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『ジルア・ロヘス』〜謎多き英雄の物語〜  作者: T-aiyo
第1章 幼きジルア
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救出作戦終盤戦

「お嬢ちゃんは満身創痍の状態。我々30人はほとんど無傷。さあどうやって巻き返すのか楽しみだ」


 別動隊の隊長は勝ち誇ったかのように語った。フィレアは自分の剣を構えて戦おうとしているが、負った傷が深いのか苦しそうにしている。事実、出血も止まっていない。それでもフィレアは諦めようとはしていない。


「あの子はきっと大丈夫。 彼女がきっと助けてくれるはず。問題は私ね…」


「何度も言ったがこれが最後だ。お嬢ちゃんはもう戦えない。素直に投降することを勧める」


 これで2回目の投降の催促だ。それでもフィレアはその催促をきっぱりと断った。


「投降はしない。戦うわ」


「やれやれ、その体で何ができるというのか…別動隊20人はガキを追え。このお嬢ちゃんは残りの者で仕留める。さあ、行こうか」


 隊長の指示によって黒装束の男たちはテキパキと動き出した。指示の20秒後にはジルアを追う20人はすでに駆け始めており、残りの者も各々の得物を構え始めた。


「さあ、かかれ!討ち取れば手柄となるぞ!」


「こっちを早く片付けてジルア君を助けなきゃ!」


 各々が各々の思いを胸に戦いが始まる。フィレアは最後の力を振り絞り目の前の敵へと走り出した。その動きに対応して他の者も動き出した。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 その時、手甲をはめたその若者は完全に勝利を確信した。なぜならあの老戦士の渾身の一撃を少し後ろに下がることによって避けることができたからだ。そう、バレルの剣先はその若者に全くかすりもしていなかったのだ。


「じいさん、もらったぜ!」


 威勢良く若者が叫び、バレルへと飛び掛かった。隙だらけのバレルに殴りかかろうとしたのだ。


 しかし、若者が飛び掛かった時に失われたのはバレルの命ではなくその若者自身の命だった。


「甘いぞ。若造」


 バレルはそう言い捨てると勢いそのままに後ろから襲いかかる3人の男を一閃した。


「我の剣は衝撃波付きだ。忘れるでない」


「そんなの、聞いてないぜ…」


「我は剣を自在に操れるという自負がそれなりにある。我が衝撃波を飛ばすも飛ばさないも自由自在」


 そうなのだ。バレル・ルーデルが『黒鷹』と恐れられるのはただ単に剣術が上手いからだけではない。彼は剣士の中でも相当な腕利きしか使えない剣に属性を乗せるということができるのだ。それも全属性。ちなみに、今回の衝撃波は風属性である。


「さて、茶番は終わりよ。さっさと片付けよう」


 そう言ったバレルが再び剣を乱暴に振り回し始める。その振りに続くように衝撃波が発生する。無数に生み出された風の刃は黒装束の男たちに一直線に向かっていく。


「なんだこれ…がはっ…」


「衝撃波なんか剣で弾き飛ばしてや…ぐふっ…がっ…」


 無慈悲な刃は黒装束の男たちを次々と討ち取っていく。少し余裕のできたバレルは周りを見渡し、ガリア教団第六幹部のアゴランを探し始めた。はっきり言ってバレルは黒装束の男たちには全く興味がない。強くもなければ討ち取る価値もないというのが理由だ。しかし、アゴランは別だ。アゴランは凶悪と名高いガリア教団の第六幹部なのだ。賞金もかけられているためやりがいもある。


「雑魚はどけ。邪魔なだけだ。アゴランはどこだ!」


 そう叫びながらバレルは周りにいる取り巻きを次々と斬り殺した。そしてアゴランを見つけると、その方向に向かって全力で走り始めた。狙うは大将首ただ一つ。それ以外は無意味。これがバレルの考え方だ。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「逃げなきゃ。お姉ちゃんが時間を稼いでいる間に…」


 ジルアは後ろを振り向くことなく山道をまっすぐ進んでいた。フィレアが命がけでジルアを逃したのだ。


「無事でいてほしいな」


 ふとそんなことを考える。しかし、後ろに迫る脅威を思い浮かべるとそんな考えはかき消された。


 そして、その脅威が現実のものとなった。


「ようやくガキを見つけたぞ!」


 追手がジルアに追いついたのだ。そのことに気づいたジルアは恐怖に包まれた。


「フィレア姉ちゃんは…どうなったの?」


 思わずジルアは追手の男にフィレアの安否を尋ねてしまった。すると追手の男は笑い声をあげながらこう言った。


「ああ、あの女か。あの女なら程なく死ぬさ。隊長がやってくれるんじゃね?」


「ああ…ぼくのせいだ…」


 追手の男の言葉を真に受けたジルアは大きなショックを受け、膝を地面に着いた。


「諦めたか?どうだ?投降するか?」


 追手の男はジルアに対して何回目か分からないほど繰り返した「投降」を勧めた。ガリア教団の人間は最後の最後まで投降を進める傾向があるらしい。もっとも、教団の経典にはそんなことは書いてないのだが。


 ジルアはしばらく押し黙り、やがて小さく自信なさげに口を開いた。


「分かったよ…ぼくあ…」


「おいおい、待てよ待てよ。どうせアイツのことだ。諦めんなとか言われたんだろ?じゃあ諦めんなよ!」


 ジルアが投降しようとしたその時、問いかけるような明るい声が聞こえた。その声は追手の男の声ではない。誰のものか分からない謎の声だ。その声の主は続けて何かを語り始めた。


「確かにあんただけじゃあ無理だな。じゃあ俺がやってやるよ!」

 さあさあ、俺がジルア君を助けるからな!次の話でついに俺が登場だ!


ーー最後に出てきた声の主


 間も無く一章終了です!

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