chaos, cosmo, meteorite
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彼女は前髪を切って青いプラスチックのバケツに叩きつけた。
家から持ち出した新聞紙を松明のように折り曲げて着火した。
最初は小さな紅色であったが、次第に黄色く刺激的な赤に変容した。
メラメラと燃える炎をバケツに落とした。
髪の毛の量は多かったが新聞紙を投入してからは炎で判別は出来なくなった。
「あなたも散髪するの。」
そう言ってフードを被った彼女は私に食用鋏を手渡した。
恐怖より不思議な感情が僕の心を支配していた。
「この行動に何の意味があるのかな?」
僕は声が震えないように、感情を隠すように囁いた。
彼女の眼は見えないが口元が緩んだように感じた。
「さあね。この行為は何かを成す為の行為ではないわ。」
海岸の夕日は遠くに沈んでしまい、重たい夜が訪れようとしていた。
海と山の輪郭も辛うじて識別することができる。
「意味は基本的には後から附いてくるものなのよ。この行為によって生まれるものを私は見てみたいの。」
彼女は普段は普通の女の子で、悪目立ちはしないし勉強もそつなくこなしていた。
だた、月に一回は不可解な行動を起こす。
一度たりとも真相はわからなかったが、彼女は満足しているようだった。
「僕をいつも誘うのは何でなのかな。学校で君とはほとんど話もしないのに。」
「話さないからよ。普段の仲間と非日常な行動は自分の中で辻褄が合わないの。」
僕は呆れてしまったが、この際に思いっ切りやってやろうと思った。
後ろに振り返り、ズボンを下した。
陰毛をバッサリと切り落としバケツに慎重に入れた。
もちろん前を向く頃には服装は綺麗に整えた。
「別に暗くて見えないから気にしなくてもいいよ。」
無言の僕に彼女は怒る様子もなくそう言った。
毅然とした彼女の話し方に僕は少し恥ずかしくなった。
すると彼女は意味不明な英語が印字された手提げ袋から線香花火の束を取り出した。
5束くらいはあったので、全部で50本くらいはあったように思う。
「まさか一気に火をつけて勝ち残りレースでもするのかい?」
「Youtuberでもないのだからそんなことはしないわ。」
右手に握った束を纏めて火の中に投げ込んだ。
ばちばちと中で弾けるような音が聞こえる。
海の魚達もきっと僕たちの行為を奇異な目で眺めているに違いない。
人間の日々の生活自体も彼らにとっては理解不能だろうが。
僕は覗き込みたい気持ちを抑えて彼女に聞いた。
「何が見えるかな。」
「宇宙じゃない?真っ赤な宇宙に黄色い小さな星々。」
異様に高まった僕の気持ちをよそに彼女は淡々としていた。
僕が歩みを進めた瞬間に彼女はバケツを持ち上げ、海に向かって走り始めた。
「ははははははははは。」
バケツの曲がった取っ手を両手で持ち自分を中心にぐるぐる回り始めた。
そして、砲丸投げのように海面へと放った。
巻き散った火の粉は数秒間は灯ったまま、ごぽごぽとそこへと沈んでいった。
魚にとっては隕石に見えたに違いない。




