拠点の団長室
「ジルア君、ここが俺の所属するチームの拠点だ。ちょっと待っててくれ」
レオンはジルアに拠点の説明をすると、ムアぴょんと飛び降りると、鼻歌を歌いながら拠点の中へ入っていった。
呑気に鼻歌を歌うレオンを見てあの人は復活が早いなとジルアは心の中で思い、改めてレオンの凄さを思い知った。あと、ジルアは待っていてと言われたもののものすごく暇だったので拠点を見上げてみた。拠点と呼ばれた建物はレンガ造りのとても立派な建物で、一般の人から見ればちょっとした豪邸だ。貴族の屋敷のようにむやみやたらと着飾られているわけではなかったが、貧民街てずっと暮らしていたジルアにとって、この施設は人生で見た中で一番大きな建物に違いなかった。着飾られていないとはいってもちょっとした装飾はされているのだが。また、その施設の近くにはなぜか広くて何もないスペースが併設されていた。
ジルアはこの大きな建物をぼんやりと見つめ、自分の世界に入っていたが、やがて建物の中から出てきたレオンの声を聞き現実に戻った。
「んーとな、ジルア君。俺に説明は無理だな。とにかく中に入ってくれ」
説明ができない、という言葉に少々不安を覚えたジルアだったが、とりあえず門に向かって歩き始めた。
レオンが門を開けると、二人の前に受付のような部屋が現れた。この部屋はやたら豪華な黄金の剣やら格式高そうな紋章入りの盾やら並んで飾られていた。
外見に負けないくらい豪華な内装を見てジルアはだす言葉がなくぽかーんとしていた。だが、レオンが受付のところにいるお姉さんの元へ歩いていくのを見て慌ててついて行った。
「あら、レオン、この子がジルア君?」
受付の椅子には茶髪で長く髪を伸ばし、薄く化粧をしたスタイルバツグンの美しい女性が座っていた。
「おう、そうだ。シアンちゃん。この子がジルア君だ。ギリのとこでなんとか救えたから良かった」
レオンは話を続けようとしたが、シアンはそれを無視してジルアに優しい声で話しかけた。
「ジルア君、ここに来てもらったのには訳があるんだけど…私からは説明しづらいわね…まあとにかくバレルさんの部屋に行っちゃって!」
自分がここに来た理由、それをまたしても説明してもらえなかったジルアは少し不満そうに顔をゆがめた。それでも、とりあえず言う通りにしていれば何かわかるかもしれない、それでもわからなかったらはっきり聞いてみよう、と考えジルアは黙ってバレルの部屋へ向かった。
「あ、案内するね」
シアンはジルアがキョロキョロしているのを不思議そうに眺めていた。やがて、ジルアはバレルの部屋がどこか分かっていないからキョロキョロしていると言うことを受付嬢のシアンは察し、部屋までの先導を買って出た。
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「さあ!ここが団長の部屋だよ」
シアンはジルアに部屋の紹介をしながら扉をノックした。すると、中から低く、小さいが覇気のある声で返事が返ってきた。
「うむ、入れ」
「さ、行くよ!ジルア君!ちょっと怖いけどいい人だから」
ジルアはうん、と小さい返事をして部屋の中へ入っていった。後ろからシアンもついて行き、ゆっくりと扉を閉めた。
団長の部屋、つまりバレルの部屋は受付や他の部屋と比べてかなりシンプルな造りをしていた。他の部屋は煌びやかな装飾が施されているが、この部屋には豪華な装飾はされていない。されている装飾といえばバレル用の机の後ろに大きな紋章入りの旗が飾られていることくらいだろう。
ジルアとシアンが部屋に入ってきたのを確認するとバレルは椅子からゆっくりと腰を上げた。そして、ついさっき戦場で会ったジルアを今度は客として扱い、バレルは敬意を込めて改めて挨拶をした。
「やあ、ジルア君。君とは2、3時間前に会ったと思うが自己紹介をしよう。我の名はバレル・ルーデルという。訳あってこのチームのリーダーをしている。『黒鷹』とか『団長』とか呼ばれているからその名前を聞いたら我のことだと思ってくれ」
バレル自身は丁寧に優しく話しているつもりなのだが、威圧は全く消えていない。本人は覇気を消しているつもりなのだが、消していても覇気は残っているのだ。ジルアはそのかすかな覇気に恐怖を覚え、思わず黙り込んでしまった。
「バレルさん!怖がらせちゃダメじゃないですか!この子はまだ小さいんですよ!」
ジルアのおびえを見かねたシアンがバレルに覇気を抑えるように注意を促した。だが、悪びれる様子もなくバレルは言い返した。
「ん?我は全く覇気を放っている気はないのだがね?ダメだったか?」
子ども相手ということをまだ理解せずに覇気を放っていないなどとぬかしているバレル。その様子を見たシアンの堪忍袋の尾がついに切れてしまった。
こんな噂がこの建物には流れている。“怒った受付嬢は誰にも止められない”
噂どおり、怒っている受付嬢の放つオーラは相当恐ろしく、戦闘能力も高く、凄まじく強いのだ。
こんなことがあった。昔、この建物に押し入ってきた盗賊団がシアンを怒らせてしまった。その盗賊団はとても強く、人を殺すことを全く厭わないほど残虐なことで有名だった。そして、彼らがこの建物に侵入した時に在中していたのはは運悪くシアンただ一人だった。盗賊団は今いるのは女一人だと侮り、建物中暴れまわったのだが、その時にシアンの大切にしていた貯金箱を壊してしまったのだ。すると、シアンの様子は一変。さっきまでは部屋の隅で怯えて丸まっていたが、貯金箱を壊された瞬間に立ち上がり、貯金箱を壊した男を殴りつけた。その後もシアンは怒りに身を任せて盗賊団と戦い続けたのだが、彼女が正気を取り戻した時には盗賊団は全滅していたのてある。
その事件以来、シアンを怒らせるととんでもないことになる、という噂が広まり、誰もシアンを怒らせなくなったのだ。
だが、さっきの言動でバレルはシアンを怒らせてしまったのだ。シアンはさっきの優しい雰囲気とは打って変わり、バレルの机を思いっきり叩き、こう言った。
「ちょっと!いい加減にしなさいよ!この子はあんたの覇気に恐怖を覚えてんのよ!あんたが覇気を出してなくてもあんたには潜在的なものがあるのよ!わかる?ねえ?」
シアンの勢いに押され、バレルはかなり困った様子を見せたが、やがて平常心を取り戻し、落ち着いて言い返した。
「わかった、わかったから!だけど一つ言いたいことがある。我の覇気より君の方がよっぽど恐ろしいと思うが」
はっ、とシアンは我に戻った。確かに、その通りなのだ。『黒鷹』と恐れられているバレルの覇気よりもシアンの怒った時の殺気の方が断然恐ろしいのである。我に帰り、怒りを抑えられなかったことにシアンは後悔し、無言でうなだれながら部屋を出て行った。
シアンが部屋から退出し、部屋にはバレルとジルアだけが残った。まだ黙り続けているジルアにバレルは声をかけた。
「改めてジルア君。君には伝えなければならないことがたくさんある。聞き漏らさずによく聞いてくれ。君はロヘス家の血を引く唯一の生き残りだからな」
「えっ?…」
ジルアは唐突に告げられた血筋の話に戸惑いを隠せなかった。ジルアに構わずバレルは話を続ける。
「今は話せないことも多いが、いずれは話すことになるであろう。今話せることは今のうちに話しておこうと思う。君の知らない隠蔽された真実の一部を君に教えてあげよう」
ねえ、いっつも思うんだけどさ、筆者タイトル考えるの下手すぎね?
ーーレオン・ルーデル
な、なんか苦手でして…そのうち書き換えるかもです。と、とりあえず今はこのままで…
ーーF-iren
(レオンそろそろシスコン直して欲しいなぁ)(読んでくれてありがとね!)
ーームア&シュア