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『ジルア・ロヘス』〜謎多き英雄の物語〜  作者: T-aiyo
第1章 幼きジルア
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団長室での談話

 今回の会話率、半端じゃないです。

「……………」


 とにかく、状況が読めない。それがジルアの率直な感想だった。ジルアが自分の名字ーーロヘスについて知っていることはほとんどなかったからだ。そもそも彼自身自分の名字についてさしたる興味もなく、考えたこともなかったのだ。


「何言っているのか分からない、そんな顔をしているな。まあ、君は賢いと聞いている。話を進めていけば君なら理解できるはずだ」


 状況が読めずに困惑するジルアを横目に話を続けようとする老人はバレルだ。ジルア君ならある程度自分の身内について知っているだろうという見立てを立てていたバレルにとっては何も知らないというのは意外な返答だった。だが、そんなことは特に気にせず、一呼吸おき、机に置いてあった水をごくりと飲み干すと彼は話を続けた。


「立ち話は辛いだろう。そこにあるソファに座るがいい」


「分かり、ました」


 ジルアはおどおどしながらソファに腰掛けた。ジルアが腰掛けたのを見て、バレルは話し始めた。ちなみに、今この部屋にいるのはジルアとバレルの二人だけである。


「どこまで話して良いのやら…まあ、さっきの町を襲った輩についてから始めようか」


 ジルアは唾を飲んだ。父と母を殺し、自分の家を壊したのは誰なのか。正直、ジルアは自分の血筋よりもこっちに興味を持っていた。


「あやつらは『ガリア教団』と呼ばれるガリア国教を信仰する集団だ。ガリア国教自体は穏健派中心で活動自体については問題ない。ただ単にガリアの神ガーリアを信仰するだけだ。だがな、ガリア教団は過激派だ。活動に数多くの問題が見られるのだ。その活動の一環に『カルリア人の殲滅』というものがある。ジルア君も我も、フィレアやレオンもカルリア人なのだが、彼らの目的というのはその名の通りカルリア人を滅ぼそうというものなのだ。それゆえ、あやつらはジルア君の住む貧民街を襲ったのだ」


「……そんなことで、ですか」


 ジルアの声は怒りで震えていた。あまりの怒りなのか、上手く自分の言いたいことを表現できていないようだった。


「やはり、言葉がでないか。まあ、あやつらはそうやって人の希望を奪う屑だ。ああ、我々の所属する、あと我が団長を務めるこの組織『インデペンデンス』はガリア教団の駆逐もやっている」


 バレルは概要を無駄なく淡々と話していった。その話を聞いた上でジルアは一つ気になることがあったので恐る恐る聞いてみた。


「だから、ぼくを助けてくれたんですか?」


「その通りだ」


「じゃあ…ぼく以外の人たちも、助けたんですか?もしかしたらぼ、ぼくの偏見かもしれないですけれど…なんか、ぼくを中心的に助けているような…そんな気がしました」


 ジルアの言いたいことはこうだ。ガリア教団がカルリア人、つまりあの町に住んでいる人たちを皆殺しにしたいなら、わざわざ自分に30人もの追手をつけるのか、ということだ。実際、ジルアの避難した広場にもたくさんの人がいたがガリア教団の戦闘員はジルアを執拗に追い回した。ジルアの考えは、皆殺しがしたいなら、子ども一人にそんなに手間をかけるのか。というものだ。


 バレルはその質問を聞くと、目をつぶり、深く頷いた。そして、質問に答え始めた。


「確かに。君は本当に賢いようだ。ジルア君。本当に6歳か疑ってしまうよ。何かあったのだろうか。目の付け所がとても良い」


 バレルはジルアの周囲を見る能力を褒めちぎった。しかし、ジルアは褒められることを全く喜ばず、少し強めの言い方でバレルに言った。


「褒めてくれるのは嬉しいけれど…それより、どうなんですか!ぼく以外の人は、助けたんですか?」


「君は賢い上に勇気も根性もあるとは。将来が楽しみだ。さて、君の質問に答えよう。我々はしっかりとあの町の住人はできるだけ助けた。だが、君の言っていることは間違っていない」


 間違っていないという単語を聞いた瞬間、この部屋に緊張が迸った。ジルアの飲む唾の音が部屋中に響いた後、バレルは大きく息を吸い、話を続けた。


「確かにあやつらの目的はカルリア人の殲滅だ。しかしだな、君、すなわちジルア君の存在を抹消することも目的なのだ」


 ジルアは衝撃の事実を知らされた。驚きのあまり声が出ない。と同時に自分の額から冷や汗が滴りおちるのをジルアはしっかりと感じていた。


「それは…どういうことですか?」


 ようやく口が開いたのは2分後だ。とにかく訳が分からない。ジルアはバレルに詳しい説明を求めた。しかし、バレルは明言を避け、険しい顔でこう言った。


「今の段階では君にはなせない。君が危険にさらされるかもしれないし、君の怒りの矛先が間違うかもしれない。とにかく、君のためにならない。分かったな」


 真実を話すことができない、と言われジルアは呆然とした。何故、話せないのか。それはさっき説明してもらった。危険にさらされるかもしれないから。だが、ジルアは納得できなかった。今すぐ真実を知りたい。たとえ自分の身が保障されなくても。


「ぼくに…ぼくに危険が迫っても構いません!だからぼくに…本当のことを教えてください!」


 6歳の少年とは思えない迫力と真実を知りたいというジルアの探求欲ににバレルは少し驚いた。その後バレルはしばらく目をつぶり、考え込んでいたが、やがてふっと笑い、ジルアにこう言った。


「なるほど。その心構えは先祖譲りか。面白い。さすがロヘス家、といったところだな」


 その言葉を聞き、ジルアはむっとした顔になった。しかし、バレルは構うことなくこう続けた。


「だが、今は本当に無理なのだ。君自身は自分がどうなっても良いかもしれんが、我々は君に生きていてもらわなければ困るのだ。だが、約束しよう。お主が大きくなって物事をもっと理解できるようになった時、必ず真実を伝えよう」


 ぼくは今すぐ教えて欲しいのに。とジルアは内心思っていた。だが、そのことを口には出さなかった。ここまで拒否するのには訳があるのだろう。だが、いつになれば教えてもらえるのかは聞いてみようと思い、バレルに質問した。


「それは…いくつになったらですか?」


 バレルはニヤリ笑みを浮かべ、こう返した。


「そうだな。15歳、あと9年したら真実を教えてやろう」


 9年。その歳月をまだ生きていないジルアにはよく分からない長さだったが、とにかく教えて貰えることが確定したので、ジルアは心からの笑みを浮かべた。


「その笑顔そのままで9年後、ここに来ると良い。またな、ジルア君」


 別れの挨拶をバレルから聞くと、ジルアは深くお辞儀をして部屋を出た。

 そういえば食中毒になったって?作者さん


ーーシアン・サナスート


 現在進行形で倒れております…あ、ここまで読んでいただいて、ありがとうございます!


ーーF-iren

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