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蛇足な猫足

奇妙なものは不思議だから良い。

解明する必要はない。

私は深夜の街をゆらゆらと徘徊していた。


酒も飲んでいないのに意識が呆然としている。

勿論、この外出に目的などはありはしない。


入り組んだ路地に侵入すると、3本足の猫に遭った。

猫は此方を睨んでジジジと唸っている。


「なんだお前。厚かましいやつめ。」


初めは恐ろしく感じたが、良く見れば意外と愛くるしい。

機械のように同じ姿勢で唸り続けている。


「ええい、ままよ。」


思い切って彼の首を撫でてみた。

意外にも落ち着いたので、

恐怖を抱えながらもその猫を持ち帰ることにした。


「ギャギャギャ。」


そう言って腕から逃れようと突然動き始めた。

しばらくは大人しく腕に収まっていたが、何かを感じ取ったようだ。

そうして、迷いもなく、鋭い牙で私の腕を噛んだ。

両手の小さな爪を振り回している。


「これは危険だ。」


たまたま持ち歩いていた包丁で首を貫いた。

ココロガイタイ。


それにしても毎日研いでおいて正解だった。

日々の努力の尊さを思い知る。


処理に悩んだが、埋めるより食べた方が有益だと何故か確信した。

調理方法は知らないので、釜でじっくり煮込んで喰ってみた。

名誉のために言うが、私は別にお金に困っていたわけではない。


驚いたことに悪くない味をしていた。

その晩はお腹一杯になったので満足して寝た。


翌朝、起きて鏡を見てみると、私の足は3本になっていた。


困ったことにそれは以前から私のものであったかのように馴染んでいた。

どうしたものかと悩んだ挙句、私はそれを切り取ることにした。

やはり不要なものは間引く必要があるだろうと考えたからだ。


「ところで、どれが三本目の足だろう。」


こうなってしまえば意外に解らないものだ。

結局適当に1本選んで切り落とした。


切断した足を肩に担ぎ、散歩をすることにした。

この足の処分の仕方は私にはわからない。

答えを知りたかった。


しばらく歩くと、厳かな神社が私の前に現れた。

左右の門にいらっしゃる仁王は異様な目付きで私を睨む。

咎められているような気持ちになった。


「ジジジ。」


気付けば私も彼を睨みながら、唸り声を上げていた。

これは私が発している声なのか。

昨日の猫のような声であった。


相手は何も答えない。

このままでは埒が明かない。


「そうだ。」


私は思いついたかのように、王のお尻に腐ったその足結びつけてみた。

そして、三本足になった仁王をまじまじと見つめる。


「あなたが私を食べたからだ。」


気付けば私は叫んでいた。

それが本当なら3本になっても仕方がない。

私は愉快な気持ちで帰路に就いた。

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