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次の目的地

 翌朝、俺たちは旅立ちの準備をしてイニスカルラを目指す。

 といっても距離は大したことないし、すでに霧も晴れている。元々魔物もほとんど出ない安全な街道ということもあって、特に何事もなく三時間程度でイニスカルラに着く。


 とりあえず俺たちは前回泊まった宿で三人部屋を一つ取る。ステラも長年一座の仲間や護衛の冒険者と共に旅をした経験があり、それは当たり前のことと受け入れていた。


 ということはつまり、異性と相部屋ということに関しては俺だけが意識をし過ぎていたことになる。

 ……うん、恥ずかしいのでなかったことにしよう。


 そもそもこの世界はそうした男女の区分けというものがあまり明確ではないというか、元の世界が厳密すぎたのかもしれない。女性専用車両とかはともかくとして、この世界には女湯すらなかった。

 まあ女湯に関しては概念はあるようだが、魔道具の稀少さから設置が後回しになっているあたり、男女の区分けというのは間違いなく優先順位は低いのだろう。


 まあ何にせよ、これからは簡単には動じないように平常心を心掛けなければならない。

 二人にいじられる隙を見せるわけにはいかないのだから。


「それじゃあ一旦別行動ね。お互いに用事が終わったらこの部屋に集合しましょう」


 ステラは踊り子として所属しているギルドに報告する用事があり、俺たちは魔法ギルドにドラゴンの魔石の買い取り結果を聞きに行く用事があるということで、少し別行動することになった。


 俺はクリスと共に魔法ギルドを訪ね、中に入るといくつかある受付のひとつにアウルの姿を見つけた。


「あら、もう来たのね」

「一応四日という話じゃったからな」

「それで、ドラゴンの魔石はどうなった?」

「……結論から言うと、これはうちでは買い取れないわ」

「買い取れない?」

「やはりそうなったか」


 買い取れないという言葉に疑問符を浮かべた俺に対し、クリスはそれを予想していた雰囲気だった。


「うちは比較的大きい方だけど、所詮は魔法ギルドの一支部でしかないのよ。だから予算には限界がある。もちろん研究員たちは欲しがったけど、動かせる予算全てをドラゴンの魔石に回してしまったら他の研究が回せなくなるの。ドラゴンの魔石を何に使うかというはっきりした目的もない現状の総合的な判断として、今回はドラゴンの魔石を買い取りを見送ることになったわ」

「それなら買い取り価格が少し安くなっても俺は別に構わないけど」

「そういうわけにもいかんのじゃ。魔石の取引レートは全世界で共通のものになっておって、それから外れた価格での取引は禁じられておる」


 それは魔石の買い占めなどによる独占を防ぎ、平等に流通させるために制定された条約なのだという。


「しかしそうなると、買い取ってもらえないドラゴンの魔石は持ち腐れだな」

「まあそう急くな。アウルはうちではと言っておったじゃろう?」

「そうね。うちでは無理だけど、ヴェリステルにある本部ならそれを買い取ってくれるわ。というかすでに本部には話を通してあるのだけどね」

「さすがオカマは手が早いのう」

「やだもう、あまり褒めないでったら」


 え、今のクリスの言葉って褒め言葉だったのか?

 ……いや、アウル本人が喜んでいるなら何でもいいか。


「ヴェリステルという名前は、どこかで一回聞いたような……ああ、ラドーム村に向かうときに、霧を迂回する場合のルートか」

「うむ、さすがよく覚えておったな。ここから東にある、徒歩では早くとも五日以上、馬車でも一日以上かかる街じゃ。ヴェリステルもイニスカルラ同様どの国にも属しておらん特殊な街での、別名学園都市とも呼ばれておる」

「学園都市?」

「あの街は世界中から優秀な頭脳を集めて、様々な学問を発展させることだけを目的に存在しているのよ。そうして得られた知見は全てを包み隠さず全世界に公表するという条件で、どの国からも独立を認められているというわけ」


 アウル曰く、学問を志す者全てが、その街で研究を行うことを人生の目標に掲げていると言っても過言ではないらしい。


「魔法や魔道具のみならず、普通の道具や料理、果てには装飾品や衣服といったものさえ、この世界における新しいものはほぼ全てヴェリステルから生まれておるのじゃ」

「へぇ、凄いんだな」


 そこまで来ると学問どころか、この世界の文化の中心地とさえ言えるだろう。


「そういうこと。というわけでドラゴンの魔石はこのまま返却するから、悪いんだけど自分たちでヴェリステルの魔法ギルド本部まで運んでもらえるかしら。話はつけてあるから、買い取りはスムーズにいくと思うわ」


 まあそういうことなら仕方がないだろう。アウルたちのイニスカルラ支部に何のメリットもないのに、魔石を立て替えて買い取って輸送してくれなんていう無茶が言えるはずもない。


 俺たちはドラゴンの魔石を受け取ると、色々と対応してくれたアウルに礼を言って魔法ギルドを後にした。


 何にせよ、とりあえず俺たちの次の目的地は決まった。


 ――ヴェリステル。


 学園都市とも呼ばれるその街は一体どんなところなのだろう。そんな風に少しだけ胸を高鳴らせ、俺は次の旅に思いを馳せるのだった。

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