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『ジルア・ロヘス』〜謎多き英雄の物語〜  作者: T-aiyo
第1章 幼きジルア
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覚悟の形

「たじろいでるとこ悪いけど、やらせてもらうぜ!」


 レオンの行動は即座に行われた。レオンは片手に短剣を構え、たじろぎ、さらに展開の速さについていけていないローンに斬りかかった。


 レオンはここで殺人をするつもりはない。だからレオンは長剣ではなく短剣を抜いたのだ。長剣だと力の加減が非常に難しい。少しでも加減を誤れば相手の命を奪いかねない。長剣は、非常に便利な武器だが、かなりの危険を伴っている武器なのだ。対して短剣は、加減が簡単で、命を奪う危険性は低い。ローンを殺すつもりのない、殺したくないレオンには短剣は扱いやすかったのだ。


 解説はさておき、斬りかかられたローンはどうなったのか。動揺もあり、さっきまで隙が大きかったローンだったが、彼も武人である。レオンに斬りかかられると、さっきまでのうろたえは何だったのかというような華麗な避けを見せた。


「やりぃ!さすがによけるか!」


 短剣の一撃を避けられたレオンは悔しそうに呟いた。しかし、その呟きが終わる前にはレオンは相手からの反撃に備えて構えていた。


 短剣の一撃を避けたローンはすぐさま自分の得物を手に取った。ローンはフィレアを倒した後は武器を鞘にしまっていたのだ。ローンの得物は太刀。ローンは、レオンを完全に手加減なしで殺すつもりでいるのだ。


「レオン!おまえの構えるその武器は何だ!短剣だろ?やっぱりな!おまえは甘い!おまえには俺を殺せない!だが、俺はおまえを殺す!」


 ローンは旧知の構える武器を見てそう叫んだ。その言葉を受けたレオンはローンに間髪入れず言い返した。


「うるせぇ!俺はおまえを殺さねえ!何と言われてもな!ここで殺人なんてくだらないことはしねえ!」


 今までのレオンのふざけた感じとは違う、心の奥底からの叫びだった。その叫びを聞いたローンは、呆れたようにため息をつくと、レオンに斬りかかった。


「甘い!おまえは甘いんだ!」


 悲壮な覚悟を胸にローンは太刀を振り下ろした。レオンは短剣で応戦する。まともに受け止めていてはどうしようもない。レオンは間合いを詰め、太刀の威力を最小限に抑えた。


 太刀の威力を殺されたローンは、レオンを思いっきり蹴り飛ばした。太刀に意識の八割を向けていたレオンは突然の蹴りに全く対応できず、吹き飛ばされた。その姿を見てローンは言った。


「妹といいおまえといい昔から蹴りに弱いな!もっとも、おまえはあの出来損ないの妹に比べればマシだがな。あの不出来な…」


「黙れ!ローン!おまえが相手でも俺の妹を貶すことは許さねえ!」


 レオンはローンの言葉を遮り、今まで聞いたこともないような声量で怒鳴った。レオンは怒鳴りながら立ち上がり、ローンに駆け寄ると、即座にレオンは短剣をローンに対して振りかざした。ローンはその隙だらけの一撃一撃を難なく避ける。避けながらローンは言った。


「おまえはいつも妹のことになるとすぐ感情的になる。そして、剣撃は隙だらけになる。俺だから分かるんだよ。何年も一緒にいたからな」


 レオンは言葉を返さない。そのまま短剣をローンに繰り出した。レオンはただ短剣を振り回し続けていた。


 ローンは既にレオンの剣筋を読み切っていた。相手の剣の特徴を何振りかで理解する、ローンの素晴らしい才能が最大限に活かされた結果だった。ローンはレオンの剣撃を何度も何度も避け続けた。そして、その時がきた。


 レオンが少し大振りに短剣を振ったのだ。大振りになれば、当然隙が大きくなる。ローンはその隙を逃さなかった。ローンはレオンの大振りの剣撃を後ろに下がって避けると、避けながら構えた太刀でレオンを一閃した。


 その太刀筋は非常に美しく、天賦の才能のものだった。


 レオンはその太刀を受け止めることも避けることもできなかった。太刀の剣撃をダイレクトに胸に受け、レオンは崩れ落ちた。


 その様子を見て、ローンは声を上げて笑った。


「甘い!甘いんだよ!やっぱりおまえは妹のことになると剣撃が疎かになる。そこでおまえが大振りしたタイミングに合わせて太刀を振ればいい。おまえは避けることすら出来ない!はっはっは!」


 レオンは崩れ落ちたまま何も答えない。ぐったりとしたレオンの様子を見てジルアが思わず駆け寄った。


「レオンさん!大丈夫ですか?」


 とっさに動いたジルアをシュアは止めることができなかった。ただ、ここから動くとフィレアが危ないかもしれない。そのような思いがシュアの頭を巡り、動けなかったのだ。


 ローンは突然やってきたジルアに驚いた。狙われている身でわざわざ自分から来るのか、と。


「ジルア!俺の目的はおまえを連れ去ることだ!ジルア・ロヘスを!ついて来てもらおう!」


 ローンはそういうなりジルアの腕を強引に引っ張った。ジルアも抵抗するが、ほとんど無意味だった。ムアはガルの相手をしている。シュアは動けない。レオンとフィレアは行動不能。ついに、ジルアを助けられる者はいなくなってしまった。


 しかし、ジルアを連れ去ろうとしたローンの目の前に立ち塞がったのは瀕死のレオンだった。レオンは出血多量で意識が朦朧としていたが、なんとか根性で地面に立っていた。


「ローン…おまえは俺を甘いと言った…が、俺も生半可な気持ちで戦場に立っているわけじゃねえ!俺は俺なりに…覚悟を持ってんだ!」


 レオンは怒りに任せて声を張り上げた。声を出せば出すほどレオンの命は危なくなるのだが、今のレオンにそんなことは関係なかった。


「るぁぁぁぁぁぁ!うりゃあぁぁぁぁぁ!」


 言葉にならない叫びをあげながら斬りかかる。まるで飢えた獣のように。


 レオンとローンの命を賭けた戦いの決着やいかに。

 ローン…おまえがカルリア人だったら…


ーーレオン・ルーデル


 ああ、レオン…おまえがガリア人だったら…


ーーローン・ホモサピエンス



 2人の関係性はそのうち明らかになります。ここまで読んでいただきありがとうございます。

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