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短編集『脈絡なき雑多集団の概観は如何に。』  作者: 槇河 しゃち


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技術的特異点2

真理に意味はない。

それにとっての意義が重要。

目の前に動物の死体が胸腹部を開くように解体され台の上に載せられている。

部屋に搭載された幾つものアームがそれを丁寧に処理していく。


一つ一つ剥がされていく爪の一つが床に落ちるのが見えた。

しかし、義手はそれすらも見逃すことなく広い上げた。

除去された臓器、骨や筋肉は1mgであっても無駄にせず分別収納されている。


我々はこの動物の生命がエネルギィに変換できることを発見した。


全く持って偶然の産物であったがこれを利用しない手はない。

残念ながら、我々の繁栄も頭打ちとなった現在では資源の枯渇に困窮している。

節約や再利用を促すも進展した技術に資産が追い付いていないのだ。


したがって、とある鬼畜によって行われた残虐な行為ではあったが、

エネルギィの新たな回収方法を開拓できたのは行幸以外の何物でもない。


あとは如何に効率的に生産性を上げるかだ。


「この個体からの抽出量はどれくらいになる?」


「100hmですね。」


想定していた量よりも遥かに少ない。


「個体差はやはりあるようだな。」


「熟成と言えばニュアンスが異なるかもしれませんが、おそらく年を重ねるほど貯蓄量は指数関数的に増量すると考えます。」


後にエネルギィ回収率に個体差があることが判明した。

年季が入ったものほど良い。

それならば母数を増やし、少しでも長く生存してもらう必要がある。


「身体的耐久度は何年ほどになる?」


「この生命構造ですと、どれだけ調整しても100年ほどが限界でしょう。」


「逆に言えば100年までは延命は可能であると。」


この生き物を100年生かす方法を次に考えることとなった。

まずは環境と適切な食事を与え、意識をなくした状態で管理してみた。

しかし、体の条件は悪化していないにも関わらず、不思議にも彼らは死んでいった。

身体だけでは生命を維持することは困難であるようであった。


次いで開発されたのは動物の脳内に仮想の現実を埋め込むものだ。

自身が生きている環境であたかも生活しているように意識に錯覚させる。

もちろん、身体的な管理は我々が行った状態でだ。

同種で争われて数が減りでもしたら勿体ない。

無駄な意識は取り除くに越したことはない。


結論から言えば、これが上手くいった。

錯覚でも良いから同種との関係構築をさせることが身体的生命維持に加えて必要な要項であったわけだ。

こうなってくれば後は簡単で、大量に生産していくだけ。


まずは13億の脳をハッキングし、仮想現実を脳内に埋め込んだ。

実質的に彼らは脳死状態になっているが、身体は脳内の仮想で生きていると勘違いしている。

続けて工場で量産したカプセルの中で生命維持の管理を続ける。

管理費よりも熟成後のエネルギィの方が高くつくことは計算されているので心配は不要だ。

そして、いよいよ100歳近くになれば生命を変換する。


全ての進捗は順調であるように思えた。


しかし、ここで一つだけ問題が残った。

それは生命が消えた後、体内のエネルギィが急速に低下するということだ。

消失していくエネルギィを無駄にはしたくない。

なるべく速く材料を回収する工夫は施行したが速度には限界はある。

新たな代案を求めた。


「死ぬ前に解体を始めれば良いのではないでしょうか。」


「なるべく生の直前まで生命を維持し、死にそうになったら回収を開始する。」


「その臨界を研究できれば効率はさらに上昇しますね。」


悪くはない提案であった。

我々の研究はそれからは人間の死の見極めに集中することとなった。


多くの月日が流れた。


しかし、どう管理しても死の予測は成功しえなかった。

体液量、筋肉量、性別、人種、年齢。

様々な項目を調整し何通りも挑戦したが結果は同じであった。


さっきの老人も予測よりも早期に沈没した。


そもそもエネルギィとなっているこの未知の資源は何であるのか。

そして、その消失はどういった理屈で行われているものなのか。


課題はまだまだ残されている。

我が同胞よ、健闘を祈る。


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