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短編集『脈絡なき雑多集団の概観は如何に。』  作者: 槇河 しゃち


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自然淘汰の終点

海 人 神

海の上に1人だった。

心許ない船にはおにぎり6個と2Lの水三本だけが申し訳なさそうに置かれていた。


何度か頭を叩いてみたが記憶は蘇らない。

なんでこのような状況にいるのだろう。


取り敢えず辺りを観察してみたが、単調で雄大な海が広がっているだけだった。


暫くして一本の妙にすらっとした棒が水面から生えているのに気付いた。

この世界の根元にそれが繋がっているような気がして海中を覗き込んだ。

視力はあまり良い方ではなかったが、今日はいつもより遠方を視界に捉えることが出来た。


棒は永遠に続くような延びていく直方体に接続されていた。

海にも世界があって人魚が建てた高層ビルなのかもしれないとふと思った。


海面が次第に騒々しくなってきた。

タイヤの外れた間抜けな車、画面が無い可哀想なテレビ、何に使われていたのか見当もつかない木材や鉄柱。

枚挙にいとまがないが、それらは流れてきたり、下方から浮かんできたりしていて、一気に孵化した魚のように何かから発生しているようだった。


これはしまった、と直感的に思った。


世界は滅んでしまったのか。

人類に追従して、僕も滅亡するべきか。

はたまた新人類として頑張ってみるのも悪くないのかもしれない。


ある魚は集団がオスだけになったらメスに性転換する種もいると聞いたことがある。

僕にもそんなことが出来たら繁栄の道も残されているのかもしれない。

いや、僕は1人だ。

性転換しようが意味がないではないか。


自分の思考の拙さが無性に笑えてきた。


それならばアメーバのように分裂するのはどうだろうか。

1人でも増えることが出来る。


取り敢えずおにぎりの数に分裂しようと思う。

支離滅裂な思い付きに苦笑しながら一度眠りに落ちた。


僕は6人になっていた。


船が苦しそうに左右に揺れ、船の定員ギリギリの人数であると主張する。

人間もやれば案外出来るものだなと人類を見直した。


話しているうちにどれがオリジナルであるのか分からなくなってしまった。

どれも同じなのでまあそんな事もあるだろうとおおめにみることにした。


時間が経つにつれ空腹を感じないことに気付いた。

どうやら実現不可能と言われていた永久機関のような機構を体内に手に入れたのかもしれない。


死ぬ順番はどうなるのだろう。

意外と死んでいく順番で、誰がお兄ちゃんで誰が弟なのかわかるかもしれない。

なんせこのような繁殖をしたことがないのでわからない。


雨が降り始めたが雲の隙間に白い光を僕らは見付けた。

それはうねうねしながらだんだんと大きくなっていく。

何かが近づいているぞと6人の内の誰かが言った。


巨大なそれは煌びやかな鱗に、目も眩むような純白の存在だった。

それは自分が神だと名乗った。

生き残った僕らに興味があるらしい。


せっかくの縁なので救いを求めた。

そわそわしながら回答を待っていたが、芳しい答えは返ってこなかった。

つい先程人類を滅ぼしたばかりなのに救ってしまうとバランスが取れないそうだ。

ヒトをやめるなら救ってくれるとそれは仰った。


このままよりはマシなように感じたので、多少は名残惜しいが人間を捨てることにした。

2人は海に、2人は空にまちまちに去っていった。

彼らがいた形跡なんてなかったかのように綺麗に去っていった。


僕ら2人は殺人鬼ならぬ殺神鬼のタッグになった。

まずは目前の神から殺してみよう。

1人が抑えて、1人が切ると滑らかで如何にも甘ったるそうな蜜が垂れてきた。

両手に掬って啜ってみると恍惚とした。

この時に僕らは悟った、僕が神を捕食する存在になったのだと。


神は圧倒的な権力と戦力を持って世界を支配していた。

これは非常に退屈だなと思う。

そういった前衛的な発想を基に神を全て消してやった。


透明でも純白でも漆黒でもない虚無が広がる。

残った僕らは最後に互いを刺して完全無欠な世界を作った。


薄れゆく意識の中で、誰かの冷やかすような笑い声が微かに聞こえた。

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