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短編集『脈絡なき雑多集団の概観は如何に。』  作者: 槇河 しゃち


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常に同じものはない

物事はすべて流動的に変化している。

同じに見えても同じではない。

《いつも通りの通学路でも毎日同じではない。》


1本の道を変えるだけでも違った景色が姿を現す。

念を押しておくが、僕は進路の選択をあらかじめ吟味するような野暮なことはしない。

分かれ道が目に入れば、その瞬間にどちらかを選ぶようにしている。


直観と無意識の判断が混ざり合い、曖昧なままに結論を下す。

この瞬間、緊張感と高揚感が心臓から血流に乗って広がってゆく。

どうせ物事に正解なんてないのだ。


今日は山の麓を通って家に帰ろうと決め、自転車を一心に漕いでいる。

早速、二択の道が眼前に現れた。


・・・こっちだ。


二股を右折する。

視界を遮っていた樹木が途切れ、大量のお墓が両脇に列になって立っている。

なんとなく空気が肌寒くなったような気がした。


「みやあ。」


墓地の間を抜けている間に、赤子のような猫の鳴き声が聞こえる。

道端で二匹の猫が交尾をしていた。

そして驚いたことに、それを10匹ほどの野次猫が円状に囲んで騒いでいる。

僕が傍を通過しようが彼らは見向きもしない。

自転車で駆け抜ける人間などに興味はない。


・・・。


人間にとっては死を示唆するような場所で、猫は交尾しながらお祭り騒ぎ。

生命の循環を考えた時、不謹慎を超えて、哲学的な感動を覚えた。


今度は右側に水道局が姿を現す。


「こんなところに水道局があったなんて。」


このような新たな発見も自称リトルアドベンチャーの醍醐味だ。

ハイカラな建築でオレンジ色の煉瓦で固められている。

しかし、正面の門は長年閉鎖しているようだ。


昨日空気を入れた車輪は小気味良く回る。


傾斜のある坂道を疲労を蓄積しながら登ってゆく。

坂が邪魔して先が見えない。


登った先は下り道であった。

速度に押されて頬を伝う汗が後方に飛ばされていく。

風を切るのは、爽快感があって気持ち良いが、次第に空気の抵抗を感じ、不愉快に思った。


道幅は2メートルくらいしかない。

このまま降りて行った先に大きな網があって、ネズミ捕りのように生け捕られてしまったらどうしよう。


正面、また別の墓地に着いた。

複数のお墓が今度は縞模様のように段になって横方向に陳列している。

夕日がそれらを舞台上で生き生きと踊る演者のように照らす。


そういえば、ここで火の玉をかつて見たことがある。

彼らは死んでいるが、きっと見えるくらいなのだから何かは残留しているのだと思う。

ただ苦しんでいるようには見えなかった。

不思議と楽しそうに踊っているように感じた。


死者は死を嘆いてはいないのだろう。

死をもまた、生のように楽しんで生きようとしている。


未知の道。

新しいものが待っている。

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