僕と彼女の美しいカーテン
血液の赤は赤血球の赤?
「凄く綺麗なカーテンね。」
彼女は浮かれて、部屋の中で数回跳ねた。
ついさっき出逢ったばかりの女性だが、白い肌と清潔感に好感を持った。
「ありがとう、僕のお気に入りなんです。」
僕は、カーテンを集めることを趣味にしている。
気分が良くない日が続くと、カーテンを変えて気持ちを切り替える。
ただ主張の激しい色は好きではない。
ピンクとかオレンジとかイエローとか。
それらは意識を向けてもらおうと大袈裟に騒いでいるように感じる。
派手に着飾って無理やり売りこむアイドルのように見えた。
ただ赤色は良い。
派手だが温度を感じることができる。
人肌のような温もりを感じることができる。
「もしかしてこの模様は、あなたが描いたの?」
彼女はそう言ってカーテンの表面を撫でた。
着色部位はザラザラしており立体感があった。
「色は自分では選んでいないけど、そこから描くのは僕だよ。」
このカーテンを創作した時の事を思い出すと微かに興奮した。
夜は虚ろな感覚に陥るが、創造力は豊かになるように思う。
「気に入っているのだけれど、そろそろ変え時かな。」
僕の脳裏に一人の女性の姿が浮かんだ。
「えー。もったいない。」
ありがたいが、染色の都合から長くはもたない。
変色は急激に進んでしまう。
このカーテンは元々は真っ白い背景に黒い木々が林立し、
小さな鳥が辺りを飛び回っている絵だった。
だからアレンジを加えて、満開の桜のように赤い花を付け足した。
カーテンの鳥達も明るくなった世界をきっと喜んでいるだろう。
彼女は本当に名残惜しそうな表情でそれを眺めていた。
ほろ酔いで染まった白い肌は非常に綺麗だった。
・・・。
その顔が僕の創作意欲を引き立てた。
早速何かを作ってみたい気持ちになった。
「実は、この着色料は血液なんですよ。」
感情が高ぶると自分でも自分を止めることが出来ない。
「なにそれ、気持ち悪い冗談はやめてよ。」
彼女がこちらに笑いかける。
しかし、僕はもう表情を作ることが出来なくなっていた。
無表情で彼女に顔を向けた。
その眼には感情は宿っていなかった。
状況を察したのか彼女の顔色は次第に青白くなっていった。
彼女は玄関に向かって走っていった。
どんどんどん、がちゃがちゃがちゃ。
彼女は扉を夢中で叩いている。
申し訳ないが、出口は完全に閉鎖している。
骨が折れるほどの力で殴ろうと破ることは出来ない。
動脈は鮮やかで綺麗だが取り扱いは難しい。
圧が強く噴水のように吹き出てしまう。
塗抹が制作前のカーテンに飛ばないように気を付ける必要もある。
赤は良い。
同じ赤は一度としてない。
僕はカーテンが好きだ。
温もりを感じることができる。
次のデザインは決まっている。




