 固有スキル

【糸生成Lv2(+1)】【糸術Lv3(+2)】

 スキル

【隠蔽Lv3(+2)】【気配感知Lv2(+1)】【魔力操作Lv4(+1)】【魔力感知Lv4(+1)】

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