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『ジルア・ロヘス』〜謎多き英雄の物語〜  作者: T-aiyo
第1章 幼きジルア
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あと9年

「無口…ですか?」


「ええ。元々は違うのかもしれないけど無口ねえ」


 正直、ジルア自身は普段と変わらないように振舞っているつもりだ。実際、ジルアはとても明るい性格をしている。多分、ジルアがそれについて考え込んでいることが多かったので周りからは無口と捉えられたのだろう。


「いえ…ぼくはよく喋る方だとは思う…」


 その返答をうけ、ふうん、と呟くとマイカは話を次に進めた。


「どう?わたしの弟から何か言われなかったかい?」


 ジルアは言われたことが分からず、キョトンとした。その様子を見て、レオンがフォローに入った。


「この方は祖父、団長、つまりバレルの姉なのだ。さっきジルア君は話しただろ?」


「ああ、なるほど」


 ようやくジルアは家族関係を掴み、納得した。そして一呼吸おくと、こう言った。


「9年、9年待てって言われました。あと、才能があるとか賢いとか言われました。けど、もう9年も暮らす場所がないんですけどね」


 マイカは目をつぶりながらジルアの話を聞いていたが、ジルアの話が終わると4回ほど頷いてこう言った。


「確かにあんた賢いねえ。いや、雰囲気ってもんが賢そうだもの。賢さはおいおい証明されてくるとして、本題はこっち。あなたはもう家が焼かれて両親もいないんだって?」


 ジルアは小さく頷いた。胸が締めつけられるようで辛かった。そんなジルアの心境を察しつつも、マイカは話を続けた。


「そこでさ、わたしのところに住まない?さっきバレルからの連絡があってね。ジルア君は今回の騒動で親も家も無くしてしまったから彼の面倒を見てやってくれないかってね。だから、どうかなって。もちろん、学校にも行かせてあげるし」


「ぜひお願いです!」


 ジルアは話の内容を最後まで聞く前に飛びついた。自分の世話をしてくれる人は必要だ。親も家も失っている。なんだかんだいいつつ人の助けがなければ生きられない。そのことをジルアはちゃんと承知していた。


「なら、それでいいんだね?」


 マイカは念を押すようにもう一度聞き返した。ジルアは迷うことなく頷いた。


 ここで立派に成長して、たくさんのことを学んで、9年後真実を知る。そしていつか…ガリア教団に報復の刃を。ガリア教団によってジルアは自分の命以外の全てを失った。だが、人生の目標ができた。ガリア教団に一矢報いて隠された真実を知るという目標が。


「じゃあ、これからよろしくね、ジルア君」


「分かりました」


 ジルアは今日からここで暮らすことになったのだ。マイカはジルアを温かく迎え入れようと考えていた。対してジルアは自分の将来成すべきことについてぼんやりと考え続けていた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「レオン、フィレア、よく聞きなさい」


「「はい」」


 ここはフィレアの入院している病院の一室だ。よく聞きなさいと低い声で言ったのはバレルだった。フィレアはまだ怪我が完治していないのでベッドに横たわっていた。


「まず、何とかあの子を救い出すことができた。良かった良かった」


 バレルは珍しく顔に喜色を浮かべ、笑った。レオンもフィレアの頭を撫でて喜んだ。


「お兄ちゃん、 恥ずかしいからやめてよ」


 フィレアは顔を赤らめて不機嫌そうに呟いた。その和やかな空気がしばらく続き、沈黙が発生した。最初にその沈黙を破り話を切り出したのはレオンだった。


「それにしてもですよ、ジルア君非常に賢いですよね」


「確かになあ」


 そのことにはバレルもフィレアも同調した。あの賢さは6歳児の持つ賢さではない。そう3人とも感じ取っていたのだ。


「さらにあの子は話の途中で敬語を覚えた。只者じゃない」


 バレルはそう付け足した。実際、バレルとジルアが話し始めた時、ジルアは敬語という敬語は使っていなかった。だが、事実ジルアは話を進めるうちに話し方が丁寧になっていったのだ。


「一体どうしたらあんなに賢くなるのかしら」


 フィレアは怪訝そうに呟いた。バレルは首をポリポリとかき、こう答えた。


「もしかしてだが…あの子はただならぬ能力を持っているかもしれぬ」


 ただならぬ能力を持っているかもしれない、その推測に一番食いついたのはレオンだった。


「それって…『加護』じゃ…」


「『加護』………」


 加護、その言葉にフィレアやバレルは首をかしげた。


「『加護』ってあの伝説で語られているあの『加護』でしょ?実在するのかしら」


「だとしたら何の加護なのだろうか」


 フィレアとバレルは次々と疑問点を挙げた。そもそも、この世界において『加護』とは英雄の持つものとして伝わっている。英雄は加護を持つ、というのが常識この世界のなのだ。つまり、もしジルアが加護を持っていた場合、ジルアは伝説に伝わる英雄ということになるのだ。


 レオンは2人の疑問点について特にこれといった反論を持ち合わせていなかったため、まだ確証はないと返した。


「まあ、あるとすれば…『智』ですね」


「「『智』…」」


 『智』ーーすなわち知識の加護だ。この加護を持つものは膨大な知識を得ることができ、幼い頃から大人のような言動をする、と伝わっている。


 だが、レオンの予想に異を唱えたものがいた。フィレアだ。


「確かに、あの子は大人のようだし、知識もある。だけど、子どもと分かる幼さも併せ持っていたわよ」


 うんうん、確かに、とレオンは同調した。たしかにジルアはとても大人っぽく見える。だがジルアには幼いととれるような言動も確かにあった。


 結局、『加護』について明確な結論が出ないまま次の話へと進んだ。


「とにかく、あの子は我々に必要となる。我々の目的のためにカリーの子、つまりジルア君を必ず守り抜かなければならない。気を引き締めていくぞ、いいな!」


「「はい!」」


 レオンもフィレアも元気よく返事を返した。その返答に満足したのか、バレルは鋭い笑みを浮かべて葉巻を服から取り出し、外へ出ていった。

バレルがタバコから帰った後の話


 レオン!お前の戦い方、悪くない!だが、お前はそろそろシスコンを卒業しろ!


ーーバレル・ルーデル


うっ…………


ーーレオン・ルーデル


 フィレア!お前は自分の身を挺する度が過ぎる。もう少し自分の体を大切にしろよ!


ーーバレル・ルーデル


 はい…分かりました!


ーーフィレア・ルーデル


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 これにて一章は終了となりました!次の舞台は9年後、ジルアが成長して16歳になった時の話となります!空白となった9年は私の気が向いた時に完成させます!(ジルア成長中の9年間は物語のメインステージとはならないため)


 これからもどうかこの『ジルア・ロヘス』〜謎多き英雄の物語〜をよろしくお願いいたします!


ーーF-iren

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