今生対戦Selfish
どれだけ走っても自分の体はついてくる。
自身とは逃れならない因果、鎖、愛。
衝突し合う剣戟が響き渡る。
数千名と数千人の戦争は煙にまみれ、怒声に溢れカオスな空間を創造していた。
「怯むな、進めー!」
私の言葉に呼応して軍勢が進撃する。
私は姿も見たことのない彼女と争いを続けてきた。
この戦争は生まれ落ちた瞬間から義務付けられていた。
かの国を打ち取らなければならない。
「正義は我が手に。」
それはきっと相手も同じ。
この大戦の真の意味は既に錆び付いていた。
誰もが曖昧なまま死のやり取りをする。
私は国紋が描かれた巨大な旗を両手で掲げる。
大袈裟に左右に大きく振る。
布が風の抵抗を受けて棚引く。
「進撃あるのみ。平和を与えるのは、神ではない。自身で掴み、齎すものだ。」
群衆の蠢くような歓声が上がる。
恐らく彼らは私の声など聞こえていない。
異様な雰囲気や大きく揺れる旗に、彼らは心臓を叩かれている。
私は馬に乗って走り出す。
戦場の中心に一気に殴り込む。
360度、あらゆる方面から飛んでくる弓矢を長剣で斬り捨てる。
左手の手綱で馬に活を入れる。
「ははははははははははははは。」
私は笑っているようだ。
こうなると自分は何もわからなくなる。
戦いに特化した自我が台頭する。
巻き上がる煙は強風に流されm一気に視野が明瞭になった。
・・・。
馬に跨る大層な装備の騎士が対峙していた。
胸には特別なエンブレムが輝く。
「やっと出会えたな。」
呼応するように相手は槍を点に掲げ、こちらを睨んだ。
「ああ、お前を亡ぼすものだ。」
そして、戦いの火蓋は落とされた。
彼の高速で剣戟を交わす。
剣への衝撃は凄まじく、振動が脳まで届いた。
息つく暇もない。
・・・強い。
一見乱雑に攻撃を入れているように見えて、こちらの動きに呼応するように槍を差し込んでいる。
形勢は明らかに私に不利な状況にあった。
「だが、、、私は負けないっ。」
瞬間、相手の懐に潜り込む。
槍の弱点は近距離だ。
ここなら、有効な攻撃を放てないはずだ。
「これで、終わりだ。」
心臓一突き狙って、両手で剣を振るう。
・・・。
地面に大量の血が流れるが見える。
顔を上げて、正面を見る。
・・・剣先は届いていなかった。
「すまないな、お前の負けのようだ。」
私の首に短刀が刺さっていた。
隠し持っていたか。
潜り込まれたことに気づき、槍を捨てたのか。
「非常に残念だ。」
私の仮面が割れて落ちる。
そして、膝から崩れ落ちた。
成すすべなく仰向けに倒れる。
相手はゆっくり鉄仮面を外した。
その表情は涙に濡れていた。
「なっ。」
覗き込んでくる女の顔は私に酷似していた。
いや、私以外の何物にも見えなかった。
「お前もまた俺だったのか。」
理解できない私に対して、彼は冷静な声色だった。
「俺は俺自身と何百回も戦っている。今回こそはと思ったが、やはり俺はまた己を殺さねばならないのか。」
「何を言っている?」
「俺たちは罪の代償として自己殺害を繰り返させられている。どちらが勝っても、また次の自分と殺し合わねばならない。」
もう私には彼が見えなくなっていた。
意識を保つことは、もうこれ以上出来そうにない。
「それって、、、。」
「ああ、地獄だろ?いつ俺たちの罪は許されるのだろうな。」
彼は私の頬を両手で挟み、額にキスをした。




