聖女の挺身
短めです。
「お嬢ちゃん、あなたは簡単にはその子を渡す気はないようですね。しかし、簡単には捕まえられないというのは慢心ですよ」
隊長はフィレアの明るい挑発を否定するように冷たく突き放した。しかし、フィレアは自分の宣言を否定されたことが気に食わないのか、隊長の言葉に食ってかかった。
「あら、何の根拠があってなの?その慢心ってのは?」
「背後を怠らぬように…」
隊長の男はケンカ腰のフィレアと比べて非常に落ち着いていた。フィレアが自分に食ってかかってきた時も部下たちに密かに指令を出していたのだ。
「えっ?…背後?」
「死ねぇぇぇぇ!!」
フィレアが背後を確認した時には鉄砲部隊が鉄砲を構えた時に後ろへ下がった4人の男が殺意剥き出しでジルアに襲いかかっていたのだった。
「お姉ちゃん!」
「分かってる!大丈夫、絶対にジルア君は守る!」
殺意剥き出しの男たちが自分に向かって襲いかかってきたのを見てジルアは恐ろしくなって泣き出しそうになっていた。しかし、フィレアの健気な「大丈夫」に励まされジルアは泣く寸前で踏みとどまっていた。
「まずジルア君が安全になるようにっ!ジルア君、しゃがんで!」
「う、うん」
フィレアはそう叫ぶやや否や、一番ジルアに近づいていた男に斬りかかった。ジルアも、フィレアに言われた通りにしゃがんだ。
フィレアの剣はしゃがんだジルアの頭上を通り、ジルアへ斬りかかった男の一人の首を鮮やかに刎ね飛ばした。
「ぐぁ…うぅ」
「しかし、俺らは止められないぜ!」
フィレアが男の首を刎ねたと同時に残りの男たちはフィレアを三方向から囲むように陣取った。そして、三人同時に息ピッタリのコンビネーションアタックをフィレアに打ち込もうとした。
「三人同時はキツイわね…」
フィレアは少し怯えたような声で呟くと、何かを決心したように頷き、行動を始めた。
「ジルア君が安全だったらいいの!なら私なんて…」
すると、ジルアの正面にいた男を斜めに斬り裂き倒した。しかし、残りの二人の男たちを相手することはできない。そして、フィレアは覚悟を決めてジルアに真剣な眼差しでこう言った。
「ジルア君!このまま真っすぐ進んで!そうすれば、あの子…私の仲間が助けてくれるから!」
「でも、それじゃ…」
「行って!」
それではフィレアさんが危ない、と言おうとしたジルアだったが、その声をかき消すように強く「行って」と言ったフィレアに気圧され、無言で真っすぐ走りだした。
「さあ、行きなさい!」
フィレアは悲壮な眼差しでジルアを見送った。しかし、それを気にすることなく二人の男はフィレアに刃を差し出す。。
「お嬢ちゃん、それじゃあ俺らの攻撃をモロ喰らうぜ!」
「そんなこと分かってる!」
「じゃあ、しゃあないな。あばよ!」
二人の男の凶刃は容赦なくフィレアへ襲いかかる。しかし、フィレアはその刃を避けようとはしなかった。そしてそのまま刃はフィレアを突き刺し、彼女の左肩と右太ももを傷つけた。そして、男たちはフィレアにナイフがしっかり刺さったことを確認すると、ナイフを彼女から素早く抜いた。ちなみに、このナイフには返しが付いている。
「きゃあ!ナイフの返しが!うぅ…やっぱり痛い!」
なんと、フィレアは自らの命を呈してジルアを守ることを選んだのだった。しかし、その悲壮な決断を間近で見た隊長の男はフィレアを哀れむようにこう言った。
「お嬢ちゃんのその決意は見事なものだ。しかし、自分は負傷して機動力が落ちた。出血も止まらないだろう。逃したあの子も私の追手の誰かが見つけて捕まえるだろう。そしてお嬢ちゃんも私たちの手によって殺められるのも時間の問題だ。残念だったね」
その残酷な言葉を受けてもフィレアは何も言わなかった。ただ、彼女は何かを願うような目で空を見て、一言こう言った。
「あとは、あの子がジルアを救ってくれるはず…私は…この状況をどうにかしなくちゃ」
I am 受験生
なのに1日二回更新してしまった…
ここまで読んでいただきありがとうございました!