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第2話 チュートリアル

「できました」


 《オリジナルステータス》

 名前:八雲(ヤクモ)

 種族:小蜘蛛(リトルミニスパイダー)

 性別:男

 Lv:1

 HP:60/60 MP:80/80

 筋力: 8魔力:11

 耐久: 7魔抗: 8

 速度:14気力:13

 器用:20幸運: 5

 残りポイント:0JP,40SP

 固有スキル

【糸生成Lv1】【糸術Lv1】【糸渡りLv1】

 GMおすすめスキル

【繁殖Lv1】

 選択スキル

【夜目Lv1】【隠蔽Lv1】【気配感知Lv1】【魔力操作Lv1】【識別Lv1】【風魔法Lv1】


【糸生成Lv1】

 1MPで1mの糸を出せる。

 必要MP

 ・糸の太さ:太い2MP・普通1MP・細い2MP

 ・糸の質:硬い2MP・普通1MP・柔らかい2MP

【糸術Lv1】

 糸を自由自在に扱いやすくなる。スキルレベルが上がると、操れる糸が増える。糸の振動から獲物を察知できる。

【糸渡りLv1】

 糸の効果をオンオフでき、糸の上または糸を使った行動時のバランス感覚が良くなる。

【繁殖Lv1】

 スキルレベル分の卵が毎日インベントリに収納される。卵からは子蜘蛛が生まれる。愛情を注げばステータスが変動し、放置すれば自立していく。

【夜目Lv1】

 暗いところでも明るい場所と同じように遠くが見える。

 レベル×5mの場所が見える。

【隠蔽Lv1】

 看破や識別、感知系統のスキルを持たない者から気づかれない。

 攻撃すると気付かれる。

【気配感知Lv1】

 隠蔽などの姿を隠したり気配を消したりした者のうちスキルレベル1以下の場合、気配を感知することができる。

 距離はレベル×5mの位置。

【魔力操作Lv1】

 魔力を操作できる。操作の緻密度が上がるとレベルが上がる。まずは魔力を感じるところから始めないとならないが、このスキルがあると気づきやすくもなる。

【識別Lv1】

 物や魔物の名前がわかる。スキルレベルが上がると詳細がわかる。

【風魔法Lv1】

 風属性の魔力変換の効率が上昇する。


 ここでは6つだけ選んだ。残ったSPは実際にサービスが開始してから不自由になったら使う予定だ。


 項目としてはスキルレベルをあげることもできたが、いずれ上がるものを使ってもないのに上げたところで良さがわからない。なによりもったいない。


「では、スキルの使い方と蜘蛛の戦い方の一例をご紹介します」


 蜘蛛の戦い方というものはなんとGM自らが操作している動画を見せてくれるという。その動画では熊を狩っていた。

 まずは周囲に蜘蛛の巣を張り地面に穴を掘る。そこに蜘蛛の巣を張って上から土をかける。


 熊さんに挑発をしておびき寄せた後、穴に誘導する。穴にハマったら、糸で包んで美味しく頂く。ちなみに味はハチミツらしい。


「と、いうように糸を使った方法が主な狩りです。あとは創意工夫ですので、スキルの練習をしましょう。ここでの練習でスキルレベルが上がることもありますので、真面目に取り組むといいこと尽くしですよ」


 チュートリアルって予定してたレベルまで上げることじゃないんだな。チュートリアルで教えてもらいながらスキルレベル上げられるのか、VRってすごいな。


 まずは糸生成だ。これはMPを消費して糸を作り出すというスキルで1mあたり1MP使う。

 糸の太さと硬さを普通にした場合は2MPだが、糸の質を硬く太くすると1mに4MPかかる。


 糸はどこから出るんだ?尻?それとも手?


「八雲様、糸は出したいところから出せます。糸は魔力でつくっているので要領は魔法と同じです」


「あの、魔法のやり方も知らないのですが……」


「そうでしたそうでした。では魔力の感じ方から始めましょう」


 そう言ってルカさんは俺の頭を撫でながら温かいものを流してきた。


「あ、あのこの温かいものが魔力ですか?」


「もう感じ取れましたか、お早いですね。ステータスを確認してみてください」


 突然頭を撫でられた恥ずかしさから他のことに集中しようとしたら、なんとなく魔力がどんなものかわかってしまった。


【魔力感知Lv1】new

 魔力を感じ取ることができる。


「ありました!魔力感知というのがあります」


「では今度は感じた魔力を動かしてみましょう」


 この温かいものを動かす?大体体の中心あたりでぐるぐるしてる。これを他の場所に移動させる。なんだか殻に囲まれてるみたいで動かないな。


 殻を壊すように早く動かしてみる。ただ流れが強くなっただけか。なら、一点集中で少しずつ外に向かってみよう。すると今度は殻が簡単に破けた。


 魔力を体中に糸を巡らすように伸ばしていく。一方通行ではなく、ちゃんと行き帰りができるように配慮する。これを持続して流動させる。早すぎず遅すぎずただ一定の流れにする。


「……え?どうしたんですか?ルカさん」


 集中しているといつの間にかルカさんに撫でられていた。


「ここまで熱心にチュートリアルをやってくださる方は初めてでしたので、感激しました。撫でているのは八雲さんが思ってたよりも可愛かったからです」


 なんだと……!?こんなにスキル育てられてやり方まで教えてもらえるのに、真面目にやるやつが少ないだと!?


「し、質問なんですけど……」


「なんでしょうか?」


 ルカさんはにこにこしながら俺の頭を撫でる。若干慣れてきたがやはり照れくさい。


「今までチュートリアルを飛ばさずにやっていた人って何人ほどいますか?」


「そうですね……PMの方は皆さん真面目に聞いてくれて熱心に取り組んでますが、PHの方はほとんどが飛ばしてさっさと冒険しに行かれてます。なので何人かと聞かれたら……十数人といったところでしょうか……」


 人外は必ず受けるだろうな。そもそも動くことすらままならないのにいきなり冒険とか無理だし、人と違って周りに同じ種族のプレイヤーがいるかもわからないし、そもそも同じ種族でもプレイヤーかも判別つかない。


 人側は早くやりたいからだろうけど、それにしてもいきなり魔法を打てと言われても出来ないと思うのだが。


「チュートリアル受けないのに魔法って撃てるんですか?」


「撃てますが……本来の威力よりも格段に落ちます。そもそもチュートリアルを受けてもらうこと前提で魔法があるようなものですので、クレームを言われても困ります」


 元々ないものをゲームだからこそ使える超常現象を創造されているのに、それを初めから使える人なんていない。チュートリアル受けないでクレームする人なんているのか。


「救済措置として冒険者ギルドで講習を受けられるようにしてますが、NPCの話を聞かない方も多く、自ら鬼畜コースに脚を踏み入れていってるのでなんともできません」


 VRになってもゲームの根本は変わらないというのに、何をやっているのやら。人工知能を持つから話さなくても理解する、または自分の思い通りになるとでも思っている節がある。


 まずはNPCの好感度をあげるのは当たり前、挨拶や世間話から始めるのが妥当だろう。そもそもこのゲームは最新技術が搭載された次世代型VRMMOだ。態度が悪ければ自分の評価は落ちるし、聞かなければ情報は手に入らない。


 ゲームのコンセプトは『自由な発展』と『自由な進化』だ。知能も学習によって進化していく上、世界も変わっていく。そんな中で自分の思い通りにいくことは、自分で切り開いていった事柄でしかあり得ない。


 これがオフラインで主人公というご都合主義万歳、なんでも思い通りに予定に沿って進んでいくなら、クレームの1つや2ついいかもしれない。ただし、そのゲームについて熟知して欠点があった場合だけだ。


 だがこのゲームに主人公など存在しない。いるとすれば全てのプレイヤー、全てのノンプレイヤーが主人公でこの世界を生きている。


 自分勝手な思想が築くことができるものなんて自分の評価ぐらいだ。この世界で語るならまずはこの世界に則った行動をすべきだ。


「ルカさん、ここまで魔力を操作できたのですが、どうすれば魔法は撃てますか?」


 ルカさんは撫でるのをやめて少し距離をとる。少し惜しいがこれから生きていく世界で重要なことなので真剣に聞く。


「八雲様は風魔法が使えるので、風魔法について教えていきますね。魔法を発動するにはまず魔法を出したい場所に魔力を集中させます」


 ルカさんが手のひらを俺に見えるようにすると、魔力が手のひらに集まってきていると感じた。魔力を見ることはできないが、感覚的に理解することができた。


「こうですか?」


 ルカさんと同じように手のひら?蜘蛛の手の先に魔力を集める。維持するのにも集中力が必要のようだ。


「ええ、魔力を手のひらから放出させて風のイメージをします。イメージが具体的であればあるほど威力も精度も上がります。そのまま撃つこともできますが、スタンダードな方法として『詠唱』をしましょう。詠唱は補助みたいなものでイメージがかたまらないと発動はしません」


 ふむふむ、これを放出して風のイメージをすればいいのか。ん?できたか?なんだか涼しい。


「詠唱は『風球(ウィンドボール)』です。」


 ルカさんの手のひらに魔力が纏まって1つの球状の塊が出来上がった。


「魔法にイメージを組み込むと出来上がった魔力に色がつきます。風なら緑、水なら青、火なら赤といった感じに色彩が浮かび上がるので魔法対策にも役立ちます」


 魔力の色か、ルカさんの魔力ははっきりと緑色に見える。イメージが曖昧な俺の魔力は薄緑だ。イメージ力が高ければ色が濃くなるのかな?


「もしこの風に火を加えるイメージをすればどうなりますか?」


「風と火の属性を持った魔法ができますが、イメージのかたまらないうちから複雑なことはしないことをおすすめします」


 ならやめておこう。まずはこの風魔法を完成させることに力を注ぐかな。


「『風球(ウィンドボール)』」


 ルカさんがやったのを見たからかイメージが固まって同じようなものができた。


「あの、これどうやって飛ばすんですか?」


「それはですね、このように魔力を勢いよく放出すれば遠くに飛んでいきます」


 ルカさんが出していた風球(ウィンドボール)は草原の草を削りながら遠くに飛んでいった。真似るように手先を草原に向けて勢いよく放出すると遠くに飛んでいき、地面を抉った。


「これがスタンダードな魔法の仕方ですが、八雲様は熱心にチュートリアルを受けてくださるので、この世界での熟練者たる私が一番使い勝手の良い魔法の仕方を教えてあげましょう」


 確かにいちいち詠唱するのは恥ずかしい。だとすれば魔法陣を使うとか?無詠唱とか?


「まず魔法とは魔力の放出とイメージによって行われているということは理解しましたか?」


 それに頷いて答える。


「よろしい、つまりは詠唱などしなくともイメージさえどうにかすれば魔法は発動します。なので発動したい魔法のイメージを最初から固めておく、もしくは2つのことを同時に考えることさえできれば、魔法を行うことに集中することができるということです。そこで今回は八雲様には1つのスキルをSPで取得していただきます」


 無詠唱キタコレ!中二病卒業だぁ。


「そのスキルとは【思考回路】です。この段階ではイメージの保存を行うことしかできませんが、いずれ2つのことを同時に考えることができます」


 言われた通りにSPを使用してスキルを取得する。


【思考回路Lv1】

 保存したい知識をイメージとして保存する。保存できるイメージはスキルレベル×10個である。(0/10)


 取得したついでにステータスも確認する。


【魔力操作Lv3(+2)】【魔力感知Lv3(+2)】【思考回路Lv1】new


「取得しました」


「それでは思考回路に風球(ウィンドボール)を登録してください。そうすれば、発動したいときにいつでも発動できます」


 言われた通りに思考回路へ保存してから手の先に魔力を集中させた。

 風球(ウィンドボール)を発動と心の中で唱えると、手の先に風の塊が現れた。それを魔力放出で勢いよく飛ばす。


「おぉ~」


「便利でしょう。これさえあれば戦闘中でも戦術を組みながら行うことが可能になるでしょう。ちなみに先ほど冒険者ギルドでチュートリアルでできなかった方への講習があると教えましたが、このスキルについては一切触れないので、皆さん必ず詠唱することになります」


 なるほど、チュートリアルを受けないから自然とPHの戦闘力が落ちていくのか。それは助かる。


「魔法についてはあらかた済んだので先程中断していた糸生成に移ろうかと思いましたが、長時間のプレイ時間になってきたのでそろそろ休憩しましょう」


 そういえばなんやかんやで結構な時間プレイしてた気がする。


「一応注意の方をさせていただきます。この世界では現実世界よりも4倍の速度で時間が進んでおります。そのため、現実世界で6時間プレイすれば、この世界では24時間プレイしたことになります」


 一応それは悪友から聞いていたので驚きはしないが、ルカさんから改めて聞かされるとなんだかちゃんと注意しなきゃと思える。


「その分疲労も溜まってしまうので、できる限りこの世界で12時間プレイした段階で中断し、休憩を挟んでください。現実世界で3時間とはいえ、トイレや水分補給はしておかなければ、体調を崩しかねません。キリの良いところで休憩を心掛けるようにお願い致します」


「わかりました、現実世界で1時間後くらいにまたログインさせていただきます」


 そう言って俺はログアウトした。


 ログアウト後に時間を確認すると、まだ40分しか経っていなかった。それでも疲れがあったので昼寝をして休憩に入った。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] まぁチュートリアル見る人の方が珍しいよねって
[気になる点] スキル6個までしか取れんのじゃなかったけ?【思考回路】とってるやん。
[一言] 6個しか取得できないはずのスキルを行動取得で増やすのはともかく、SP使って取得するのはどうなのか
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